八話 トーナメント
「セシリアの使える魔法の種類は?」
「私はねー。風と闇かな。と言っても闇は適性があるだけね。ラルフは?」
「俺は、火と光で光は適性があるのみ。」
「全く違うんだ。じゃあ強化魔法はできないね。」
「でも融合魔法使えるからいいじゃないか?」
「まあね。ん?もう十分たったのかな?」
「皆さん十分経ちましたので、こちらに注目してください。」
「これから私とフレイ先生に分かれて授業をしていきます。私は緑を担当しますので赤の人はフレイ先生のところへ行ってください。」
水晶で緑になった生徒はリーナス先生の所へ、赤になった生徒はフレイ先生の所へ分かれていった。
「よーし。赤だったのは、これで全員か?そっか。15人か。じゃあ、まず柔軟から始める。それぞれ先生のまねをしてくれ。」
フレイ先生が柔らかすぎてついていけていない生徒が幾人かいた。
「何人か休みの間サボっていましたね。高等部に入れる赤の生徒なのですからそれではダメですよ。高等部に入るには色々な試験に合格しなければ入れませんからね。」
「次に、ここにいる15人でトーナメント形式の剣術大会をします。ルールは簡単。私がサークルを書くのでそこから出てはいけません。また、相手を降参させれば終了です。後は私が防御の魔法をかけますのでそれが切れたら終了です。それではアベルさんとエレーヌさんが最初に対戦してください。魔法を使うのは禁止ですからね。」
二人がフレイ先生の書いたサークルの中に入ると、体のまわりに薄い膜が見えた。それは、フレイ先生の魔法で付加した無属性の防御の魔法だった。アベルとエレーヌが剣を構えるとフレイ先生がはじめという合図を送った。
「来ないのですか?」
「レディーファーストでどうぞ」
「じゃあ、ありがたくいかせてもらいますわね。」
そんなやり取りの後、エレーヌが地面を蹴り、アベルに向かって走り出した。エレーヌが上段から、アベルは下段から剣を振った。剣のぶつかる音が響いた。すぐに二人は次の行動に出て、打って離れてという攻防を繰り返したのちにエレーヌが押されてサークルの線のそばまで来ていた。アベルが最後とばかりに剣を振った瞬間、エレーヌがしゃがみアベルを足払いし、その勢いのまま外に出したところで試合は終了した。
「二人ともよい試合でしたよ。」
これはトーナメント戦で試合の順番は適当だが一人余るのでシュリーがシードになった。二人の試合とその後の6試合が終わり、第2次試合になった。一試合目はエレーヌと4組の生徒の試合でエレーヌが勝った。そして、もう二つの試合をはさみとうとうシュリーの出番が来た。
「シュリーさんとバルトさんはサークルに入ってください。」
相手は4組の生徒だった。サークルに初めて入ったシュリーは安心感を覚えた。防御の魔法は城での練習の時もかけていたが自分で守るより誰かに守ってもらうと安心感が違った。
すると、バルトが剣を抜いたのでこちらも剣を抜こうとしたがやめた。先生に目で確認を取られたがうなずいた。
「おい。僕を侮辱するのか!負けるものか!粉々にしてくれる。」
言葉と共に走ってきた。シュリーは柄を握り体勢を低くした。
「はー!!」
上から振られた剣に自分の剣を抜きながら叩きつけた。
凄い音と剣の破片が飛び散った。シュリーは唖然としているバルトの首にすっと剣をつけた。
周りが驚愕していたが、フレイ先生は、拍手をした。
「素晴らしい!学校の剣はそう甘く作られていないのですよ。それを砕くなんて!」
ぱらぱらと、生徒達も拍手をし始めた。
シュリーは剣を引きバルトを見た。
「バルト君、手首痛くなかった?大丈夫?」
「気安く名前を呼ぶな。平民風情が。僕がけがをしたらどうするのだ!苗字を教えろ!そんなやからのいる家なんぞ、潰してくれる!」
「それは無理なことですよ。苗字はこの学校では言葉にしてはだめですから。」
「僕が許す。父上がこの学校に言えばどうとでもなる。っ!何だいきなり触るではない!」
なかなか動かないバルトを見かねて、フレイ先生が来た。
「負けは負けですよ、バルトさん。時間がないからここからよけなさい。」
「次は本気で戦ってやる。今日は手加減をしすぎた。しょうがない、ここから動いてあげようじゃないか。」
そのままバルトはサークルの外に出て行った。
「シュリーさんすごいですね。では、次の人!準決勝を始めます。」
準決勝はエレーヌと4組の人だった。何度も打ち合った結果エレーヌが勝った。
「私が勝つに決まっていますわ。物心ついたころから鍛錬を欠かしませんでしたからね。シュリーさん、決勝でお待ちしていますわ。」
「うん!」
「それでは、シュリーさんとリチャードさんの準決勝を始めます。」
相手は同じクラスのヴェラドだった。
「よろしく。」
「うん。」
「それでは、始め!」
二人は合図とともに、打ち合う。
シュリーは下から攻めた剣を回してヴェラドの剣を弾き、剣をぶつけようとした。しかし、ヴェラドは地面を蹴って一歩下がり剣から逃れるが、そこからシュリーは畳み掛けるように何度も剣をぶつけようとした。すると、今度はヴェラドがちょうどシュリーの剣を避けたようとしゃがんだ瞬間、足払いをした。
「きゃっ!………なんてね。」
一瞬転けそうになったが、そのまま横へ転がった。それまでシュリーが居た場所を剣が通っていった。
「かわされたか。相当強いね、君。」
「毎日訓練しているからね。ヴェラド君も強いと思うけど?」
「父親が騎士でね。それも結構有名な。これ以上は学校内ではしゃべれないけど。」
「へえ。凄いね。じゃあ二段階目行くね。」
シュリーは構え、走っていく。ヴェラドは来るのを待っていた。二人の剣がぶつかった瞬間不思議なことが起こった。ヴェラドの持っていた剣が二つに割れた。断面はきれいに切れていた。
「やった。久々にできた。難しんだよね。剣を切るの。さっきはボロボロになっちゃったし。」
「いや、切れるのはおかしくないか?」
「たまに切れるの。」
ヴェラドの剣が切れたので、シュリーの決勝が決まった。
「いやー参った。今年の生徒は優秀だな。うーん、そろそろ時間か。みんな!少し休憩にする。」
誤字・脱字ありましたら教えていただきたいです。