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義教の野望  作者: ペロリん千代
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仕置き

1435年(宝暦二年) 足利義教


戦が終わった。結果はこちらの勝ち。山名持豊が討死し、一色義貫は逃げた。総力を挙げて捜索しているのですぐに見つかるだろう。


これから戦の仕置きをしなければならない。一色、山名は勢力を削って弱体化させよう。山名一族が領有していた国のうち、石見と安芸の2カ国は没収だな。そして当主は元石見守護の山名教清とする。そして一色の領国から三河を没収して赤松満政に与え、一色当主は一色持信の子、教親とする。


まあこんなもんだろう。後は九州、大和、関東に兵を出すだけだ。九州は此方が押している。少弐満貞は討ち取られているから後は大友と菊池か。そして関東だがかなり旗色は悪い。持氏は此方が大軍を送れないことを分かっているのだ。案外バカではないのかもな。


上杉は押されている。今川と小笠原に救援を要請したが、それでも良くはならない。応援の為に今川範忠を副将軍に任命しよう。喜んでくれるはずだ。後は治罰の綸旨だな。奴らの動きを抑えられれば良いのだが。


いち早く関東を平定したいのだが背後を突かれると困るんだよな。九州の大内持世は良く働いてくれているんだけどなんせ敵が多い。大内、河野だけで潰すのは無理があるか。山名、一色はしばらく使えないしな。細川を使おう。細川が反対するなら奉公衆で潰す。速さが命だ。止まることは許されない。


次の戦までに税制を改革しよう。幕府の財政を万全にする為に税の賦課対象を拡大する。新興の金融業者にも税を払ってもらおう。それと幕府の納銭方の監視を強化する。納銭方というのは土倉、酒屋から税を徴収する有力な商工業者なのだが、奴らに納税を完全に任せるのは不安が残る。中抜きされたら困るからな。





1435年(宝暦二年)甲斐常治


山名、一色との戦も終わり、ひと段落ついたかと思った頃、斯波家に激震が走った。当主である左兵衛督様が亡くなったのだ。左兵衛督様の唯一の御子である義豊様は前年に亡くなっている。故に私は斯波家の執事として公方様に後継を決めて頂くべく、御所を訪ねている。


室町御所は現在改築している。幕府財政が随分好転したかららしい。大したものよ。左兵衛督様よりは出来た人物らしい。


部屋に通され、しばらく待つ。随分お忙しいらしいから致し方ないのだが、早く来てもらいたいものだ。



「待たせたな」


そう言って公方様が部屋に入って来たのは私が来てから一刻ほどたった時だった。


「いえ、お忙しいのに時間を割いて頂き、感謝の言葉も有りませぬ」


「では本題に入る。斯波左兵衛督のことだな?」


「左様で御座います」


候補は二人、左兵衛督様の弟で現在僧籍にある瑞鳳様、そして同じく弟の左衛門佐持有様だ。


「斯波家中ではどのような意見が出ているのだ?」


おや、御自身でお決めにならないのだろうか。権力を強化する絶好の機会であると思うのだが。


「左衛門佐殿を推す声が主流ですな」


「そうか、余も同意見だ。では左衛門佐で決定だな」


「な、何故にで御座いますか?」


公方様があっさりとお決めになったので、つい疑問を言ってしまった。


「ん?理由か?これからは戦が続くだろうからな、戦の経験のある左衛門佐の方が良い。それに一門である斯波の家中が纏まらねば持氏に付け込まれるのでな」


「成る程」


公方様はそれを咎めることもなくあっさりと理由を述べた。


「それと斯波の当主は代々将軍の『義』の字を下賜されるのが習わし。左衛門佐には義有と名乗らせる」


「はっ」


そう言って公方様は部屋を出た。





1435年(宝暦二年)足利義教


甲斐常治との会談を終えて一息つく。参ったな、こんな時に義淳が死ぬとは。後継は持有にした。常治は驚いていたけどな、戦ができるやつでないと今の斯波家は任せられん。対持氏戦では総大将に任命しようと思っているからな。


満済も現在調子が悪いようだ。寝込んでいるらしい。後でお見舞いに行こう。回復してほしいんだけどな、満済も歳だ。別れは辛いが受け入れるしかない。




「上様」


ふと襖の向こうから声が聞こえた。この声は紀三郎だな。義昭の事で進展があったか。


「何用だ」


「義昭様ですが、吉野におられるようです」


吉野か。南朝の本拠地だったところじゃないか。


「誰が手引きしているか分かったのか?」


「山名弾正少弼様です」


持豊か。自分が勝ったら将軍にしてやるとでも言ったのかな。俺の子供はまだ幼いからな。死んだとき用のスペアとでも思っていたのかもしれない。


「だが弾正少弼は死んだぞ」


「はい、それで義昭様の方から此方に接触して来たのですが……」


義昭から接触して来た?どういう事だろう。紀三郎も歯切れが悪い。言いにくい事でもあるのか?


「なんだ?言いたい事が有るのだろう。申してみよ」


「では、義昭様にご寛恕をお願いしたいのです」


成る程、手引きしていた持豊が死んだから許してもらおうと思ったのか。それで紀三郎に接触したと。


「構わぬぞ」


紀三郎がびっくりしている。まあ一応弟だしな。少々の事では怒らないさ。


「では義昭様にそのように伝えておきます」


「うむ」


大和の方もついでに片づけておこう。一気に攻めて、再起不能まで追い込んでやる。


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