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蝉ファイナル~延長戦~

帰らずの森 調査書 -森に潜むモノ- ある冒険者の記録 ~蝉ファイナル~延長戦の延長戦~

作者: アジの開き

『帰らずの森』

元は名もなく弱い魔物が散発的にいるだけの小さな森だった。


ところが最近になって森から出てこなかったゴブリン達が森の外に出没し始めたのだ。

その日を境に奇妙な噂が立ち始める。

森に何か居る。

森に入った冒険者が帰ってこない。

こんな噂が広まり、噂と共に『小さな森』は『帰らずの森』に名を変える。

事態を重く捉えた冒険者ギルドは森の調査を依頼した

依頼内容は森の調査と行方不明の冒険者の捜索。


その依頼を受けたのは中級冒険者のパーカップ。

依頼を受けない日は酒場で吐くまで飲み続けるそんな男である


森の入り口まで来たパーカップは息を呑んだ

『帰らずの森』と名を変えただけで森の雰囲気が変わったような印象を受けたからだ

森は全体的にうす暗く、恐ろしいものに見えた

この森に入って行方不明の冒険者の探索、そして森の異変の調査をすることを考えると身震いがする

自分には無理だと引き返す事はできた。

しかしこんな依頼簡単だ。俺なら1人で行ける、ついでにその森に潜む奴とやらも狩ってやろうと仲間の冒険者に豪語した手前、引くことはできなかった。

パーカップは折れそうな心を奮い立たせ森に入る。


最初はビクビクと進んでいたパーカップだったが、進むにつれて森の中に変化はなく、小さな森と言われていた時と何も変わっていないことが分かり、折れかけた心は見事に立ち直った。

立ち直ったパーカップは鼻歌を鳴らしながらドンドンと奥へと入っていく。

そんなパーカップの鼻を不快な臭いがくすぐる。

顔をしかめながら臭いを辿るようにソロソロと移動するパーカップの眼前に広がったのは惨状だった。


森の少し空けた場所に2人の冒険者が倒れていた

正確に言えば3人だがそのうちの1人は上から叩き潰されたように潰れており、人と判別するのが難しく気づくのに時間がかかったからだ。

その中の首のない死体に近づき、懐に手を伸ばす。

そしてギルドが発行するギルドカードを取り出し、冒険者ギルドに渡された行方不明者のリストとカードに書いてある名前を照らし合わす。


リストを指でなぞり、カードに書かれた名前とリストに書かれた名前が一致したのを確認して、ため息を出した。

3人の冒険者の亡骸の前で手を合わせ、それぞれのギルドカードを集め深部へと向かっていく


感覚を研ぎ澄まし音を立てずに深部へと向かうパーカップは先ほどの死体から何が潜んでいるのかを考えた。

上から人を叩き潰せるほど大きく、鋭利な刃物を持ち、足跡を残さないもの


考えれば考えるほど混乱していった

一番近いのはトロールだ

大きな体、大きな刃物や棍棒を持ち、バカ力をもって暴れ回る魔物で、ランクはC 

しかし、おおきな足跡が残る

足跡を残さないトロールなんて見たことがない。

となると、新種か。


その時、さっきより強烈な、そしてむせ返るような死臭がパーカップの鼻を衝いた。


死臭立ち込める森の深部

パーカップはそれを見た

数多くの仲間の屍に囲まれた

大きな大きな魔物を見た

パーカップはUターンして一目散に走る


新種だ、見たことがない魔物

一目見た瞬間ゾクりとした


大きな黒いカラダ

大きな赤いヒトミ 

大きな白いハネ


持っている斧が玩具に見えた

全身が逃げろと全力で警告する

肌があわ立つ

後ろからけたたましい音が響いた。

音が確実に自分を追っている。

振り向くな

逃げろ!

逃げろ!!


無我夢中で逃げるパーカップに恐ろしい音は纏わり続けた。


至る所を体をぶつけ、森から転がるように飛び出す。

音は、いつの間にか聞こえなくなっていた


以上が中級冒険者パーカップの経験を元に書き出した文章である。

最後にそう書き記された書類を眺め、白ヒゲを蓄えた初老の男性は険しい表情を浮かべた。


「それで、パーカップはどうなったんですか?」


会議を囲むギルドの職員たちがざわめいた。

しばらくのざわめきの後、周りの職員にせっつかれるようにして茶髪の男性が口を開いた


「音が聞こえるんだそうです。

ずっとずっと頭の中で響いてるんだと。そして、そのまま姿を消しました」


蝉ファイナル~延長戦~もよろしくお願いします

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