表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/39

船の上にて

船はゆっくり沖へ出て、波を切る音が一定のリズムを刻んでいた。

俺は甲板の端で海を眺めながら、そっとため息をつく。


「若殿、船酔いですかな?」

背後からユーリの声。振り向けば、彼は両手に巨大な干し魚を持っていた。


「……それ、なに?」

「航海の必需品!塩気で体力回復、噛めば噛むほど闘志が湧く!」

俺の口元に干し魚を押し付けてくる。

「いや、そんな“戦う前提”みたいな食い物いらないよ!」


そこへサーシャがすっと近づき、銀のトレイを差し出した。

「若殿、こちらはジンジャーティーです。船酔い防止に」

「わあ!ありが――」

カップの中には、生姜がゴロっと丸ごと二切れ沈んでいた。

「……これ、飲み物?」

「体を温め、血流を促進します。戦場では――」

「だから戦う前提やめよ!?」


周囲では兵士たちが訓練と称してロープを使った腕立てやら、樽を持ち上げてスクワットやら、なぜか筋肉祭り状態。

俺が視線を向けると、なぜか全員が「若殿もどうぞ!」と笑顔で手招きしてくる。


(……俺、この船から降りられるかな)


サーシャはそんな俺を横目に、涼しい顔で書類を整理していた。

「若殿、到着までに“門”に関する記録を確認しておきますか?」

「うん……あ、でも怖いから軽いのだけで」

「承知しました。“百年前の門から怪物が溢れ出して沿岸の村が――”」

「軽くないってば!!!」


こうして俺の船旅は、戦意高揚グッズとホラー資料に挟まれながら進んでいった――。


海上は次第に風が強まり、空気が潮の匂いで重くなっていく。

沖の方角、水平線の先に、うっすらと黒い影が見えた。


父ヴァルディミールは双眼鏡を目に当て、低く言う。

「――間違いない、“門”だ」


言葉に合わせて甲板がざわつき、兵士たちが一斉に動き始める。

銃器の整備、通信の確認、そして俺の周囲にも護衛兵が増えた。


「おお……あの光、まるで裂け目のようだな」

ユーリが感嘆の声をあげる。

俺はごくりと唾を飲み込んだ。

雲の切れ間から差し込む陽光のような光柱が、海と空の境目から真っ直ぐ立ち上がっている。

その根元では、海が不自然な渦を巻き、赤黒い泡が時折はじけていた。


「若殿、到着までに作戦会議です」

サーシャが無表情のまま俺の肩を押し、艦橋へと促す。


扉を開けると、そこには円卓を囲んだ将校たちがずらり。

机の中央には“門”周辺の海図が広げられ、矢印や印がびっしり書き込まれていた。


「……え、俺もここ座るの?」

「当然です。第一王子ですから」

サーシャの返答が即答すぎて逃げ場なし。


父がゆっくりと口を開く。

「今回の任務は単純だ。“門”の監視と、それを利用しようとする敵の排除」

「……利用って、どういう――」

「質問は後だ」


ユーリが興奮気味に地図を指しながら言った。

「門の南東側に巡視艦を三隻、北側には砲艦を五隻展開し――」

「いや、海流の向きからして南東側は包囲向きじゃないと思う。流れを利用するなら北東から……」


……しまった、また口が勝手に。

全員の視線がこちらに集まり、場が一瞬静まり返る。


「――なるほど!若殿、天才ですな!」

「いや違うから!俺…」

「その発想力、必ず作戦に活かそう!」


こうして俺は、知らないうちに“門”対策の中心メンバーに組み込まれてしまった――。


とっ散らかってきたからなんとか頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ