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ユメのセカイ。
それは、広大な空間だった。
小さな宇宙と形容してもいいように思える。
その中に、人々の想いが形となって存在している。
人の見た風景、幸せに感じたもの――そういったものの印象が、いたるところで具現化している。
トモエはその世界に立っていた。自分の手を眺めてみる。
『力を解放してごらん』
真実の深淵から、星夜が話しかけてきた。星夜と出逢う直前と同じように、それはトモエの脳裏に響く。この世界では、星夜と遠く離れていても、テレパシーで通じ合うことができるらしい。
トモエは自分の手を眺めてみる。何だか、力がみなぎっているような心地がした。ユメのセカイのもつ想いのパワーが、トモエに移ってくるようだった。星夜の言うように、力を解放してみる。はじめはどのようにして解放すればいいのか手探り状態だったが、徐々にコツがつかめてきた。トモエの身体を赤色のオーラがまとい、それは徐々に炎のように、めらめらと揺れ始める。
コツが完全につかめたところで、トモエは力を一気に解放した。
ユメのセカイのエネルギーに身体を揺さぶられる感覚に浸りながら、トモエは一方で、別のイメージを描いていた。それは、魔法少女に対する自分なりのイメージだ。トモエがこの空間に立っている理由は、魔法少女になってみるという実感をもつためだった。
トモエが描いたのは、幼い頃見ていたアニメの印象だった。派手な衣装に身を包み、権を手に悪者と戦う少女。そのキャラクターに、トモエは自分を重ねた。
トモエの身体から、激しく光がスパークする。光が止んだ時、トモエはまるっきり違う姿へと変わっていた。
頭の上を飾る大きなリボン。赤を基調にしたワンピース。そして腰には大きな剣をたずさえていた。
(これが、魔法少女となった、私……)
大いなる変化に半ば呆然となりながら、トモエは思った。直後にやってきたのは、本当に自分は魔法少女になったのだという実感だった。
もっとも、まだ魔法少女になった意味さえ分からない。“宇宙の意志の権化”が言っていた「悪意の化身」とは一体何者なのか。何も知らないという不安はあった。
けれど、もう事は動き出してしまったのだ。
トモエは、漠然とながら、自分の運命が、大きく変わろうとしていることを感じていた。