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「ゴールデンパレスの前で」- 紹介

紹介




2018年6月24日。


イギリス南東部、アルマンドトムという小さな町。

その日の朝、太陽は町の風景の向こうから昇ってきた。夏の始まりだからか、夜明けはとても早かった。


けれど、この町は現代の世界の常識からすると、なんだかとても奇妙な場所だった。

もし旅人が偶然この町に足を踏み入れたとしたら、きっと「ここは19世紀に迷い込んだのでは?」と思ったに違いない。

町は人里離れた場所にぽつんと存在していて、誰からも特に注目されることはなかった。

人口は数千人ほど。だがそこには、時間が止まってしまったかのような空気が漂っていた。


町の近く、森と川に囲まれた場所には、巨大な山がそびえていた。

しかし、その山には名前すらなかった。

まるで町の人々も、それどころか世界の人々全体が、その存在をまったく気に留めていないかのようだった。


「そこにあるのは当たり前だから」という理由だけで、誰も何も問わない。


町の隅っこには、一軒だけ妙に目立つ家があった。

見た目は中世の小屋と、近代の研究所を足して二で割ったような、不思議な建物だった。

よく見ると、ドアには看板が掛けられていた。

こう書かれている:


「ツリー・アベニュー23番地」

その下にもう一行、

「ニュートン研究所」


どうやら看板に偽りはなく、そこは実際に研究所らしかった。

けれど中は近代的とはほど遠く、まるで映画に出てくる「中世の狂った科学者の工房」のようだった。

計算道具や机、あちこちに散らかった発明品。どれも統一感はなく、ごちゃごちゃしていた。


そのときだった。

家の奥から突然、大きな音が鳴り響いた。何かが階段から転げ落ちたような音だ。

それは「何か」ではなく「誰か」だった。

階段から盛大に転がり落ちてきたのは、背が高めで、茶色の髪をくしゃくしゃにした若い男。

床に倒れ込んでも、痛そうな様子はなく、ただ白いベストについた埃を払って立ち上がった。

彼を見てすぐに気づくのは、目――そう、彼には虹彩異色症があったのだ。

片方は茶色、もう片方は緑色。


その名はアイザック。アイザック・ニュートン Jr.。

ちょうど25歳になったばかりの青年だった。

名字に騙されることなかれ――彼は本当に、あの伝説の物理学者アイザック・ニュートンの子孫だったのだ。


「そんな由緒ある家系の人間が、なぜこんな田舎町で、しかも中世みたいな暮らしをしているの?」

そう思う人もいるだろう。

答えは案外シンプルだ。

――彼がそうしたかったから。

贅沢な生活に退屈してしまった彼は、金や豪邸から一歩引き、心を自由にしたかったのだ。

19歳で祖父母の家を出て、誰も自分に関心を持たないような場所に住むことを選んだ。


だが、この日は普通の日ではなかった。

アイザックは、町のそばにある謎めいた山に登るつもりだったのだ。


「なぜ今まで誰も挑戦しなかったのか?」と不思議に思うだろう。


山の高さも起源もよく分かっていない。

ただ一つ確かなのは、そこに挑もうとした者は誰一人成功しなかったこと。

登山家は消え、飛行機で近づこうとした冒険者は墜落した。

やがて人々は挑戦を諦めた。

もともと辺境の地で人目につかないこともあり、その存在自体が忘れられていったのだ。


だがアイザックには、どうしても気になる話があった。

旅の商人から聞いた伝説――


「山の頂上には黄金の宮殿があり、神々のパンテオンが存在する。人間には決して足を踏み入れられない場所だ。」


普通の人なら鼻で笑うだろう。

けれどアイザックは違った。

彼は神話の熱狂的なファンだったのだ。

ギリシャ、北欧、東洋、どんな神話でも夢中になって読み漁った。

だから老人の話を、彼は真剣に受け止めた。


「なんて美しい日だ、美しい朝だ、そして夢を叶える最高の瞬間だ」

そう思いながら彼は家の扉を閉めた。

「選択肢は二つだけ。五分五分だ。死ぬか、登るか……まあ、多分死ぬな。」

ニュートン Jr. の考え方はいつも極端だった。

挑戦や問題を「成功か失敗か」の二択でしか考えない。中間なんて存在しないのだ。

能天気な馬鹿ではない。だが間違いなく無謀だった。


彼にはもう一つ、奇妙な特徴があった。

人間離れした強さと速さを持っていたのだ。

理由? 説明はない。ただ「そういうもの」としか言えない。

けれど、誰もそれを気にしなかった。

むしろ木が倒れて家を壊したときなんかは、とても役立った。


そうして彼は山へ向かう。

町から山までは5〜8キロほど。

装備は何も持たずに、ただ走って行くことにした。

「馬鹿か?」と思う人もいるだろう。

たしかに。

だが彼は「手と足さえあれば登れる」と考えていたのだ。


町を出てから7分13秒。

距離は実際には8キロだった。

山の麓に立ったとき、彼は不思議な力に引き寄せられるのを感じた。

まるで上から伸びる見えない手が、彼を呼んでいるようだった。

山はただそこにあるだけで圧倒的な存在感を放っていた。

見上げると、実際の十倍は大きく見える。

風がヒュウヒュウと鳴り、岩陰から影が「ここにいるぞ」と囁いているようだった。

それが不思議と彼をワクワクさせた。

もちろん、心の奥底には不安もあったが、それを無理やり押し殺した。


登る前に彼は簡単なメモを取った。

「風向き」「岩の性質」「所要時間の予測」――

計算によれば、22時間以内には頂上に着くはずだった。


その紙と鉛筆を地面に投げ捨て、彼は勢いよく駆け出した。

白いベストが風に舞い、深緑色のゆったりとしたズボンが彼に自由な動きを与える。

そして、左右で色の違う瞳が前を見据えていた。


――冒険の先へ!



これはこのシリーズが何についてのものかを簡単に紹介するものであり、第1章の前に置くべきものです。しかし、これまでのところ人々が興味を持っているかどうかを確認したいので、そのまま投稿しています。

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