リッチの弟子、誕生
骸骨の後を追って部屋を出る。眩しさで少し目が眩むがすぐに馴れた。
目の前に大きな石造りの砦?城?が建っていた、目の前に建っているので全体像はつかめないが少なくとも高さ10m横幅は50mはあるだろう。周囲には城を囲う様に樹が生い茂っている。
圧倒される様な光景に固まっていると骸骨がこちらに向きなおり早く来いと声を掛けてくる。
ぐるりと城の外周を半周し入り口から中に入って行く。俺も後に続いて入る、入ってすぐは広いエントランスホールになっていて、3階まで続く吹き抜けの造りになっている。
正面には3m位の幅の階段が途中から左右対称になるように広がるように伸びている。
左右をみればそれぞれ廊下が伸びておりドアを数えただけで相当数の部屋があることが窺える。
骸骨は正面階段の右側の部屋に向かいドアを開けて待ってくれていた。
そこは応接室のようで2脚の長ソファーとローテーブル、天井には小さなシャンデリア等落ち着いた感じの部屋になっていた。
部屋に入るとソファーを勧められソファーに座ると、ローテーブルを挟んだ対面に骸骨が座る。
「さて、何から話したものか…」
何やら話あぐねているのでこちらから質問することにする。
「まずは状況が知りたい、こちらから質問しても良いだろうか?」
「ふむ…構わん。答えられる範囲であれば答えよう」
「助かる。まず…ここは何処だ?」
「ふむ…ここはファーム大陸北部イグニス王国にある未開の森の中の我の隠れ家兼研究所といったところか」
「ファーム大陸?イグニス王国…?やはり異世界か?では次だ、あんた何者だ?」
「今更か?まぁ良い…我が名はラバート。元は人間であったが、あらゆる魔法を極めんと不死身のリッチに身をやつしつつも研究している。」
「ラバートか、俺は嶋木将人、人間だ。今年の7月で19になる大学生だ。自己紹介はとりあえずここまでにして、本題なんだが…俺はどうしてここに居る?」
「だいがくせい?ふむ…まぁそれは後ほど聞くとして、質問の答えだが、単純に言ってしまえば事故だ。ぬしは我の魔法実験により召喚されてしまったようだ」
ラバートはやや口調に申し訳なさを滲ませながら答えてくれた。
「事故?故意ではなくてか?」
「うむ、事故だ。…でだ、非常に言いづらいのだが、事故であるが故にぬしを元の場所に帰す方法が現時点では全く見当がつかん」
「やっぱりかよ…でも、魔法で呼びだされたんだから魔法で帰れるんだろ?」
「可能性はある。としか言えん、そもそも今回我が行った魔法実験は未だ研究中のもので効果についても全く解っていない」
「そりゃそうか、実験なんだしな。まぁ可能性があるだけマシか…ちなみに、魔法は俺でも使えるのか?」
「ふむ…ぬしの中にかなりの魔力を感じる。修練次第でぬしも自在に操れるようになるだろう」
「そうか…ラバート、俺に魔法を教えてくれないか?帰れる可能性があるなら魔法を覚えて自分で探したい。」
俺はそこまで言ってソファーから立ち上がりラバートに頭を下げる。
「頭を上げよ。そもそも我の魔法に巻き込まれたのだ、我にはぬしを帰す責任がある。我の出来ることであれば手伝おう」
「ありがとう!ラバート、これから宜しく頼む!」
と、再度俺は頭を下げた。この日俺はリッチの弟子になった。