曇るように、風
掲載日:2012/06/25
「逃げるようにして生きてきたその道の先に、いったい何があるの?」
春風にのって、君の声。
揺れる枝葉と、僕の肩。
「多分、とても綺麗なもの」
「それは、そんなに大事なもの?」
「……分からない」
心をくすぐる、眼と匂い。
影を濃くする、雲とかぜ。
「貴方が、貴方の不快になるような人間はみんな排除されるべき、と考えるほどそれは魅力的なもの?」
「そんな事は、言った覚えがない」
「そう、だから訊いてるいるの」
気に入らないのは、棘と花。
いま欲しいものは、雨と土。
「お前に、俺の何が分かる?」
「……何も」
「俺のことを知って何になる?」
「何かになるわけではないけれど、何かを手にすることはあるかもしれない」
「何だ、それは?」
眩しいだけで、月は悪。
苦しいだけで、闇は善。
「多分、とても綺麗なもの」




