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colors  作者: 湊 翼
第二章
18/32

性格別魔法系統占いと性格別色分析

「とんだ誤算よね。」

 呟いて、美穂奈は本から顔を上げた。

 リングを投げ飛ばして数日。

 これ以上は下がる事ないだろうと思われた、リングの美穂奈への地を這った好感度は、地面を突き抜け現在更に下降中である。

 だが、一度口に出した事を反古ににしてしまうのはプライドが許さないのか、魔法を教えてくれる気はあるようだ。

 毎日ラズを介して運ばれてくる魔法書は「サルでもわかる魔法の基礎」という馬鹿にしたものから、それこそあの赤い本並に分厚くて重い文字がぎっちり詰まってる嫌がらせだろうという本まで多種多様。

 直接の手解きはないものの、送られてくる本にはリングが書いただろう解説が書かれたメモが付いておりとても親切仕様。

「……多分。」

 そう、多分。

 呟いてしまうのにはちゃんと理由がある。

 美穂奈はもう一度本に視線を落とし、すぐに顔を上げた。

「……見たことない文字なんだけど。」

 

 

 

 ■■■■■■■◆■■■■■■■◆■■■■■■

 

 

 

 言葉が通じることに、美穂奈は油断していた。

 だがしかし、よくよく考えれば異世界で日本語が使われている方が変なのだ。

 言葉が通じる方が異常なのだ。

 その為、今まで特に何も意識していなかったのだが、どうやらここにきて壁にぶち当たってしまった。

 文字。

 この世界での目に見える言葉は、日本語とは似ても似つかないものだった。

 英語でもなければ、フランス語でもない。

 そう、あえて言うならアラビア文字。

 そして、美穂奈はこの文字を知っている。

「あの赤い本に浮かび上がった文字……よね、多分。」

 そう、また多分。

 なんせ似たような形なだけであり、同じかどうかの判別は付かないから。

「サルでもわかる魔法の基礎」らしき本も、ラズが言い訳の様に、

「これはね、とてもわかりやすく簡潔にまとめられた素晴らしい教本であって、決してミホナを馬鹿にしてる訳じゃないんだよ、本当だよ!」

 と言わなければ、気付かないままだっただろう。

 何せ、文字が読めないのだから。

 ラズに文字を教えて欲しいと言おうとしたが、この間のリングぶん投げ事件のせいか、ラズは美穂奈を恐がり、こちらが何か言うよりも早く帰ってしまう。

 リングはリングで、美穂奈の顔を見たくないのか、ラズを介してばかりで会いに来ないので言う機会すらない。

 ソフィアに頼るという選択肢は、さすがに世間知らずというだけで文字まで読めないとかないだろうという結論に至り、言うわけにはいかなかった。

 なので、仕方がなく本を眺めていたりしたのだが、残念な事に美穂奈が知っているどの文字にも似ておらず、しかも内容は魔法とこれまた未知のもの。

 書いてある内容の予想もつかず、独学で覚えようにもちょっと無理がある。

「誤算よね……。」

 魔法を覚えるのに時間はかかるし、苦労するかもしれないだろうという覚悟はしていたが、まさか魔法を覚えるとかそれ以前の問題だったとは。

 食堂のある一階におり、美穂奈は適当に辺りを見渡す。

「なんかないかな……。」

 呟いて、雑誌の入ったラックに手を伸ばす。

 パラパラと中を見てみるが、やはり何が書かれているのかわからない。

 とりあえず、リングがくれる難しい魔法関係の本ではなく娯楽用だろうが、読めなければただの難しい本という一緒のカテゴリである。

 雑誌を開いたまま、はぁと溜息を吐いた美穂奈はすぐ後ろにある気配に気付かなかった。

「……ミホナちゃん?何読んでるの?」

 ビクッと体が大きく跳ね、美穂奈は慌てて振り返った。

 そこには、同じく驚いたような顔のソフィアが立っていた。

「ご、ごめんなさい。驚かせちゃったかしら?」

「い、いいえ!こっちこそ、ごめんなさい。」

 別にやましい事をしていた訳ではないが、挙動不審になってしまう。

 文字が読めないのがばれたらどうしようと、無意識に思っているからかもしれない。

「あ!ミホナちゃん、それに興味あるの?」

 そんな美穂奈の胸中を知らず、ソフィアは美穂奈の手の中にある本をさし、嬉しそうにそう言った。

(興味があるない以前に、読めないんだけど……。)

 心の中で呟きつつ、けれど今下手を言ってはいけないと美穂奈はソフィアの話に乗ることにした。

「そ、そうなんですよ。面白いですよね、こういうの。」

 するといつも落ち着いた雰囲気のソフィアが興奮した様に体を乗り出した。

「そうよね!根拠がないという人もいるけど、私は結構当たってると思うし、好きなのよ。」

 何の話だろうと思いながらも、美穂奈はニコーッとソフィアに笑いかける。

 とりあえず、喋らず笑顔で乗り切ろう。

「ミホナちゃんは何タイプかしら……。意外と攻撃系とか?」

(攻撃?!何、その物騒なあれは!!)

 話に付いていけず、曖昧な笑顔のまま固まっている美穂奈にソフィアは食堂の椅子をすすめてきた。

 本格的に腰を据えて話す気の様だ。

性格別魔法系統占せいかくべつまほうけいとううらないも良いけど、性格別色分析せいかくべつカラーぶんせきも面白いわよね!」

「性格別魔法……えっと。」

 ソフィアが何を言っているのか、美穂奈にはサッパリわからなかった。

 サッパリわからなかったが…。

「私、興味はあるけどそこまで詳しく知らないんですよ。だから、ソフィアさん色々教えて下さい。」

 そう、興味はある。

 良くはわからないが、魔法とカラーに関する事ならば興味はある。

 だから美穂奈はなるべく怪しまれずに情報を聞き出そうとそう言った。

「そうなの?じゃあ、私が知ってる事、色々教えてあげるわね。」

 そして、効果覿面だった。

 それからしばらくの間、美穂奈はソフィアから性格別魔法系統占せいかくべつまほうけいとううらないと、性格別色分析せいかくべつカラーぶんせきというものの説明を数時間にわたり聞かされるのだった。

 

 

 

 ■■■■■■■◆■■■■■■■◆■■■■■■

 

 

 

 ソフィアの長い長い話を聞き終え、自室に戻ってきた美穂奈はボフンとベットに倒れ込んだ。

 ソフィアの話は面白かった、面白かったがとにかくしつこかった。

 おっとりした性格に見えて、好きな物には熱くなるタイプの様だ。

 美穂奈は先程まで説明してもらっていた内容を思い出す。

 性格別魔法系統占せいかくべつまほうけいとううらない。

 俗に言う、血液型性格分類の様なものだ。

 A型は几帳面だとか、O型はおおらかであるとかそういう感じ。

 統計の結果が出ているという人もいれば、何の根拠もない学会では認められていないと言う人もいる。

 そんな感じで、性格別魔法系統占せいかくべつまほうけいとううらないも賛否両論わかれるらしい。

 ゲームでお馴染みの、火属性・水属性・地属性・風属性・光属性・闇属性という系統は、この世界でも存在はするが、あまり重要視されるものではない。

 ゲームや本で良く、得意系統は火属性とか、苦手属性は地属性とか聞くが、この世界の人達は皆、全ての系統の魔法を使えるらしい。

 得意属性や苦手属性がないのだ。

 そのかわり、属性でなく、得意不得意系統の魔法を持っている。

 攻撃系・防御系・補助系・治癒系・移動系・呪術系。

 攻撃魔法を得意とする者は血の気の多い者が多く、防御系魔法を得意とする者は自分より他者を思いやる系統の者が多い。

 そういう系統にあるというのが、性格別魔法系統占せいかくべつまほうけいとううらない。

 そして、性格別色分析せいかくべつカラーぶんせきは、名前の通りカラーによって性格を判断する。

 青系統は冷静な理知的タイプが多く、白系統は純真無垢な者が多い。

 カラーは遺伝的なものなので、性格に影響されてもおかしくはないが、それだと一族中が同じ性格の人間になってしまう。

 それはいくらなんでもないだろうと美穂奈は思う。

 ソフィアの話は面白く、興味深いものだったが、全部が全部真実で信じようという内容ではなかった。

 けれど、ひとつの目安の様なものにはなるかもしれない。

 その程度の知識としてとどめておく。

 占いに盲目的になる気はない。

 でも……。

「緑系統で防御魔法が得意なラズは、優しくおおらかで他者を思いやる系統にあり、黄色系統で攻撃魔法が得意なリングは、明瞭活発で血の気の多い傾向にある、か。」

 なかなか的を得ていると思う。

 占いも馬鹿に出来ないなと思いながら、美穂奈は眠りについた。


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