第97話 冒険者ギルドの新人チャンネル
「ほら、あれが母様だよ」
「す、すごーい! 本物じゃん!!」
御昼の時間帯になったので、ホットワインを飲むのを切り上げて。
ライアとユティの2人と落ち合うため、昨日食事をした村の食堂へと向かうと。
見知らぬ子供達(獣耳と尻尾がピョコッと生えてる所を見るに、獣人かな?)と一緒に居るのが見えた。地元の子達かしら?
……な、何か、ぴょんぴょん跳び跳ねて、すごい喜んでるわね?
「ライア、ユティ、お待たせ。
……その子達はお友達かしら?」
「うん、さっき友達になった。
ローラとベルタだよ、母様」
「2人の住む孤児院でチキンスープを御馳走になりました。
なかなか美味でした」
「あ、そうだったの」
ライアとユティから話を聞いた私は、子供達の横で尻尾をブンブンと振りつつ興奮気味の、ローラとベルタに微笑みかけた。
「ローラちゃんとベルタちゃん、ね?
私の子供達がお世話になってたみたいで……。
この子達の母親の、ディケーと言います」
「は、はい、知ってます!」
「冒険者ギルドの新人チャンネルの配信、いつも見てます!」
「えっ……?」
冒険者ギルドの……る、新人チャンネルの配信?
……YouTubeみたいな物かしら?
まだレジェグラの世界にはネット環境とか存在してないはずだけど……。
あ、でも、
『アンタが巨猿王と戦ってる映像見たよ。
いやー、凄かったな。
野郎の頭を叩き潰した瞬間とかもう、血がドバッと……あ、すまん。
子供の前でする話じゃなかったな……』
『先生が白い大猿の化け物と戦う動画、拝見いたしやした。
いやあ、若いのにお強いですなあ……
しかも、べっぴんさんと来た』
そっか、私が戦ってる様子はギルドが所有しているドローン(帝国から接収した技術で作られた魔物や有害召喚獣の監視用装置ね)で撮影されてたもんね……これまで会った人達も初対面でも私の事を知ってる人が居たし……でも、さすがにちょっと恥ずかしいんだけど!?
映像の記録自体は誰でも見れたはずだけど、私の戦う様子が新人チャンネルなる配信に編集されていたとは……。
「ローラとベルタは冒険者になりたいんだって」
「お母様をマジリスペクトだそうです」
「あ、そうなのね。
応援してくれてるんだ? ありがとう」
「はい! あ、アタシ達、
ディケーさんみたいに、色んな町で活躍する冒険者になりたいんです!!」
「この前デサロで起きた帝国軍の残党絡みの事件も、ディケーさんが関わってたんですよね!?」
「あはは……。
ま、まあ、ちょっとだけ、ね……」
うお……。
こんな子供でも、あの事件に私が関わってたって知ってるのね……。
ライアとユティが憧れるような大魔女になろうと、この数ヵ月頑張って来たけど……よもや、見知らぬ少女達からもこうやって憧れて貰えるような存在になっていたとは……これはこれで悪くないかも。
……とは言え、食堂の前にいつまでも大勢でワイワイしてるのもアレだし、
「と、とりあえず、立ち話も何だし……。
食堂に入らない?
時間が大丈夫なら、子供達がお世話になった御礼に御馳走するけど……」
「「 ゴチになりまーす!! 」」
即答ッ!!!
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「じゃあ、2人はもう冒険者になるための準備自体はしてるのね?」
「はい。
孤児院で年少組の世話が無い日は、ブランディルを出て近場の町の冒険者ギルドで情報収集したり」
「狩人のおやっさん達に狩りに連れてって貰ったりしてます。
アタシ達、目とか耳が良いんで」
「そうなのね。偉いわ」
「「 えへへ…… 」」
テーブルに着いた私達は5人で昼食と相成った。
注文したのは昨日は食べなかったポークチョップとポテトとキャベツ添え、ぶっといソーセージに、トマトとチキンのスープ等々。
ライアとユティはさっきチキンスープを御馳走されてそこまでお腹が空いていないのか、ケチャップとマヨネーズがたっぷり乗った、細長いピザトーストを頬張って済ませているみたいね。
「ローラちゃんもベルタちゃんもたくさん食べてね。
冒険者は身体が資本だから。
今のうちにたくさん食べて、魔物と戦える身体作りをしなきゃ」
「「 はい!! 」」
子供達がお世話になったし、今日は私の奢りよ!
うんうん、2人とも美味しそうに食べちゃって……。
まあ何せ、この数ヵ月冒険者を実際にやってみた私が言うんだから間違いないと思うわ。
強い相手と戦うと魔力の消費量がホントに半端ないのよね……戦いが終わった数週間はずっとお腹が減りっぱなしでバクバク食べてたからなあ……。
「(それに、この子達……
ライアとユティの所属属性の系統を即見抜いたって話だし……)」
獣人だけあって戦いの才能自体は生まれ持って身に付いているんだろうけど、相手の属性を判別出来る目、っていうのは稀有な才能なんじゃないかしら……?
ブランディル自治領はシェリルの統治によってかなり財政的にも潤ってて、インフラも整っているけど……一歩村の外に出れば氷点下の世界だし、過酷な環境には違いない。
更には両親不在の孤児でもある……厳しい環境で生きていくために、危機回避も兼ねて、自然とそういう能力に目覚めたのかも……まあ、私の勝手な憶測だけど。
「ライアとユティはいいよなー。
ディケーさんの娘で、弟子としても色々教えて貰えて」
「ローラちゃんとベルタちゃんは獣人だし、身体強化系の魔術を極めて格闘技とかやってみたらどうかしら?
これまで何度か実戦で体感したけど、やっぱり最後に頼れるのは自分の拳よ」
「「 おおー 」」
いや、ホント冗談抜きにね……。
魔女に転生したのに泥臭い戦いばかりやってるからね、私……。




