表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/39

レオニードのさぐり

会議が終わり、重たい扉が音を立てて閉まる。

残ったのは俺とサーシャ、そして席を立たないレオニードだけだった。

窓の外は赤く染まり、夕暮れの光が長い影を床に落としている。


「レンシス殿」

レオニードは椅子に腰を掛けたまま、穏やかな声で切り出した。

「あなたは――こちらで生まれた方ですよね?」


「……どういう意味ですか」

反射的に返した声が、わずかに硬くなる。


「我が国の古記録には、ごくまれに“別の世界の記憶”を持つ者が生まれるとあります」

彼は机の上の《パンゲラス年代記》を指先で叩きながら続ける。

「そうした者は、門や異常現象に深く関わることが多い。……あなたには、何か覚えがありませんか?」


「……ありません」

即答したが、胸の奥に小さな波紋が広がるのを感じる。

サーシャがすっと俺の横に立ち、その視線が「言葉を選べ」と告げてきた。


レオニードは俺の顔をしばし見つめたあと、薄く笑って肩をすくめた。

「そうですか。では今は、それで構いません」

彼は立ち上がり、歩き出す直前にだけ振り返る。

「ですが――もし思い出すことがあれば、ぜひ私に教えてください。必ず役立ちます」


そう言い残し、扉の向こうへ消えていった。

足音が遠ざかり、部屋に静けさが戻る。

俺は深く息を吐いた。

「……あいつ、完全に疑ってるよね」

「ええ」サーシャは即答したあと、わずかに口元を緩める。

「でも――王太子殿下の目は、敵のものではありませんでした」


その言葉に、少しだけ胸の緊張がほどけた気がした

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ