目覚め?
門の目前に立つと、肌に刺さるような冷気が一気に全身を包み込んだ。
吹きつける風は、前回よりも重く、冷たく、まるで何かがこちらを試すかのようだ。
見上げた門は、以前よりもわずかに開いており、内部から淡く光る霧がゆらめきながら漏れ出している。
その霧が地面に触れるたび、低くうなるような脈動が足元を震わせ、胸の奥まで響いてきた。
(……心臓と同じリズムだ)
脈動に合わせて呼吸が浅くなっていく。耳の奥がきんと痛み、視界の端に白い靄のような揺らぎが広がった。
足元の砂利がふわりと浮き上がり、微かな金属音とともに空中で踊る。
「レンシス殿、危険です、離れて――!」
サーシャの声が届くより早く、門の中心から波紋のような光が放たれた。
それは水面を広げる波のように辺り一面を包み込み、俺の体を真正面から貫く。
全身の血が逆流するような感覚――そして、胸の奥から熱と光が押し寄せてくる。
掌を見下ろすと、そこから細く透き通った光の糸が溢れ出していた。
糸は門の脈動に呼応するように震え、次第に幾何学模様を描きながら空間に広がっていく。
(……知ってる。この模様……でも、いつ、どこで……?)
記憶の底をかき混ぜられるような感覚に、意識が揺らぐ。
倒れそうになった瞬間、背後からサーシャの腕が回り、俺の体を支えた。
「しっかりしてください!」
「……ああ、大丈夫……たぶん」
けれど、心の奥ではもう理解していた。
これはただの偶然じゃない。
俺は門と、何か深いところで繋がってしまった――そして、その力の一端が、今、目を覚ましたのだ。




