変質者さんと家出少女5
ちょうどStarting Overが終わったあたりで僕たちは目的の場所についた。
そこは町から離れた少し丘になっている場所だ。回りに光源になるものがないから驚くほどきれいに星が見えた。車のエンジンを切って二人して降りて空を見上げる。
「すごいきれいです。こんな星空初めて見ました」
少女は空を見上げて息をのむように星空に見入っていた。
「この場所は僕が父親と喧嘩して家を飛び出した時に初めて来た場所なんだ。今日みたいに当てもなく車を飛ばして道に迷って偶然たどり着いた場所がここだった。初めて見たとき、僕も見とれた。生まれて初めて感動したといっていい。ここは僕のお気に入りの場所なんだ。」
「確かにいい場所ですね。私もお気に入りになりました。あなたとこれてよかったです。」
少女はこっちに向きなおりお辞儀をした。
「ありがとうございます」
顔をあげて僕の目をまっすぐ見る。相変わらず目はまだ濁っているけど、でも少しだけ精気みたいなのを感じられた。
「私、恋なんて感情を本の中でしか知りませんけど、きっとこんな感じの気持ちだと思います。まだ会って一日も経ってないのに変ですよね」
「僕も恋なんて知らないさ。でも僕も思う。きっとこんな気持ちのことをみんなは恋って呼ぶんじゃないかって」
もう一度二人して空を見上げる。一瞬流れ星が流れたと思ったら次々と流れ始めた。今日は何かの流星群の日だったらしい。知らなかったけれどいいものが見れた。僕たちは二人でたくさん流れる流れ星にお願いごとをした。
「君は何を願ったの?」
「秘密です。変質者さんは何を願いましたか?」
「秘密」
「ケチですね」
そういいながら少女は笑った。きっと少女には僕の願いが何かわかっているだろう。僕にも少女の願いがなんとなくわかるんだから。
「そろそろ帰ろう」
僕が言うと少女は少しさみしそうな顔をした。
「そうですね。楽しい時間もいつかは終りますからね」
そう。どんなことにも終わりは来るのだ。僕はそれを知っているし、彼女もそれを知っている。だからこそ終わりにしなきゃいけない。
僕たちは車に乗って少女の家を目指した。車の中で少女は一言もしゃべらずにただ窓の外見ていた。車内にはアレサ・フランクリンのRolling In The Deepが流れていた