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愚かを殺しときに  作者: あー
4/6

4話

前回同様、文章的に又は状況的におかしいところがあればコメントでよろしくお願いします。


そして、コメントをくださる方々有難うございます。励みになります<(_ _*)>





ガララララララ………



ショッピングモールに響き渡る、重機械を動かすような音。さながら、戦場へと赴く戦車の駆動音にも聞こえる。


気配を感じ後ろに振り向く男性。そこには、まさしく『それ』が銃口をこちらへと向け、佇んでいた。





「…っ?!」

「……17からではなかったのか」


しかし、二人は感じ取った。これまで潜ってきた場数からの勘。とてつもなく獰猛な、残虐な、自分たち以外を物ともしない圧倒的『大災厄』。それすなわち、終焉(ラグナロク)を体現した存在。



大ペルソナである。




ズガガガガガッ!!!


何処からともなく飛んでくる銃弾が地面や壁を穿ち、人々を襲う。無情にも跡形もなく吹き飛ばされ死んでいく。ショッピングモールは惨劇の会場と化した。



(……祐司!)

「チコ姉!無事か?」


向かいから走ってきた知古(ちこ)。その姿には少量の血と埃を被っていたが怪我はなく、祐司(ゆうじ)は胸を撫で下ろした。


(なんなの?!銃弾がものすごい量飛んできて……あれ絶対に大ペルソナじゃない!!)

「落ち着いて。騒いでも解決にはならないよ。」

(でも!)

「チコ姉」


声を被せてテレパシーを黙らせる。


「……何度も言うけど、落ち着いて。戦いは冷静さが欠けた奴から死んでいく。俺達が取り乱してどうするんだ。」


両肩を両手で押さえながら語りかけるように言った。


(……そう、だね。……ごめん)

「謝らなくても大丈夫。でも先に助かった人達を助けないとね。俺は戦闘員。チコ姉はオペレーター。このふたつがあればこなせない戦いなんてないよ。ね?」


少し涙ぐんだ知古の背中を撫でながら宥める。すると祐司の頭にテレパシーが送られてきた。


(……うん。私たちに出来ないことなんてないよね……最強の姉弟だもんね!)

「その意気だよ、チコ姉!」


宥めるのに成功したその突如。


「……明正(あきまさ)!!」


砂埃が舞う右手の通路から、ゆらゆらとふらつきながら歩いてくる人。どうやら何処かに弾丸が当たったらしい。


「…明正、大丈夫か?!」

「ははっ。マイハニー……主がこんなので……すまないね…。」

「なに言ってるんだ!気をしっかりもて!あのときの約束を忘れたのか!!」

「そんなわけない……僕は、君と幸せになるまで……死なないって決めてる……あの日から…ね」



何らかの気配を察する。


「お二人とも?!そんななごんでる暇なんて無いんですからね!俺が言えたもんじゃないでけど!『火殺姫(ひあやひめ)』!!」


見せつける夫婦を叱咤しながら戦闘態勢に入る祐司。体には炎の力を纏わせ、自分の背丈ほどの長さの炎槍を生成し始める。


「そこの青年の言うとおり。……久しぶりに力を貸してもらえるかな?マイハニー。」

「……当たり前だろう!!」


その言葉で黒石(くろいし)飛鳥(あすか)は黒い霧となり、明正の体へまとわっていく。


黒の甲冑に姿を変えた明正。その手には大振りの大鎌が携えられており、禍々しさを放つそれにはそれ相応の力……《殺す力》が備わってると本能的に感じた。あれに触れてはいけないと体が拒否反応を起こす。


「それで、青年よ。」

「祐司で結構です。傷はどうです?」

「この鎧のおかげで大丈夫。それじゃあ祐司…これからどう行動する?」


祐司は眉間に手を当てて考える。数秒後、頭のなかで組み立てた行動手順を口にする。


「まず最初は生存者の避難。生きていれば助ける。次に敵の戦力を知る。チコ姉のテレパシー能力を使って連携。情報を共有しろ。最後に、ヒット&アウェイで攻める。これは状況次第で変更。」

「了解。祐司、案外切れ者でしょ?」

「…時間がありません。散!」


その言葉で三人は各自散る。知古はテレパシー能力を持ってること以外は普通の人間なため、ショッピングモールを見渡せる高台へと向かった。


戦場(ショッピングモール)はひどい有り様だ。普段なら子供のねだる声が聞こえるお菓子コーナー。そこには家族らしき人たちが肉塊と成り果てていた。至近距離で銃弾の雨を受けたのだろう。


「……酷いもんだ」


その言葉に反応したのか、ガシャン…ガシャン…と機械が歩いてくるような音が聞こえてくる。三体はいそうな足音の数だった。


「っ……。」

(祐司!前方4メートル先に機械の敵が5体向かってるよ!)

「予想より多かった……!」


貫通型の炎の槍を視界の先に向ける。ひとつの合図で全て発射可能なようにコントロールする。


「……行けっ!」


ガトリングの如く射出される幾つもの槍。


霧が晴れ、そこにあったのは火の槍が貫通して再起不能となった機械だった。


「敵は予想通り機械型。大ペルソナ7番目『戦車』だと思われる。配下らしき小型の自律砲がショッピングモールを歩き回ってる。」

(わかったわ。明正さんにも言っておくね。)


敵の索敵力は優れているといわざるを得ない。この様子だと生存者は限りなく少ない……祐司は苦虫を噛み潰したような顔をして、まだ迫る機械兵を迎え撃つ。






「はぁっ!」


一刀の下に機械の命を殺す明正は、少し焦っていた。異能の力が国に見つかりやすい状態にあるからである。

今までは力そのものを体に変えて存在していた黒石飛鳥が、明正に『憑依武装(ライズ)』することで黒死鎌としての力を取り戻しているのだ。

とてつもない力の根源が国のレーダーに引っ掛かるのも時間の問題。明正は自分たちのために早期決着をつけたいと思っていた頃。


「……肝心の親玉が見つからないんじゃあどうすることもできないなぁ……」


先程連絡が入った小型の機械を倒すこと以外、大ペルソナはもっての他、生存者すらも見つけてないのだ。次第に銃声が聞こえなくなっていくのがその証拠である。


「生存者は三名……戦闘員二人とオペレーター一人ってところかな。」


横から飛び込んできた機械兵を見ずに殺しながら呟いた。






「……ちぃっ!」


ダダダダダダダダッ!!


超人的なスピードで攻め立てようとしても、銃弾が牽制し思うように攻撃させてくれない機械兵。

先程から槍を飛ばす攻撃が見切られてきているため、あえて近接攻撃に転換している。所々炎弾を撃ったりしているのだが、展開されているシールドが面での攻撃を軽減しているらしい。


「なんでこうもやりにくい……」


とは言いつつもそろそろ銃弾の速度に慣れ始めていた。

手にもった長めの包丁に念力(サイコキネシス)を応用し、付与した振動により出来た簡易高周波ブレード。

慣れと勘で頭に飛んできた弾丸を弾き返す。


「せいっ!!」


銃弾が止むのを見計らって包丁を投げつける。振動で鉄をも切り裂くブレードと化した包丁は、敵の頭脳部分にまで貫通し、停止した。


「………あらかた倒したと思うんだけど……大ペルソナ見つけた?」

(……ごめん。姿形もなくて全く見つからない)

「謝らなくて良いよ。わかった、見つけたら連絡するよ」


今だ見つからない大ペルソナにとてつもない違和感を感じ始めていた。






…………『集中砲火(フルバースト)起動中』…………



密かに、かつ大胆に大災厄は準備をし始めた。







「…………いよいよおかしいぞこれは。」


停止した機械兵の頭部に座り考える祐司。もうショッピングモールは全て見回り、全て見尽くした。これだけ探して見つからないのは隠れている……のは確かなのだが。


「隠れてるような気配すらないからな………」


見えない敵を倒すなど、もはやお手上げである。透視ができれば……と祐司は悔やむ。

透視ができる超能力者はここにいない。一種の最上級の魔眼ともいわれる『透視』は、使えるものがこの世にいるかどうか位少ないのだ。


「……………………姿…形?」


知古がさっきいっていた言葉を頭のなかでリピートする。


『(……ごめん。姿形もなくて全く見つからない。)』


脳内で情報を組み立てていく。


「隠れる気配すらない……隠れようともしてないのか?」


というより、隠れる必要がない(・・・・・・・・)


「………まさかっ!!」


頭に浮かんだひとつの可能性。とっさに頭をあげたのがよくなかった。






背後に佇む巨大戦車。口径のその先には祐司の体があった。





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