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『遮音』の説明。そして、メイの得意属性

「さて、じゃあ今回俺が使った魔法について簡単に説明するから、ヒューイもこっちに来てくれ」


「???あぁ…分かった…」


ヒューイは状況が呑み込めていないのか、困惑を表情に露わにしながら俺達のところに歩いてくる。


「よし、じゃあ早速説明するぞ?良いか?」


俺は2人が黙って頷く様子を確認して、先程の魔法について説明を始める。


「さっきの魔法『遮音』だが、簡単に言ってしまうと風の属性で空気の膜を作って、指定の範囲の外側では音が聞こえない様にしてみたものなんだ」


「「……は?」」


2人は揃って(ほう)けた様な顔で固まる。

俺は久々に固まる反応が見れた事に嬉しさを感じ、思わず2人の顔に見入ってしまう。

いやぁ…最近淡白な反応が増えてきたから、驚かせるのもひと苦労なんだよな…。

俺がしみじみとそんな事を考えていると、サーラとヒューイは復活した様だ。


「マサト、アンタ自分が何言ってるか分かってる!?部屋で普通の声で話している時でさえ、ドア越しでも声が聞こえて当然なのよ?空気の膜を張った位であれだけの大声が聞こえなくなるわけ無いじゃない!!」


「…ん?ちょっと待て…サーラ、あれは実際に大声を出していたのか?」


「出してたわよ!それこそ、ラバートやメイのいるところでも十分に聞こえるくらいの大声をね!それを空気の膜を張っただけで、聞こえなくしたですって?詳しく説明しなさいよ」


ヒートアップしたサーラが、俺に噛みつかんばかりの勢いで詰め寄って来る。

……正直、かなり怖い。

人化してなかったらチビってるな、これは…。


「ま、まぁまぁ…せ、説明するから…ま、先ずは落ち着け、な?」


俺は両手を前に突き出し、どうどうとサーラを落ち着かせる様に動かす。

サーラはその場で深呼吸を2回程すると、ようやく落ち着いた様だ。

へぇ……呼吸は必要ないのに深呼吸で落ち着くんだな…。

生きてる時の習慣みたいなもんか?

俺が益体(やくたい)の無い事を考えていると、サーラが再度声を掛けてくる。


「ねぇ…ボーっとしてないで説明して頂戴」


「あ、あぁ…じゃあ、先ずは音が聞こえる原理から説明しようか。これも俺の世界での知識だから、そういうものか…って感じで聞いてくれ。音っていうのは空気の振動によって伝わるものなんだ。つまり、遠くまで伝わる音ってのは、要するに振動がそれだけ大きいってことだ。例えば、魔法で何かを爆発させたとする、その時爆発によって起こる衝撃で空気が振動して周囲に音が拡散するんだ。爆発の規模が大きければ聞こえる範囲も、音の大きさも比例するように大きくなる。で、話を戻して…さっき俺が使った魔法だけど、半径1mのところに空気の振動を抑えるイメージを持たせた膜を展開したんだ。だから膜の内側にいたサーラとは通常通り話が出来たけど、膜の外側にいた皆には声が漏れなかったんだよ」


俺が説明を終えるも、ヒューイとサーラは何の反応も示さない…。

恐らく理解が追いつかないのだろう…。


「えっと…まぁ…よく分からないけど、とりあえず凄いってことだけは分かったわ…」


「……あぁ…同じく…」


首を傾げながら、絞り出す様に告げるサーラにヒューイが追従する。

どうやら2人は、考える事を放棄した様だ…。

俺は思わず苦笑を浮かべてしまう。


「お前達、皆で集まって何をしておるのだ?」


メイの適正を調べ終わったのだろう、ラバートはメイの手を引いてやりながら俺達の方に歩み寄って来る。


「調べ終わったのか?」


「"#$%&'&%$#"#$%&''&%$#'&%$#"#$%&(うん♪メイね、『ひ』と『かぜ』と『かみなり』と『やみ』がつかえるんだって♪)」


俺の質問に、メイがエヘンと胸を張って嬉しそうに答えてくれた。

無い胸張られても…これがラバート並の山脈だったらなぁ……まぁ、可愛いけど。

…おっと、それよりも、メイの得意属性だ。

凄いな…火は狐火とかのイメージで何となく使えそうな気はしてたけど他にも3属性か。

しかも、初めから雷属性が使えるなんてな。

俺がメイの頭を撫でてやっていると、サーラとヒューイから呆気(あっけ)に取られた様な声が上がる。


「「……は?」」


2人共目を丸くし、口は半開きの状態で、呆けている。

2人の表情は正にポカーンだ。

ぶっちゃけ、こんな表情初めて見た…漫画とかでは結構描写されたりしてるけど、本当にこんな表情になるのか…。


「2人が驚くのも無理は無い…我も随分驚いたからな…」


「まぁ、一般的な獣人の苦手属性となっている火属性や雷属性が使えることには確かに驚いたけど…あくまで一般的な話だろ?そんなに驚くような事なのか?」


確か獣人の一般的な得意属性は風・闇・水だったか…。

そんな事を考えながら俺がそう質問すると、


「驚くに決まってるじゃない!!普通この世界ではせいぜい2属性位しか適性を持って生まれないのよ!後の属性は血の滲む様な努力を積み重ねて、ようやく使える様になるのよ!?それが…最初から4属性ですって!!?しかも雷属性まで使えるなんて……」


サーラが興奮するように告げると、サーラの少し後ろでヒューイもうんうんと何度も頷く。

へぇ…俺自身全部の属性が使えるからそんなに驚かなかったが、この世界の人にとっては凄い事なんだな…。


「うむ、まぁ…一般的にも得意になり易いとは言え、闇属性に関してはマサトの『蘇生』と『契約』の影響だと思うがな。サーラやヒューイも我と『契約』した後で闇魔法に開眼していた様だしな。しかし、それを除いても3属性は生まれ持っていた事になる。これは凄い事なのだよ…」


ラバートから追加の説明が入るが、どちらにしてもメイの潜在能力が高いのは間違いないだろう…魔力量もラバートに次いで高いとなると尚更だ。

メイは自分の凄さが分かっていないようで、俺達のやり取りにしきりに首を傾げている。


「あぁ、そうだ!!ラバート、メイの身体強化については何か分かったか?」


うっかり忘れるところだった。

ラバートの事だからそちらもしっかり調べているだろう。


「うむ、そうだったな…そちらの事もあった…。メイの身体強化だが、やはりマサトの様に魔力を消費しないタイプの身体強化の様だ。これからも常時掛け続ける様に言ってある」


そこまで話すと、ラバートはメイの手を放し、俺の耳元に顔を近づけてくる。


(常時身体強化を掛ける事で身体が活性化し、肉体が腐りにくくなるだろう。これでしばらくは時間が稼げる。その間になんとか完全に腐らなくなるような対処を考えよう)


俺は、ラバートの言葉に無言で頷き、肯定の意思を示す。


「あぁ…ところで、お前達は集まって何をしていたのだ?」


ラバートは納得したのか、俺から距離を取ると、再度俺達が何をしていたのかと質問してくる。

同じ事をまた説明するのは面倒だが、ラバート達だけ仲間外れにするわけにもいかないしな…。

俺は再度先程の新魔法の実験について、説明をするのだった。

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