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豪華な食事。そして……絶望の幕開け…

今まで、焼いただけの肉がメインだった俺にとっても、メイの言う通り目の前に並んだ料理はごちそうだった。


なにより、食卓に並んだ料理の数が違う。

(ふじ)の様な(つる)を編んだカゴにはパンが山の様にいくつも積まれ、皆が自由に取れる様テーブルの真ん中に置かれている。

パンの横にはチーズが丸い大きな塊のまま置かれ、好きに切り分けられるように、ナイフが添えられている。

各自の皿に分けられた、レタスの様な生野菜を使ったサラダは、色どりも考えてなのだろう…パプリカの様な黄や赤等の数種類の色野菜も加えられ実に瑞々しく美味しそうである。

ドレッシングは、オリーブオイルの様な物にレモンの様な柑橘系の果物の絞り汁を混ぜて味を調えたラバートのお手製らしく、酸味のある爽やかな香りが、実に食欲をそそる。

数種類の野菜と肉が入ったスープは、野菜の旨味が溶け込み濃厚なシチューの様に見える。

こちらも各自の皿に分けられ湯気を立てているが、まだ鍋には沢山あるため、自由にお代わり出来るだろう。

メインに関しては相変わらず肉ではあるが、今までの様な串焼きでは無く、2cm程の厚さに切ったステーキ肉に、ワインを使ったと思われるソースが絡められていて、芳醇な香りが漂って来る。

付け合わせだろうか、櫛形のフライドポテトの様なものが一緒に添えられている。


俺はステーキ肉を、ナイフとフォークを使い1口大の大きさに切り分けると、フォークを使ってメイの口元に運び、食べさせてあげる。


「"#$%&''&%$#"(!? …すっごくおいしいの!! お兄ちゃんにもたべてほしいの♪)」


目をキラキラさせ、手を両脇のところでブンブン振りながら俺を振り返り、見上げてくる。

俺は切り分けた肉をフォークを使い自分の口に運び、咀嚼する。


「!? うまっ!!! なんだこれ…滅茶苦茶美味いぞ!!!!」


ワインのほのかな甘さ・渋み・酸味が肉汁に絡み、極上のソースになって肉本来の旨味を更に引き出している。

これは、なんてものを食わせてくれる…。

これじゃあ…半端なところにはお婿に行けないじゃないか!!


「ふむ、メイもマサトも口に合ったか…良かった♪久しぶりの料理だったから少し不安だったのだ…まだまだあるから沢山食べてくれ♪」


そんな俺の葛藤も知らず、頬を染め照れくさそうに喜ぶラバートの様子に俺の中の何かのタガ外れ、


「俺と結婚してください!!」


気付いたらとんでもない事を口走っていた……。


「「「「「 !!!!!!!!?????? 」」」」」


俺自身も含め皆が驚きで固まる。

初めに正気に戻ったのは意外にもラバートだった。


「な…何を言っている!?そそそ、そんな私と…け、結婚なんて…」


いや、どうやら(いま)だに混乱中の様だ…顔を真っ赤に染めて恥じらいながら反応するが、言葉遣いまで変わってしまっている。


「そそそ、そうよ!!だ、大体アンタ…わ、私が料理作ってあげた時と反応が違いすぎるじゃない!!私の時には…け、結婚なんて言わなかった癖に!!」


いやいやいやいや……俺に自殺願望はねぇよ!!…ていうか、怒るところそこなのか?と、思わず叫びそうになるものの、何とか我慢することが出来た。


「#$%&''&%$#"#$%&(お兄ちゃんのおよめさんはメイがなるの!お姉ちゃんでもだめなの!!)」


メイはそう叫ぶと、頬をぷくぅっと膨らませ、俺の太ももをバシバシと叩く。


「モテモテだな…」


ヒューイはボソッと一言告げると、黙々と食事を再開し始める。


「いや、あの…な?今のは物の例え? というか…一種の褒め言葉の様なものであって…だな。つまり、それ位美味かったってことだよ!」


俺はしどろもどろになりながらラバート達に弁解をする。

メイは納得した様にうんうん頷いて、俺の手からフォークを抜き取り、自分で食べ始める。


「ふんっ……。ぬしが物の例えに結婚を持ち出すほど軽い男だったとはな…」


ラバートは鼻を鳴らし不機嫌そうにそっぽを向くと、ガツガツと物凄い勢いで食事を始めてしまう。


「良いわ…私も言わせて見せようじゃない!!…フフフ…フフフフフフ」


!!!???


俺は慌てて、ラバートに助けを求める視線を送るが…ラバートはふんっと再度鼻を鳴らし、こちらを向こうともしない…。

俺はヒューイに視線を送り…居ない!!?

なんと…ヒューイは、しっかり自分の夕食を食べ終え、食器を持って食堂をそそくさと出て行くところだった…。

俺の視線を感じとったのか、ヒューイは出て行く直前にこちらを振り返り、口をゆっくりパクパクと動かす。

流石に読唇術の心得はないので、口の動きを真似て、該当する単語をメイに言ってもらう。


「メイ、『#$%&'&%$』 って言ってみてくれる?」


「『#$%&'&%$』#$%(『じごうじとく』、なの♪)」


俺はメイに告げられるその言葉に、絶望するのだった…………。

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