話し合いと空腹
本日3話目
ラバートに魔法を教わることになったがその後も話は続く。俺は再度ソファーに腰を下ろしながら質問をする。
「さっきラバートは俺に魔力があると言っていたが、俺が元居た所では魔法はあくまでも物語の中の空想の産物で現実にはあり得ないとされていた。そんな俺に何故魔力がある?」
しばし腕を組みながら思案するラバート。
「ふむ…可能性として2種類ある。ぬしの世界にも魔法があったがなにがしかの理由で廃れ、魔法技術が失伝してしまっている可能性。後は…今回の魔法に巻き込まれた際にぬしの身に何かしらの突然変異が起こったか。どちらかと言えば前者であろうな。」
ラバートは自分の中で何か納得したのか軽く頷いた後答えを返してくれた。
「何故前者だと?」
「ふむ…単純な理屈だが、ぬしが居た所でも空想とは言え魔法があるのだろ?魔法を使う技術が失伝しても魔法そのものの存在は伝えられてきたのではないかと考えられる。更に先程の魔法の影響という可能性だが、研究中の魔法とはいえぬしを召喚したうえ魔力を与える程の大規模なものではないと思われるからだな。」
「なるほどな…まぁ魔法が使えるならどちらでも構わないか。」
俺は魔力に関して考えるのをやめる。自分でも単純だと思うが考えても仕方ないしな。
「魔法はどうやって使うんだ?」
魔力に問題ないなら興味は魔法の使い方に移る。正直色々な小説やゲームに触れてきた俺は自分でも魔法が使えるという状況に少なからずわくわくしていた。俺はローテーブルに手をつけながら腰を浮かしラバートに詰め寄る様に身を乗り出す。
「まぁ待て、魔法の修練は明日からだ。今日はお互いの事を話そうではないか」
それから俺はラバートとお互いの事を話あった。
俺は元の世界での生活について、ラバートはこの城に籠る前の生活やこの世界での常識について、話が済む頃にはすっかり日が暮れていた。
「ラバート…そろそろ腹が減ったんだが食事にしないか?」
実は一人暮らしを始める為の引っ越し作業で朝からロクに食べていなかった。全部終わった後に外食する予定だったからな…。
「? ふむ…そうか、ぬしは生身の人間故に食事が必要だったな。我に食事は必要ない故に失念しておった。」
「おいおい…本気か!?もしかして何も食い物無いのか?」
「うむ…少し時間をもらって良いか?狩りでもしてこよう。今日は我がやるが明日から修練がてら、ぬしにも狩りをしてもらおう。ぬしもついてくるか?」
そう言うとラバートは立ち上がる。
「俺の飯だしな。明日から狩りをするなら様子を見る為にもついていこう」
俺も続いて立ち上がる。その言葉をきいてラバートはうんうん頷くと部屋を出る。俺も後に続いて部屋を出て連れだって城の外に向かった。
城を出ると大きな月に照らされた森が昼間より不気味に見える。
ラバートは躊躇せず森の中に入って行く。
「おぉ…暗くて不気味だな。ラバート、召喚された時に使ってた灯りの魔法使ってくれないか。」
「ふむ…生身のぬしに夜目は効かぬか。『照明』これで良いか?」
ラバートは、一つ頷くとすぐに魔法を使ってくれた。
「あぁ、ありがとう。」
礼を言いながら俺も森に入るのだった。
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