五話 前世の記憶-前編
朝日が昇るころに起きたシュリーはいつもの日課になっている訓練を軽くやり、セシリアと教室まで来て、昨日は疲れていて話せなかったアベルの所へ行った。アベルの隣にはもう一人いた。
「おはよう。アベル。この子は私と同じ部屋のセシリアとコリーよ。」
「セシリアです。よろしく。この子はコリーです。」
「よろしく!僕は、アベルです。こいつはヴェスタ。こっちは同じ部屋のラルフとウーウェン。」
「ラルフです。よろしく。こっちは、パートナーのウーウェン。」
「ウーウェンはコリーと一緒の緑だね。」
自己紹介が終わって少しすると先生がドラゴンと一緒に入ってきた。
「おはようございます。今日から授業が始まります。まず小冊子の三ページ目を開いてください。…開きましたか?二つ目に書いてある通り、私達人間は午前中に座学で昼休憩があり午後からは外にて授業をします。殆どがこのような日程になっています。但し、午後の授業はクラスごとに場所が違うので迷わないようにしてください。今後中等部の最終学年では一ヶ月間大陸で生活してもらうので頑張って勉強してください。ということで、私の隣にいるのがパートナーのレオンです。シルバードラゴンなのですが今回はクラスに二人いるので珍しくないようですね。それではパートナー達にはレオンと共に外に行きます。」
『我はレオンという。皆着いてくるのだ。』
そう言い、教室から出ていった。そのあとをドラゴン達が追いかけていった。
『シュリーまた後で。』
「うん。気をつけてね。」
うむ。と頷き、ナルもドラゴンと一緒に行った。
「はい。それでは、授業を始めます。中等級魔方陣の教科書を開いてください。とは言っても最初の十ページだけでいいです。初等部で習ったことなので再来週テストをするのでそのための時間だと思ってください。内容はすべて覚えてもらいます。ページの上に魔方陣が書いてあり、ページの下には詳細が書いてあります。次のページに行くにしたがい詳細がなくなっていくのでしっかり覚えて下さい。ページは基本のところを覚えて下さい。わからなければ、先生はここにいるので、聞いてください。テストは満点でなければその日の放課後居残りです。そこで満点になった人から帰れます。それでは、始めてください。」
「シュリー。…シュリー。」
「何?セシリア。」
「これ…授業なの?」
「テストに落ちたら居残りだからね。少し時間をいただけたということでしょう。」
「そっか……。頑張ろう!わからなかったら聞いていい?」
「もちろん、いいよ。」
その後一時間自習をしてチャイムが鳴った。
休憩時間。パートナーが近くに居なくて皆不安だったが、一人の生徒が話せるような距離に居ることに気づき、話そうとしたが休憩の時間では無いらしく話せなかった。
今日の午前中の三つは、魔方陣・数学・魔法薬学だった。二時間目は普通にやったのでいいとして、三時間目。
「軽く自己紹介をして、授業に入りたいと思います。」
ここの、魔法薬学の授業は、三時間目に説明をして、四時間目に実践をしてお昼にはいる。
「皆さんは、初等部の時に人間用の傷薬など人間用のものを学んできたと思います。しかし、それだけではパートナーの怪我などはどうするのでしょう。ドラゴンは治癒力が高く魔力も高いですが、痛みはすぐにはなくなりません。また、魔力の塊でつけられた傷や広範囲の傷は治りにくく時間がかかるため薬を使います。中等部ではドラゴンのための薬を作ります。中には一ヶ月保存しないと完成しないものもあるので、一週間一度もこの授業がないときもあります。……それでは、始めます。」
今回はドラゴン用の傷薬。期間は一週間のものだった。
午前中ドラゴン達はというと広い校庭の一部で授業をしていた。生まれつき記憶があるとしても、体は訓練で動かせるようにしなければならない。
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『我のクラスはここだな。……』
そうナルが呟いていると、レオンともう一頭のフリーズドラゴンがナルのとこに来て頭を下げた。
『あなた様は、我らフリーズドラゴンの王であらせられる魂でしょうか?』
レオンが言った言葉に周りのドラゴン達がざわついた。
『良くわかったな。…ああ、私の魔力か。』
そう言ったとたん周りのドラゴンまで頭を下げた。
『頭を下げるな。誰が見ているかわからない。それに、今はただの一頭のドラゴンだ。』
『は!わかりました。…ですが、あなた様は、どうして此方にいるのでしょうか?』
『任務だ。まあ向こうは他の者に任せてきたから大丈夫だぞ。』
『アレですね。そうですか。』
『授業はしないのか?私のことは誰が見ているかわからないから他の者と同じように扱え。私は此方の世界は初めてだからな、体も動かし難いし授業で訓練せねばならぬ。』
『…はい。そういたします。』
ナルは実は元フリーズドラゴンの王だった。そして前世の記憶を持ちながら、シュリーのパートナーとして存在しているのだった。
ドラゴンの魂は記憶を持ったまま生まれ変わることができる。新しく記憶を持たないで生まれることはできるが1度目はドラゴンの住処で過ごさなければならない。
また余談として、ドラゴンの王と各種族のドラゴンの王は同じ記憶と同じ魂を持って生まれ変わるがまだ数えるほどしか生まれ変わっていない。
読んでいただき、ありがとうごさいます。
5話目完了です。