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目の前には美味しい食事。

見たこともない食材もあるが、味は食べ慣れた洋食とさほど変わらない。


私は、観光でしか見たことのないような、豪華な食堂の中心に座らされていた。

そして目の前には、先ほど挨拶をした3人が、フードはどこへやら、シャツなどの私服に(といってもきちんとしてる)着替えて、座っている。

私は、残業終わり、へろへろの腹ペコということで、ご飯をいただいているが、3人はすでに夕食はすませたあとだったらしく、華やかなティーカップに入った紅茶のようなものを飲みながら私へと向き合っていた。


「〜〜というわけです」


アレックスは、しっかりと最後の言葉を締めた。イーヴァのほうが年上のように見えるが、説明慣れしているのは、アレックスのようだ。


しかし、なにが、"というわけ"なのか?

今この国が大変で、長年救世主の召喚に取り組んでて今日初めて成功して、それが私で、ご飯を食べながら、この国を助けてくれなどという大役を押し付けられそうになっている。


――まじか。


別に前の世界に未練らしい未練――いや、気になっていた漫画の続きはなんとしても読みたかったけど――は、ほぼないとはいっても、こんなよくわからん世界に飛ばされて、落ち着いていられるわけもなく……。


「……私は帰れるんでしょうか?」


えっ、と驚いた表情をしながら、ルカは可愛い瞳でこちらを見ている。アレックスの表情も少し硬くなった気がする。たぶん気の所為ではない。


「その、クタリは……帰りたい……それは、そうですよね」


アレックスは、間をじっくりあけながらそう言った。


「ええ……まあ」

「困る」


真剣な表情ですかさず言葉にしたのは、それまで話してなかったイーヴァだった。それにならうように、アレックスも、言葉を続けた。


「そうだな……それは、困ってしまいます。この数年、あなたを召喚することに力を注いでいまして、オレたちでも、仕事はこなしているんですが、この国の問題は山積みでして」

「山積み」


自分のパソコンのモニターに積まれていたタスクリストを思い出しながら、積まれるのは……やだな、と、そんなことを思う。異世界に来ても、仕事は山積み。わたしは、その山をまたせっせかと、身を削りながら、片付けねばならぬのでしょうか。


「それに、無償で働けなんていいません。3食食事付きだし、ここの屋敷で自由に過ごしていただけます。成果を出せば、新しい屋敷でも、なんでも手にはいるはずです。」

「はあ……」

「あなたの国では、どうだったかは、知らないですが、この国では6時間労働」

「え」

「そして、残業はないです」

「やりましょう」


思わず、力がこもったひと言を口にする。

久しぶりに聞いた"残業なし"の言葉に、思わずテンションが上がってしまっただけではあるが、成果報酬あり、嬉しいことはない!仕事をしても家賃は上がり生活費もあがり、貯金はすっからかん。もっとぐーたら、自分の時間を満喫したいと、考えていた、そんな私からすれば、ありがたいことはないのでは?!と、思わず食いついてしまった。


「いや、でも、さすがに、私が仕事できるなんて、どこにそんな保証が?」


ルカがキョトンとしながら、こちらをみている。どうやら、できないなんてことは一切予期していなかったらしい。

それに応えたのはイーヴァだった。


「そういう召喚だ。できないのか?」

「……できないのか?と言われましても……やってみないことには」

「まあ、いい。明日には、はっきりする。審査が行われれば、君の適性もわかるし、仕事もわかる。そういう仕組みになっている」


そういう仕組み……?ジョブ選択的な?就活の時の適性診断的な?わからないけど、少なくとも明日にはわかるんだろう……。無職で放り出されないことだけを祈ろう。


「わ、わかりました……」

「今日は夜も遅い、部屋を用意するから、ゆっくり休め」


イーヴァは、そう言いながら、自分の仕事を片付けると言って、部屋から出ていった。


「きちんとした説明がしきれず、その、すいません。明日以降も必要な時には、話しますんで」

「いえいえ……」


アレックスは、イーヴァが出ていったドアの方を見ながら、私へ軽く頭を下げて、そう言った。


「ご飯が食べ終わったら、部屋に案内しますね」


労働時間は6時間で残業なしと、そう言われたのに、夜遅くに仕事をしなければいけないイーヴァの違和感を抱えながら、残りの食事を待たせてはいけないと、口に放り込んだ。もちろん、マナーは最低限守って。

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