5話
投稿遅れて誠にすいません<(_ _)>
今回もいつもと同じようなクオリティですので、ご容赦ください。
いつも通り、状況的・文章的におかしいところがあればコメントでよろしくお願いします。
振りかえって、その目一杯に広がるのは黒色の奥が見えない穴。力で無理やり体を移動させ、砲から突っ込んできた弾丸を間一髪で避けきる。
「やっぱりか……!」
光学迷彩。それが、戦車の特性だった。
「チコ姉!」
(うん、見つけたよ。透明になって隠れていたとは……大ペルソナは卑怯なのかしら。明正さんもそっち向かってるから、早く決着つけなさい。)
「了解」
祐司は炎の槍を手に取り、投げ槍のような構えで立つ。
力を込め、敵の頭部目掛けて投擲した。
「……貫通しないか…」
頭を守る見えざる障壁が、炎の槍を弾く。魔法陣がうっすらと浮かび上がったのを祐司は見逃さなかった。魔術の介入があると見て間違いない。
「……大ペルソナに協力する人物っていう線もあるな。魔法じみたことができるペルソナもいるっちゃいるが……ありゃ魔術だ。」
魔法と魔術の違いは大きいようで小さい。
人間のごく限られた者達が使う魔術は、様々なプロセスをこなしていくと成せる。そのため、大きな魔術ひとつ使うのに1日や一週間かかることがあるのだ。
ペルソナの使う魔法は、魔術のプロセスを抜いたもの。つまり、下準備が要らない。
自身の魔力を消費するだけで発動するという、神のような所業を難なくこなして見せるのだ。
「だから、魔術のプロセスにある魔法陣が展開されるのは……何か裏がある。」
……といっても、まず目先の戦車を倒さない限りはなにも解決しない。祐司は体に力を巡らせ、身体能力を極限まで上げる。
『限界突破』
超能力者は身体能力を上げることは誰にでもできる。しかし、限界を越えた身体強化は異能者じゃなければ不可能である。
一介の超能力者がしてしまえば、数分で身体が崩壊する。
「なめるなよ……。そんな機関銃で貫かれるほど、俺は柔じゃないからな…!」
足元にあった鉄の残骸を、炎で簡単に加工して剣もどきを製造した。持ち手を握り(かといって強化された握力で持ち手を潰さないように)、念力の応用によって刃は高周波ブレードと化す。
「だぁぁっ!」
振るわれた刃がところ狭しと装備された銃器をいとも簡単に破壊していく。
一凪ぎで数丁の銃を断ち、一突きで装甲を貫く。
小回りのきかない戦車に単身で挑む祐司は優勢のように思えた。
「…………だんだん神々しくなってる?」
言うなれば『進化した』と言えばいいだろうか。
ごちゃごちゃしていた銃器がゆっくりと融合し始めていた。
前は6挺の砲台と、銃口45センチは越えるだろう主砲が装備され、背にはミサイルの弾道数本が、円状に飾られていた。
光輪がついた神のような大ペルソナ。…これが本当の『戦車』だと気づいた。
その砲撃は、勝利への道を拒む敵を撃ち殺すため。
そして、その砲撃は敵を塵ひとつ残さない……そう悟った。
ヴゥゥゥゥゥン…………………
主砲がひかり始める。その白き輝きには、この街を軽く吹き飛ばせるほどの威力があると祐司は直感的に反応した。
「……雑魚も集まってきたぞ……どうする?」
周りからガシャン…ガシャンと忌々しい機械兵の足音が聞こえてくる。祐司は舌打ちした。
……ひとつもダメージになるようなことをしてないと、ふと思った。与えた感覚が全くないのである。
だんだん強くなっていく過程を間近で見たのは結構辛い。
「………」
戦車相手に何も効かない。どうやって倒すか、それすらも頭のなかに浮かんでこない。明正がいれば違うかもしれないが………いくら待っても連絡が来ないのは知古に何かあったことを意味している。
戦闘員から目を話すほどの異常事態が起こっているのだろう。
徐々に近づいているかのように聞こえる死神の足音。足掻いてやろうと、手に手をかざして自分自身を焼こうとした。
斬ッ!!
「待たせたかなっ!!」
そういいつつ、降り下ろした鎌を返し刃で切り返した男性。
黒い甲冑に身を包み暗黒騎士のような禍々しいオーラを放つこの男、黒石飛鳥の夫、明正である。
「ダメだよ、死んで殺そうなんて。そんな自己犠牲でペルソナを殺せるなら苦労はしないんだからね。」
「……分かりますか?」
「まぁね。こんなんでも、君のように死んで殺そうと思ったことはあったから。」
ニコッと笑って見せる明正。その笑顔の奥にはとてつもない闇を抱えてると、祐司には思えた。
「あぁ。お姉さんのことは心配しないでくれ。既に超能力部隊が到着して保護されている。」
「まずいですよ!明正さんが捕まってしまいます!」
「君が気にすることじゃない。今この二人でこいつを倒そうとしても無理があるんだ。」
明正は自分の獲物である鎌を見つめながら言う。その意味を祐司はわかっていない。
「どういう?」
「今、あの主砲には戦車のほぼ全てのエネルギーが凝縮されている。殺してしまうと主砲に保ったエネルギーがここで爆発してしまう。」
背筋がゾッとした。そうなればここ一体がいつかの広島や長崎のようになってしまう。
「そうならないために、一度撃ってもらう必要があるんだ。……っと!」
「っ!」
降り注ぐ銃弾の雨霰を掻い潜り、物陰へと隠れた。
「どういうことです?!あれを撃たせる?!ここ一体が死地になりますよ?!」
「そういう意味じゃないんだよね。」
と、指を上に向けた。
「空に撃ってくれれば良いんだ。」
「なるほど………」
空に撃てれば光線は宇宙へと宛のない旅を始めることになる。地球には被害はないし、誰も死なない。
「じゃあどうすれば?」
「それじゃあ…君が相手の気を引き付けておいてくれるかな?あとは僕に任せてくれればいい。」
祐司はうなずき、相手の銃口を伺って飛び出した。と同時に銃弾が撃ちならされる。
「…………マイハニー。これで良いんだよね?」
一人、鎌を握りしめて呟いた。
□□□
「うわぁぁあぁ!!」
また一人機械の敵に殺された。敵は弾切れしないようで、見つければ問答無用で弾をばら蒔いてくる。
こいつレベルの僕を束ねるボスの強さを考えると、超能力部隊の一番隊隊長『草木勝俊』は頭痛が止まらない。
「念障壁が使えるものは前に出ろ!攻撃は波弾を投げつけるんだ!」
目の前には水面に波紋が広がるように念障壁が展開され、後方の攻撃班が波弾と呼ばれる手榴弾を投げる。
敵から放たれた弾丸は念障壁に突き刺さって止まり、放物線を描きながら飛んでいく波弾は、破裂と同時に高濃度の念力を生じさせた。
渦巻く念力に巻き込まれた機械の敵。それだけにとどまらず、辺りの瓦礫や商品までも巻き込んでいく。
「…………クリア。」
そして、機械達はスクラップと化した。こうなれば動けないだろう。
「30秒休憩!気は抜くな!経過後、直進する!」
徐々に彼らも戦車へと近づいていた。
□□□
「………くっ!」
ばらまかれる弾丸。一発一発が死に至る要因となりえる雨のなか、祐司は手にした包丁(高周波ブレード化済み)を使って弾いたり、回避したりしていた。
近づけばショットガンの餌食に、遠くなればスナイパーライフルで撃ち続けられる。中距離で戦うことが大事になってくるのだが、それがなかなかに難しい。
「だああああ!!」
先程拾って腰に帯刀させていた果物ナイフを、目らしきところへ投げつける。震える高周波の刃は戦車の装甲すら貫く。センサーのようなものを潰せば、多少は楽になるのではと思ったのだ。
キィン!という音をならしてナイフが弾かれる。
「顔面はやっぱり硬いよな……」
銃弾はしばらく止みそうにない。
□□□
一方、一番隊は犠牲者を出しながらも少しずつ近づいていた。
「前方に5体出現!」
「貴様らは防御に当たれ!私が出る!」
勝俊は背中に装着された、脇差しぐらいの長さのブレードを手にし、引き抜く。ヴン……と起動音がなり、刀身に振動が発生する。
国から配布される第一級対抗器、分類は近接武器の震剣シリーズ『居旋刀』である。
性能としては、震剣シリーズのなかでも使いやすさ、殺傷力ともにバランスが良い。そのため、配布される近接武器の数ははほとんどこれが占める。
「ふっ!」
足に装備されたブースターを巧みに使い、敵との距離を縮めながら、弾丸を避けて避けて避けまくる。
「ぬぅん!」
居旋刀の軽さを活かして、水平、袈裟、切り返し……と、連撃を繰り出して一刀のもとに壊していく。
…………ついには全て壊してしまった。
「……クリアだ。進むぞ。」
何事もなかったかのように言って見せる隊長の姿は、部下達には英雄のように見えた。