表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Honey Drop  作者: ヒロナ
3/6

第二章

「…よしっ。」

パチン、とホッチキスで最後の書類を纏め終わった。

現在午前3時。睡魔はそこまで忍び寄っていたがまだ寝るわけにはいかなかった。

欠伸を噛み殺して机の右側にある棚に体を向ける。その棚の上から2番目にある鍵のかかる引き出しにはまだ見つかるわけにはいかない書類があった。鍵穴に鍵を差し込んで書類を取り出す。

まだ未完成であるその紙束。それは3日後にまで迫っている咲耶の15歳になる誕生日をもって力を発揮する。

…まだ、誰にも見つかるわけにはいかない。

力がこもってシワが出来た和紙を丁寧に伸ばした。

その和紙には『破門状』と大きく、優美な文字が書かれており、その文字を書いた主は咲耶だと教えていた。

和紙に包まれたなかの普通の紙には叔母がこれまで水門本条家に与えてきた損害を事細かに記し、水門本条家当主・本条咲耶の名前で締められていた。

ただ、まだ未完成だった。

これだけなら、何の力も無いただの紙切れだ。


―――当主の証である印が無いから。


印があれば叔母をこの家から永遠に追い出す書類に。

無い、今、この書類が見つかれば水門本条家当主の保護者への反逆罪として扱われる。


個人の能力より見目や家柄を気にして男ばかりを囲っている叔母に反感を持っている者は多い。

だからこそ、間に合った。

叔母に気に入られずに左遷させられた者達の中には本来の当主である咲耶に直訴してくる者も多い。それをレコーダーに保存し、さらに誓約書まで書かせて何千人という署名を集めた。

…それでも足りない。

印が叔母の管理下にある内は勝ち目など無かった。

虐げられる日々を耐え、ついに3日後には本家から『本物』の水門本条家当主だと認められて印の所有者は咲耶になる。

―――それが、最初で最後のチャンスになる。


貰ったその場。

本家の人間がいる目の前で。

破門状を、叔母につきだす。


それでも抵抗してくる場合はどう対抗しようか。

思案しながら引き出しに書類を入れて鍵をかける。

鍵を首にかけて見つからないようにすると、ようやく電気を消して敷布団に滑り込んだ。


どうしたらいいのだろうか。

考え事をする咲耶の口は笑っているように歪んでいたが目は冷え切っていた。




光が差すのには、まだ暗すぎる。

夢で見た、私に差し出された手は。

…すごく、温かかった気がした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ