修行開始!
まずは様子見だな。
『火球』
さっきの練習時より魔力を込めながら詠唱し、野球ボール程の大きさの火球を2つ作り出す。
俺は、2人に向けてボールを投げるイメージで撃ちだす。
投げるというイメージが悪かったのか、火球は大したスピードが出ずにあっさりと躱されてしまう。
2人は身体強化を使用しているのだろう、かなり動きが速い。
正直、このままではどれだけ撃ってもかすりもしないだろう。
「遅すぎるわよ!もっと速く撃てるようにイメージなさい」
サーラが挑発をしてくるが、速くと言われてもなぁ…プロ野球のピッチャーのイメージでいくか。再挑戦の意味も込め同じく火球をイメージする。投げるってイメージだと球状の方がイメージし易いしな。
『火球』
今度は更に魔力を込め一気に8つの火球を作り出す。
早速2人に向けて4つずつ撃ちだす。
さっきよりは速いがまだまだ余裕で躱されてしまう。
くそっ!思ったより上手くいかないな。
「数を増やしたのは良いと思うけど、まだまだ遅いわね。」
構えを解いて、やれやれと首を横に振られ、呆れを含んだ声を掛けられる。
ヒューイも同感とばかりに腕を組んでうんうんと頷いている。
なにコイツら…めっちゃムカつく。
ただ指摘はもっともだ。
う~ん…速さは置いといて、取り敢えずもっと数を増やしてみるか。
半ば意地になり、またも火球を作り出す。その数50個。一気に魔力が抜けていき疲労感がどっと押し寄せる。
「「な!?」」
流石に驚いたのか2人はしっかりと構えを取り火球を見据える。
俺は今回更に工夫を凝らす、森に入った時にラバートがやった様に軌道をコントロールし、追尾するイメージを4つの火球に持たせる。他の火球を周りにばら撒きその動きを隠そうと考えた。
今度こそ、と意気込み50個の火球をそれぞれに撃ちだす。
「くっ…やってくれるわね『土壁』」
流石にこの数で全部を躱すのは無理だと考えたのかサーラは前面に土の壁を作り出し、火球を防ぐ。
「む…『風刃』」
ヒューイに至ってはバスターソードに風の刃を纏い火球を切り捨てていく。
おいおい…そんなのアリか!?
思わず驚くが、意識を集中し必死で火球の軌道をコントロールする。
まずは、土壁で視界が取れない筈のサーラだ。
死角になっているであろう頭上から2つの火球を落す。
「きゃっ!?」
サーラがいた所から短い悲鳴が上がる。
良し!当たった!!
サーラから上がった悲鳴に気を取られたのかヒューイの意識が一瞬そちらに逸れる。
今だ!!俺は残った2つの火球を同じく頭上から落す。
「くっ…」
ヒューイはそれを直前で感じとり、1つは風刃で切り捨て、もう一つをバックステップで躱す。
「ちっ…マジかよ!!」
あれを躱すとか化け物か!…まぁモンスターだけど。と、心の中でツッコミをいれつつ舌打ちする。
「やるじゃない!油断したわ。まさかもう発動後の軌道をコントロール出来るなんてね」
「ん…危なかった」
土壁を解除しながら大したダメージも見せずにサーラが姿を現し、関心の声を上げる。ヒューイが同感だとばかりに頷く。
「ふむ、驚くべき成長速度だな。成果は上々、マサトも疲れただろうし、今日はここまでにするか?」
ラバートがそう言って声を掛けてくる。
サーラには当てただけで大したダメージがなく、ヒューイに至っては当たってもいない。
正直、このまま引き下がっちゃ腹の虫が治まらない。
「もう少し付き合ってくれ。絶対ギャフンと言わせてやる!」
2人は互いに顔を見合わせ一つ頷きあうと
「面白いじゃない。やってみなさい!」
「来い…」
と返事をよこす。
ラバートは、その様子を見てやれやれと呆れた素振を見せるが、よかろうと頷く。
「双方準備は良いか?では、改めて…始め!!」
今度こそ、やってやる!
俺は一つ深呼吸すると2人に向き直り、魔法の準備を開始するのだった。
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