接近、調査
アルディナ軍とヴォルグラード軍が並んで進む光景は、正直ちょっと不思議だった。
甲冑の形も、旗の色も、歩き方さえ違うのに、今だけは同じ方向を見ている。
砂浜に仮設の指揮所が設けられ、地図と測量器が並ぶ。
父とアルディナの将軍が低い声で打ち合わせを始め、その脇で俺とレオニードも配置図を見せられた。
「殿下はこちらの小隊と行動を」
「俺も前線行くの!?」
「前線じゃありません。前方観測です」
――いや、それもうほぼ前線だろ!
ユーリは自分の背嚢を肩に掛け直し、俺の耳元でぼそっと言った。
「観測って、動かない的になるやつですよね……」
「やめてそういう不吉な言い方!」
やがて号令が飛び、調査隊が編成される。
先頭は偵察部隊、その後ろに計測班、最後尾に支援班。俺たちはちょうど真ん中だ。
門までは徒歩で小一時間ほどの距離。
途中、低く唸るような音が風に乗って届く。
空を見上げると、薄雲の向こうにあの細い光がちらついていた。
近づくほど、胸の奥がざわつく。
「……本当に行くのか」
つい本音が漏れると、横のレオニードが笑った。
「行くんですよ。あなたも、私も」
そして丘を越えた時――視界いっぱいに“門”が現れた。
昨日よりわずかに太く、脈打つ光の柱。
誰も言葉を発しない。靴音と装備の金具が触れ合う音だけが響いていた。
(これが……俺たちが踏み込む場所か)




