戦略会議
王城・戦略会議室。
大きな楕円形の机を囲んで、将軍や参謀たちがズラリと並んでいる。
その端っこに、なぜか俺――レンシス・ヴォルグレフも座らされていた。
(いや、俺まだ五歳だよ!?会議って年齢制限とかないの!?)
机の中央には、さっきの“門”の映像が魔導投影で映し出されている。
波打つ海、赤い光、そして最後の閃光――何度見ても不気味だ。
父が重々しい声で口を開く。
「……この現象、放置はできぬ」
「門の規模から考えても、アルディナ側にも視認されているでしょうな」ユーリが言う。
「隣国が動く前に、こちらから探りを入れるべきかと」
(あ、それ外交的には正しいやつ)
だが父は無言で腕を組み、机を指でコツコツ叩くだけだ。
……いやな予感しかしない。
「…レンシス、お前はどう見る?」
「えっ!?俺!?」
急に振られて変な声が出た。
視線が一斉に俺へ集中する。
ここで下手なこと言うと、また「攻め時だ!」って盛り上がる未来しか見えない。
でも黙るのも怪しい。
「えっと……アルディナは交易が盛んだから、門を理由に通商路を止めると絶対反発しますし……逆に、共同行動を提案すれば情報も手に入るし、余計な争いを避けられる……かも?」
将校たちがざわつく。
「共同行動……つまり、合同調査ですか」
「確かに、それなら……」
父が目を細めて俺を見る。
(やばい、怒られる?)
しかし次の瞬間、低くうなるように言った。
「……よかろう」
え、採用!?
「使者を立て、アルディナに交渉を持ちかける」
「はっ!」将校たちが一斉に立ち上がる。
父はさらに続けた。
「ただし――その使者団には、レンシス。お前も同行せよ」
「……は?」
こうして俺は、門を巡る調査という名目で、隣国アルディナ王国への初めての“外交訪問”に連行されることになった。
(いやこれ、絶対また何か巻き込まれるやつじゃん……!)




