狩り
4話目です。
「さて、『探索』。ふむ…周囲100mに大きな反応は2つか、ぬしが明日すぐに狩れるかもわからんしどちらも狩っていくか…」
森に入ってすぐにラバートは魔法を使い周囲の生き物を探ると反応があった方へと歩みを進める。
「なぁラバート、探索ってどんな魔法なんだ?」
俺は立ち止まったままラバートに問いかける。
俺が後ろを付いてこないのに気が付き、足を止めてこちらに振り返る。
「ふむ…探索はそれぞれの属性を使い対象を探す魔法だ。火属性は熱探知、水属性は薄い霧を発生させ形状を把握、風は周囲に空気の膜を張り空気振動を把握、又は、風を自身に集め匂いで生き物や対象を探す、土属性は地面の振動から対象の重さや動きを把握する。他にもあるが一般的なものはこの位か。」
「へぇ…で、今回はどれを使ったんだ?」
「今回は大きな獲物を狩るため土の魔法を使用した。対象の重さを量るのには最適だからな。納得したなら行くぞ」
そう言うと再び前に向き直り歩き出す。
俺も後に続くが先程の照明魔法がついてくることに気付いてラバートに問い掛ける。
「ラバート、この魔法どうしてついてくるんだ?ラバートが操ってるのか?」
「うむ、魔法発動後も魔力を注ぐことで簡単な操作が可能になる。例えば魔力の注ぐ量を調整することで明るさを調整したり、な。」
そう言うと目が眩む程明るくしたり、微かに見えるくらいの明るさまで暗くしたりと弄ったあと元の明るさに戻す。
「なるほど…結構自由度が高いんだな。明日からの修練が楽しみだ。」
そんなことをラバートと話ながら歩いていると、何かを見つけたのかラバートが突然立ち止まり魔法の照明を少し暗くする。
「止まれ。あそこに居る獲物を狩る。ぬしはこの茂みに隠れながら見ているが良い、これ以上近づくと照明で気付かれる。」
俺はラバートが指す方を確認するが何も見えない。とりあえずラバートに示された茂みに身を隠しラバートが指した方の様子を窺う。
『暗幕』
ラバートが詠唱するとラバートを黒い霧の様なものが包む。ラバートは霧を纏ったまま静かに獲物に近づいていく。
俺はラバートを目で追うが夜の闇に紛れあっという間に見失う。
仕方なく先程ラバートが指した方の様子を窺っていると
バヂィ!!
「ギャウッ!?」
一瞬の閃光の後、凄まじい音が何かの悲鳴とともに聞こえ、すぐに何かが倒れる音も聞こえてきた。
「もぅ良いぞ。こちらに来い」
照明の魔法を元の明るさに戻してもらい、ラバートの声がする方に近づいて行くと腕が6本もある熊のような生き物が仰向けに倒れていた。
はっきり言ってデカイ…昔家族で動物園に行った時に見た熊の3倍近くある。
「うぉっ!なんだこいつ!」
俺が驚きながら熊のような生き物を見ていると
「ビッググリズリーだ。野生の熊が魔獣に進化したものといわれている。」
「へぇ…魔獣に進化ねぇ、それよりラバート、コイツを殺ったのは雷の魔法か?正直、一瞬光ったのと大きな音が出てたの位しか解らなかった。」
俺はラバートの説明を聞きビッググリズリーを再度確認する、大きな外傷は見当たらないが開いた目は白濁し口からは舌がデロンと垂れ下がり毛皮はぷすぷすと燻っている。
「うむ、ぬしの察し通り雷の魔法だ。一撃で仕留め損ねても感電して動きが鈍くなる、接近戦が苦手な魔法使いにとって重宝する魔法でもある。まぁ使える者は限られるがな」
「?魔法は魔力があれば誰でも使えるんだろ?」
俺は使えるものが限られるという言葉に疑問を感じラバートに問い掛ける。
「魔法の属性にも得意、不得意があってな…修練すれば誰でも全ての属性を使うことも出来るが、不得意な属性は得意な属性の5倍もの修練をしてようやく上達するようなものだ。故に、皆自分が得意な属性を伸ばすのだよ」
「なるほどな…なぁラバート、俺の得意属性はなんなんだ?」
「まぁまぁ、落ち着け。明日から修練するのだからその時に確認すれば良いだろう?先ずは、この獲物の処理が先だ。腹が減っているのだろう?」
「そうだな…俺もいい加減腹が減ったし、さっさと帰って飯にしようぜ」
「ふむ…もぅ1匹狩ろうと思っていたのだが?」
「無理、もぅ腹が減って待ちきれない。こんだけデカイ獲物なんだから十分だよ。さっさと帰ろう」
「くくくっ…まるで駄々っ子だな。良し、では帰ろう」
俺の我が儘に苦笑するものの、ラバートは頷いた。
『闇箱』
ラバートが詠唱するとビッググリズリーの下に闇が拡がりビッググリズリーを飲み込んでいく、10秒程ですべて飲み込み闇は縮小し、消えていった。
「今のは?」
俺がビッググリズリーが倒れていた場所を見ながらラバートに問い掛ける。
「闇魔法の一つだ。魔法で作った空間にものを保管するのだ。今回の様に大きな魔獣の運搬や旅の道中等でも荷物を気にせずに済むので便利な魔法だ。さて、そろそろ城に戻るぞ。」
そう言うとラバートは踵を返し城の方に歩き出す、俺も慌ててラバートについていくのだった。
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