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colors  作者: 湊 翼
第三章
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魔力とコントロール

 つい一週間前。

 美穂奈は燃えに燃えていた。

 この世界に残る事を決め、魔法をもっと勉強するのだと。

 じゃじゃ馬だと言われた自分の魔力もねじ伏せ、早く魔法を使えるようになってやるんだと思っていた。

 が……。

「ねむっ……。」

「……毎度景気良く駄々漏れだな、おまえの魔力は。」

 言われて、美穂奈はベットに「きゅう」っと倒れる。

 そう、あの後3日かけて回復させた魔力を使えばまた駄々漏れ状態で倒れ、そしてまた3日かけて回復した魔力は現在進行形で駄々漏れである。

 いや、もうすぐ残量は0である。

「ミホナ、大丈夫?」

 ラズの言葉に、力なく首を振る。

 全然大丈夫じゃない。

 ちょっとでも気を抜けば夢の世界である。

「今回で3回目だ。なんかこう…、手ごたえとかねーのかよ。魔力をコントロール出来る手ごたえは。」

「そんな事言われても、その手ごたえすら良くわからないもの。……コントロール出来る手ごたえってどんなのよ?」

 今まで16年間生きてきて、魔法をコントロールした事なんてない。

 手ごたえはないのかと問われても、その手ごた自体が未知のものでわからない。

「僕は、あまり魔力のコントロールで手こずった記憶がないから、やっぱりここはリング?」

「俺のも、まぁ若干暴れはしたがここまでじゃなかったぞ。」

 そう、美穂奈の魔力は異質らしい。

 基本、魔力はその人の生命エネルギーの様なもの。

 魔力を扱う人物にとても良く馴染んでいるものなので、最初に少し戸惑いはしても、基本すぐに扱えるもの…らしい。

(全くもって一向にコントロール出来る兆しがないんだけど。)

 そうこうしているうちに、美穂奈の中の魔力の残量が0になり、勢い良く噴出していたあの赤い粒子が消えていく。

 もう3度目だ。

 そろそろ、どれくらいで自分の魔力がなくなるのかも把握してきた。

 噴き出す量は美穂奈の感情の起伏に影響されるので、あまり正確ではないが時間にして、大体3時間。

 噴き出すのをずっと眺めているだけだったので、なんとなくの量も把握出来た。

 全体の何パーセント使用すれば体が怠くなってきて、何パーセント使用すれば眠くなってくるのか等も分かるようになった。

 が、肝心のコントロールの仕方に関してはサッパリ糸口をつかめない。

(………………そして、魔力0は意識不明を意味す……る……。)

「……ミホナ?」

 すーすーと規則正しい寝息が聞こえてくる。

 ラズはそっと名前を呼んでみるが、反応はなく完全に寝てしまった様だ。

「……うーん、困ったね。」

 ラズの言葉にリングは特大の溜息を吐く。

 本当なら、美穂奈のカラーが美穂奈に馴染むのを待ちつつゆっくりと教えていけば良いのだが、今回はそういう訳にはいかない。

「……リング、ミホナの魔法の才をリンドベルイの名にかけて保証するって言っちゃったもんね。」

 そう、カラー登録をする際に、リングは言った。

『ミホナはきっと、素晴らしい魔法使いになります。リング=リンドベルイの名にかけて保証致します。』

 と。

「王立魔法院の入試試験まで、後1ヶ月。魔力のコントロールなんてさっさと終わらせて、次いかなきゃいけねーのに……。」

 学科はともかくとして、魔法実践の経験がない美穂奈にこの1ヶ月は実技を叩き込もうと思っていたのだ。

 だが、思わぬ落とし穴にはまってしまった。

 魔力のコントロールが出来ない。

 それは、魔法を使うのに必要不可欠なスキルで無視する事は出来ない。

「赤の原色ってだけで、合格ラインは大分低いだろうがこのままじゃな……。」

 美穂奈が受けさせられる試験は多分名ばかりのお飾り試験である。

 本当なら何も無しで入学させたいが、一応最高峰と謳われている魔法学校に試験無しで入学は世間的にマズイだろうという事だけで行われる試験だ。

 DランクだろうがEランクだろうが、とりあえず魔法を使えさえすれば、将来有望だからと適当に理由を付けて入学となるだろう。

 だが……。

「さすがに、魔法を使えない者を入学させてくれないだろうね。なにせ一応“魔法”学校なんだし。」

 ラズの言葉に、リングはもう一度大きく息を吐く。

 そう、一応あそこは“魔法”学校なのだ。

 魔法が使えない者が入れる訳がない。

「…………面倒だからっつって、安易に家の名前使ったのが悪かったな。」

 この場合、叱責されるのはリングだけでなくリンドベルイ家全体だ。

 マズイ事をしたと顔をしかめるリングに、ラズも困った顔で美穂奈を見た。

「才能は……あると思うんだけどね。」

「あり過ぎんだろ。こいつの手に有り余るぐらいだ。だからコントロールが上手くいかないんだよ。」

 そう、美穂奈の魔力はとても多く、強い。

 それは溢れ出る魔力を見ればわかる。

 だが、美穂奈にはまだその魔力を抑え込めるだけの力が足りないのだ。

「……んー。こればかりは慣れだからね。魔力を体に馴染ませ、少しずつコントロールしていくのが一番の近道なんだけど。」

「最短で3ヶ月だな。……その場しのぎで良いから1ヶ月でなんとかなる抜け道とか思い浮かばねーのかよ。」

 言ってはみたものの、ラズもリングも堅実派だ。

 近道・抜け道はその場しのぎのどうしようもないものだと知っているから手を出さない。

 最終的に無意味だがらだ。

 なので、思い付けと言われてもすぐにポンポンと良い案は浮かばない。

 案は浮かばないが……。

「………………浮かんだな。」

「………………浮かんだね。」

 2人同時に呟いた。

 そう良い案は思い浮かばないが、その場しのぎという単語を聞いて思い浮かぶ人物ならいる。

「あれに恩を売るのかよ……。」

「僕も、あまり気は進まないけど……。」

 気は進まないが、これ以上考えても思いつかないだろう。

 何も知らずすやすやと眠る美穂奈に、2人は同時に溜息を吐くのだった。

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