この世界での家族、そして食事
初投稿から1月経ちました。
いやぁ…あっという間ですねぇ。
随分お気に入りも増え嬉しく思う毎日です。
今思うと、良く毎日書き続けることが出来たなと…w
これからも頑張りますのでよろしくお願いします。 <m(__)m>
「さて…今後の事を話す前に…とりあえず、食事の方が良かろう?」
そう言いながら、ラバートがスープの入った鍋をコンロから外し、つまみを捻ってコンロの火を止める。
…今気付いたけど、あれも勇者が作った魔道具だろうか…。
五徳のついた三口のバーナーが付いている、ガスコンロの様な形状をしている。
いくら何でもやり過ぎだろう…勇者…というか、いつの時代の人物だったんだよ……。
俺が呆然としている間にも、ラバートはテキパキと夕食の準備をしていく。
「#$%&''&%$#(メイもおてつだいするの♪)」
ラバートが忙しそうに食事の準備をするのを見ていたメイが、元気よく声を上げる。
メイの声で我に返り、俺もラバートの手伝いを申し出る。
「ふむ、ではメイはこのお肉が載ったお皿を、ヒューイがいる食堂まで運んでくれるか?」
「#$%&(うん♪)」
元気よく返事をして、両手でしっかりと皿を受け取ると、食堂へ向かっていく。
俺は先回りして食堂のドアを開けてあげると、直ぐに厨房へ取って返す。
「マサトは、鍋を持って行ってくれ」
俺が戻ってきたのを確認すると、ラバートが指示をくれる。
「あぁ、了解…っと、これ結構重いな…」
「ふむ、我らの分も入っているからな」
「…へ?……食べれるのか?」
俺が思わず漏らした言葉にラバートが予想外の返事をよこし、一瞬固まってしまう。
「あぁ、必要ないとは言ったが、食べれないと言った覚えはなかったが?」
「いやいやいやいや……だって…どうやって消化するんだよ…」
何でもない様に話すラバートに、思わず突っ込みを入れる。
「消化では無く、我らの場合吸収だな…口に入れた段階で、食物の中に含まれた魔力を身体に吸収し、取り込むのだ。勿論、感覚を取り入れた状態にしていれば、味も感じることが出来る。魔力補給の意味合いもあるが、我らにとっては一種の娯楽だな」
それだけではラバート達が食事をする理由としては薄い気がする…俺が来てからも1回も食事をしていなかったのだから、今突然食事をとる明確な理由があるのだろう…
「なるほどな…人化といい、食事といい…メイの為の配慮か?」
「ふむ…流石に気付くか」
「そりゃあな…俺が来てからも、今まで人化も食事もしてこなかったんだ…今回に限って人化を続けて、更に食事をとる、というのはあまりに不自然だったからな…。すまん、恩に着る」
「気にするな。昼間は風呂で冗談交じりに言ってしまったが、我らは皆マサトのことを本当に家族の様に思っている。今はメイも同様だ。家族の為にやりたくてやるのだから恩に着ることはない。感謝するというのなら受け取っておくがな♪」
本当に…なんて良い奴らなんだ…正直な話、一生頭が上がりそうにないな。
「あぁ…ありがとう…」
俺はラバートに深く頭を下げる。
しばらく頭を下げたままでいると、クイクイと服の裾を引かれる。
顔を上げてそちらを確認すると、メイが心配そうに見上げてくる。
「どうした?」
俺は一度鍋を調理台に置き、しゃがんでメイに目線を合わせると声を掛ける。
「"#$%&''&%$#"(お兄ちゃん…なにかわるいことしたの?)」
深く頭を下げた俺の姿が、メイには謝っている様に見えたのだろう。
「違うよ。謝ってたんじゃなくて、お礼を言ってたんだ。凄く良くしてもらっているからね」
どうやら納得してくれた様だ。
「えっとね、お姉ちゃん…メイもね、ありがとうなの♪」
そう言ってペコリと頭を下げる。
「どういたしまして♪それじゃあご飯の準備を続けようか」
ラバートの指示に従いながら俺達は夕食の準備を済ませ、食堂に集まる。
いつの間にか、サーラも風呂から上がり、食堂で寛いでいた。
「やっと来たわね…。マサト、風呂場に置いてあったメイの服とアンタがラバートから借りて着てたローブは、私が洗って屋上に干しといたわよ」
どうやら、風呂場の片隅に置かれた服に気が付き、気を利かせて洗ってくれたらしい。
「すまん…後で俺がやるつもりだったんだが…」
「良いのよ。別に大した手間じゃないし、気にする程の事じゃないわ」
「それでもだよ…ありがとう」
「お姉ちゃん、ありがとうなの♪」
メイと一緒に頭を下げる。
「さて、マサト…少し耳を貸せ」
俺達のやり取りを見ていたラバートが、俺に手招きしながらそう告げる。
その間にサーラが俺の席の隣にメイを座らせてやっている様だ。
メイは普通の椅子で、テーブルまで届くのか…?
そんな事を考えながらラバートに歩み寄る。
「どうした?」
俺がラバートの傍に着くと、耳元に顔を寄せ話し掛けてくる。
(メイの様子を見るに、今の段階では触覚・聴覚・視覚はあるようだが、味覚・嗅覚については確認は取れていない。食べてみてもし味が感じられなかったら、あの娘が戸惑うだろう?今のうちに感覚を付与してやると良い。マサトの魔力で蘇生しているから、我らの魔法では効かん可能性もある)
俺はラバートの説明を聞き、「確かに」と頷く。
(でも、どうやって付与するんだ?)
(自分が持っている感覚を、メイに貸し与えるイメージで詠唱してみると良い)
(よし、やってみる)
俺はラバートにそう答え、直ぐにメイの傍に行く。
「#$%&'&%$#(お兄ちゃん♪早く、早くなの♪ごちそういっぱいなの♪)」
メイは椅子に座り、浮いた両足をブラブラ遊ばせながら俺を急かす。
やはり、普段から食事に不自由していたのだろう…目の前の料理が凄く楽しみなようだ。
「お待たせ、食事を始める前にメイにおまじないを掛けてあげよう」
「#$%&''&%$#(おまじない?)」
「そう、これからずっと美味しくご飯が食べれますようにってね♪『感覚貸与』」
メイの頭上に闇が集まり、頭のてっぺんからメイの中に吸い込まれるように消えていく。
確認の意味を込めてラバートに視線を送ると、頷いてくれた。
どうやら上手く出来たらしい。
「メイ、テーブルに届くか?届かない様なら、お兄ちゃんの膝の上に座ってもいいぞ?」
「#$%&''&(お兄ちゃんの膝の上が良いの♪)」
メイはそう言うと、ぴょんと椅子から飛び降りる。
俺はメイを抱き上げ、片手で椅子を引くと膝の上にメイを抱えながら座る。
「さて、それでは皆で食べよう」
ラバートの声を合図に、俺達は思い思いに食事を始めるのだった。
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