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義教の野望  作者: ペロリん千代
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山門騒動、終結?

当初は不定期更新のつもりでしたが1話を短くすると意外と連日でいけるものですね。

6話と8話で朱子学の扱いを変えました。

1432年(永享三年)細川持之

京に続々と兵が集結している。赤松、山名、畠山、土岐、斯波、そして我が細川といった面々が揃っている。兵数は1万といったところか。


兵達の士気も思ったより低くはないようだ。これならば負けることはあるまい。叡山がこれを見て慄き、兵を引いてくれればいいのだが……。


誰かがこちらへ歩いて来た。どうやら畠山持国殿のようだ。左衛門督殿の代わりに来たのだろうな。


「どうかなさったか」


「叡山はどう出るだろうか気になりましてな」


「兵を引く事を願ってはおりますが、恐らく衝突するでしょうな」


「やはり……」


畠山殿はため息をついた。叡山がどうしたら大人しくなるか全く分からぬのだ。もはや戦を止める術はないに等しい。


「上様は神も仏も恐れぬのか……」


畠山殿のつぶやきが聞こえた。此度の事で上様は我らの反対を押し切って出兵を決めた。普段は耳を貸してくださるのだが、今回は余程に腹が立ったのだろう。

上様は何も恐れぬ。故に止まることがない。今回のような事が起こった時、我らに上様を諌める事が出来るのだろうか。


「では、某は持ち場に戻ります」


「うむ、御武運をお祈りする」


畠山殿の後ろ姿を見つめながらため息をつく。憂鬱ではあるがやるしかあるまい。





叡山を攻める手筈は整っている。今回の主力は私と山名殿だ。今、軍は叡山の麓の町、坂本に向かっている。もうじき叡山の僧兵が見えるはずだ。報告によるとその数はおよそ三千、数は大したことはないが彼らは意気軒昂で何より一人一人が強い。こちらもそれなりの被害が出るだろう。


上様には京に居てもらった。流石に上様を働かせる訳にもいかない。御所で我らの働きぶりを聞いているのだろう。失敗は許されぬな。


先鋒から連絡があった。叡山の僧兵が見えたらしい。

お互いの軍は近づいていき、そして睨み合う。僧兵達は驚いているに違いない。今まで軍を動かして鎮圧しようとした為政者はいなかったが故に。


誰かがそんな僧兵達に檄を飛ばしている。あの者が大将か。そして僧兵達は声をあげながら突撃して来た。


此方からは弓が放たれる。僧兵が一人、また一人と倒れていく。だが彼らは止まらない。そのまま距離を詰めてこちらの前衛と衝突した。


「踏ん張るのだ!」


声をあげたがじわりと押し込まれていく。やはり一筋縄ではいかぬか。そのまま押されつつ暫しの時が流れる。


だが急に僧兵達は引き始めた。如何いうことだ?伝令が走って来る。


「どうした」


「はっ、敵の大将を討ち取ったとのこと」


なるほど、それで引いたのか。存外早く終わったな。


「追撃は不要。上様に御報告せよ」


「はっ」


伝令が走って行った。ふう、と一息つく。被害はあまり出なかったようだ。早く決着がついて良かった。


他の宿老達と話し合い、撤収することに決めた。皆追撃には反対か。叡山もこれで懲りただろう。勝敗は上様に御報告した。あとはこれから如何なされるかを聞かねばならぬ。


さて、上様は如何なる処罰を下されるだろうか。首謀者の打ち首くらいは望まれるかもしれぬ。だが流石に叡山の僧を打ち首にするのは良くないだろう。ここは説得せねば。あまり自信はないが……。




1432年(永享三年) 足利義教

広間には宿老達が集まって今回の戦の報告をしている。叡山は降伏した。良くやってくれたよ、労っておこう。


「良くやった。これで叡山も幕府に楯突こうとはしない筈」


「叡山の処罰は如何なさいますか?」


管領の細川持之が不安げに言う。ここはあえて持之が一番言って欲しくなさそうなことを言ってみようか。


「うむ、今回の騒動の首謀者を打ち首とする」


お、ひどく残念そうだな。だが俺がそう言うと予想していたのだろう。驚いているようには見えない。


「上様、ご再考を。ここで打ち首などすれば叡山との関係は修復出来なくなりますぞ」


「望むところよ。再び楯突こうものならまた討つまで」


ふんと鼻を鳴らして不機嫌なことを伝える。


「どうかお願い致します。ここはその怒りをお抑えくだされ」


でも引かないか。必死だな。余程叡山とことを荒立てたくないようだ。まあ元々許してやるつもりだしここは言うことを聞いておこう。


「……ふむ、そこまで言うのならば今回は処分は無しとしよう」


面々がホッとしたような表情を見せる。うん、たまには宿老の言うことを聞いておかないと。叡山との関係が冷え込むのは別に構わんが、今宿老と対立するのは絶対に駄目だ。


どうせまた強訴するんだろうな。ここで処分しなかったのを仏を恐れているとか都合良く解釈するんだろうよ。馬鹿には実力で分からせるしかない。


「ご苦労だった。ゆっくり休んでおけ」


俺も部屋を後にする。ひとまずは安心、か。


今回の件で俺は宿老達の意向を無視して兵を動かそうとした。宿老達も不安に思ったことだろう。将軍が宿老の力を必要としなくなった時、ようやく専制政治が完成する。だが、その時宿老達が如何思うか……。


監視をつけておこう。どうしても必要な時はたとえ功臣であろうと潰す。史実のような目にあわない為にも慎重にことを進めなければ。宿老全員を同時に相手してはいけないが、一人ずつなら大丈夫だろう。


さて、一番先に潰すのは誰にしようか。

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