表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/39

門が消えた

“門”まであとわずか――という距離になった瞬間、

空気がバチッと弾けるような音が響いた。


甲板の手すりをつかんだ手に、ピリッと静電気みたいな感覚が走る。

海面がざわざわと波立ち、門の周囲の水が不自然に盛り上がっていた。


「うわっ……!なにこれ!」

俺が思わず声を上げると、サーシャが低く呟く。

「……空間が歪んでいます」


門の表面が突然、渦を巻くように回転し始めた。

赤と青の光が乱れ、ビリビリと耳障りな振動音が全身を包み込む。

まるで鼓膜じゃなく、骨そのものが震えているみたいだった。


「なんか……空気が重い……」

呼吸がしづらくなり、胸の奥に圧がかかる。

甲板の端では、双眼鏡を構えた将校が一瞬よろけて手をついた。


門は、激しく瞬きながら形を揺らしていた。

次の瞬間、空間がぐにゃりと歪み、まるで巨大なカメラのフラッシュを焚いたように視界が真っ白になる。

「うわっ!」

俺は思わず目を細めた。


白光は一気に収束し、門の輪郭がぐんぐんと縮んでいく。

――あ、消える?

そう思ったのも束の間、光は完全には消えず、海の上に小さな輝きとして残った。


今の門は、以前のように海と空を縫い合わせる巨大な柱ではない。

けれど、目を凝らせばそこに、薄く淡い光の円がゆらゆらと揺れている。

水面が周期的に波打ち、光が脈打つたびに空気がかすかに震えた。


「……完全には閉じてないな」

父の低い声に、周囲の将校たちが眉をひそめる。


(なんだよこれ……ゲームで言う“休眠モード”みたいじゃん)

縮んだだけで、まだしっかり存在している。

そして、あの不気味な鼓動みたいな光は――いつまた膨れ上がるかわからない。


胸の奥がざわつく。

まるで、“次のターン”をじっと待ってるみたいだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ