第546話 メスガキ吸血鬼の逆襲!? 大人の怖さをわからせろ!!
「ここで話すような内容でもないしぃ……私の部屋に移動しましょうか♪」
「え、ええ……そうね」
夏限定の省エネモードとして、幼い少女の姿になったシェリルは。
真っ赤なスカートから覗く白い足をぶらぶらとさせていた玉座から降りると、トコトコと私の方へと歩み寄ってきた。
「(ホントに子供の姿になっちゃってるのね……)」
大人のシェリルは私よりわずかに背が低いくらいだったけれど、今のはシェリルは私の胸元くらいの背丈しかない。
魔女の幻術と違って、本当に肉体そのものを変化させてるっぽいわね……それこそ、骨格やら皮膚やら毛髪やら……マジか。
「(まあでも……坂本真綾さんが声やってた、下心な吸血鬼の女の子も、子供の姿になったりしてたし?)」
私が無知なだけで吸血鬼業界では子供の姿に変化するのって、割とフツーのコトなのかもしれない(無惨様とかもなってたし……)。
ーーーと、そんな私の考えを見透かしているのかどうかは分からないけれど、
「これ、精神が子供の姿に引っ張られちゃうのよねえ。
……だからあ、私のお部屋まで手を繋いでいきましょ、ディケーお姉ちゃん★」
「うぅっ……!?」
ディケーお姉ちゃんというパワーワード!
シェリルは万人を魅了する微笑を浮かべて、キラッと輝く八重歯を覗かせながらーーー私の方へと、スッと手を差し出してくる。
とーーー
「〜〜〜ッ!?」
ーーー瞬間、私の背筋にゾクゾクとした薄ら寒いモノが走ると同時に、胸の内側から言いようのない高揚感が泉のごとく湧き出してくるのを感じた。
ッ……こ、これは!?
「ディケーお姉ちゃん、早く行こっ♪」
「(あー、狂う!
ちびシェリルが可愛すぎて狂うッ!!
狂う、狂う、クレラップ……っ!!!)」
こ、これがいわゆる、年上の妹……ってヤツですかぁっ!?
でもシェリル、私よりだいぶ年上のはずよね!?
309年前の深淵戦争の頃には、もうブランディルに居たんだし!
「(……って、そんな場合じゃない!)」
迂闊だった……私は今、攻撃を受けているッ!
子供の姿だからと油断すべきじゃなかった……相手は悠久の刻を生きる死妖姫!
老獪さは私なんかよりずっと上……このまま、シェリルのペースに巻き込まれてはいけない!
「ふーっ、ふーっ……!」
「あらあら。
どうしたの、ディケーお姉ちゃん♪
もしかして、夏バテかなあ?
うふふ、よわよわのザコザコお姉ちゃんなんだあ……♪」
こ、こンのメスガキ……っ!
あとで絶対、わからせてやるんだからーっ!!
魔女舐めんな、コラァ……!!
悪戯な笑みを浮かべて、飽くまでも素知らぬフリをして挑発してくるシェリルに対抗して……私もまた、ちょっと大人気なくも語気を強めて、つぶやいていた。
「な、夏バテ?
一体何のコトかしら?
元気いっぱいですが、何か……!?」
こうなれば魔力全開で、シェリルの威圧をふっ飛ばしてやるわ!!
ズ ズ ズ …… !!!
「わー、すごーい♪
なーんだ、ディケーお姉ちゃん、よわよわのザコザコじゃなかったんだあ★」
「あ、あったりまえでしょ……!」
あ、危なかった……あと数秒対応が遅れてたら、精神を侵食されてたかもしれない!
み、魅了耐性持ちだからって、油断はできない……もし何の耐性もない人があの微笑みを直視したが最後、永遠にシェリルに意のままに操られる奴隷と化してるトコロじゃないの……!
「("魔女の瞳"と同等か、それ以上の威圧感……!)」
ーーーこれが、シェリルの魔眼!
遠い未来を見通すだけじゃないってコトね……他者を魅了する笑み……まるで、私達と同じ、魔女みたいじゃないの……。
「ふふっ、ごめんねえ♪
私、子供の頃はちょっと悪戯っ子でえ。
すこーし悪戯をやり過ぎたせいで、元居た世界を追放されて、この世界に来たんだあ……クスクス。
あ、ディケーお姉ちゃんには結構前に、もうこの話したっけ?」
ペロッと赤い舌を出して。
まったく悪びれた様子もなく、ちびシェリルは私を小馬鹿にしたように、ケラケラと笑って見せるのだった。
「い、いいから……早く貴女の部屋に行って、さっきの話の続きを聞かせなさいよ!」
「あーん♪
お姉ちゃんってば、せっかちなんだからあ……♪」
シェリルの気が変わってしまう前に。
私はシェリルの手をぐいと引いて、彼女の部屋まで一緒に向かうのだった……マジであとで絶対、わからせるからねっ!?




