序章 聖地ホルシオス(3)
再び現在のシーンです。
もうすぐ、問題のキャラに会えます。
「アルシオン、早くおいでよお」
先を歩いていた、瑠璃色髪の少女が手を振る。
ぱっちりとした青玉の瞳をした愛らしい少女だ。
ただ、背中に天使のような白い翼と、魔物のような黒い翼が生えていることから、人間でないことは一目でわかる。彼女は幻霊獣なのだ。
少女にしては、豊かすぎる胸元は魅惑的であり、微笑むと小さな牙が見える。
歩くというより、ぱたぱたと、低空飛行しながら、目的地へと飛んでいった。
その無邪気なしぐさに微笑しながら、アルシオンは先を急いだ。
「ねえねえ! ここっ? ここだよね? アドさん!」
先に来ていたスーンは、二人が来るなり訊ねた。
「ああ。確かそのはずだ。剣を目印にしておいて良かったな」
アドは答える。
ホルシオスの墓の周りには、氷華が植えられている。とはいえ、その範囲は日が経つにつれて、広大なものになっていくので、すぐにホルシオスの眠る、正確な位置を見失ってしまう。そのため、何か他の目印となる物が必要だった。しかし、目印の剣さえも氷華に埋もれ、侵食されようとしていた。
「……よくここがわかったな」
ぽつりとアルシオンは呟く。
スーンの熱意に、感心するよりも呆れてしまった。
「ほんとっ! お花がいっぱいで、困っちゃった。でも、剣がおいでって言うから、そしたら、ぼくね! ぼく、すぐにわかったよ」
スーンは、はしゃいで言う。
「剣が? 不思議だな。オレは何も感じないが。おまえはどうだ? アルシオン」
促すようにアルシオンに言った。
……剣……
言われて初めて、アルシオンはまじまじとそれを見つめた。
フィラ・デ・ルフィア。
師は、そう呼んでいた。氷のように美しい剣。氷華と絡み合っているその姿は、いかなる名画にも勝る図であろう。
アルシオンの目は、その剣に釘づけになる。
……悪魔……
見覚えは、無論あった。
母の命を奪い、父の命を奪った悪魔。
剣の持ち主である、師さえも失った。
……死神……
憎悪が沸き上がるのが、不思議と自分でもわかった。
「アルシオン?」
アドは、異様な形相でそれを見つめるアルシオンに気がついた。
アルシオンの脳裏に、悪夢が蘇る。
だが、彼は不思議とその剣に魅かれていった。
まるで、吸い寄せられるように、彼は歩を進めた。
一歩、また一歩と。
そして……彼はそれに触れた。
……光が走った。