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一旦帰還して会議

王城の会議室は高い天井と白大理石の壁に囲まれ、窓からは夕暮れの光が差し込んでいた。

長机の中央には地図と記録用紙が広げられ、その周囲をヴォルグラード・アルディナ両国の軍関係者と学者たちが囲んでいる。


レオニード王太子が椅子に腰を下ろし、軽く手を叩いた。

「――それでは、第一回合同調査の報告を始めましょう」


測量士が立ち上がり、手元の書類を確認する。

「現場では最大瞬間風速、およそ四十メートル。木造家屋なら半壊レベルです。また、方位磁針は完全に狂い、金属探知機が誤作動を繰り返しました」


「磁場の乱れ…記録にも残る現象だ」父ヴァルディミールが低く言う。

「門が開きかけているのか、それとも別の要因か――」


そこで、アルディナ側の書記官が分厚い革表紙の本を机に置いた。

「こちらは《パンゲラス年代記》。現場でも触れましたが、今一度ご説明を。古代の“天使”が光や音の振動を用い、巨石を浮かせて建造物を築いたとあります。その建造物が門を呼び出した、とも考えられております。そしてその門は、あちらの世界とこちらを繋ぐ…と」


学者が静かに続ける。

「この記録が真であれば、“門”は大陸分断以前から存在していたことになります」


レオニードが俺に視線を向け、口元だけで笑った。

「どうです、レンシス殿。こういう話はお好きでしょう?」

「いや…面白いとは思いますけど、好き嫌いで片づけていい話じゃないですよね…」


その横で、ユーリが小声で唸る。

「うぅ……菓子を食べすぎた……胃が……」

「だから言ったでしょ。なんでユーリは食べ物が絡むと自制心が消えるの?」俺は額を押さえた。


父はそんなやりとりを無視し、レオニードに向き直る。

「双方の監視網を統合し、次回の調査では長期観測を行う。異常が拡大する前に動く必要がある」

「同意します」レオニードは頷き、場を見渡す。

「この任務には、引き続きレンシス殿にも参加していただきたい」

「……え、俺ですか」

「ええ、あなたの“目”は不可欠ですから」


またしても逃げ道が塞がれたことを悟り、俺は静かにため息をついた。


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