第539話 勇者少女は才能の原石!? まあ、多少はね?
「魔力感知で周囲の状況を知るためには、瞬時に魔力を放出し、自身を中心に素早く展開する技術が要求されます。
冒険者で言えば、偵察役の斥候職や暗殺者職に就いている人が得意でもありますが……魔術師でも、もちろん覚えておいて損はしない技術ですよ」
今日も今日とて、キンドラー魔術学校での特別講義は続く。
今回は魔力を応用した、放出と展開中心のお話です!
いやあ、私もディケーに転生した当初はコントロールが大変だったわあ……何度も何度も試行錯誤して、やっとモノにできた、みたいな?
「目の前に居る相手だけに気を取られていると、それが命取りになるコトもあります。
上下左右、何処から敵が襲い掛かってくるか分からないような状況下において、魔力感知による索敵は非常に有効です。
例えば真っ暗なダンジョン内でも、魔力感知で索敵を行えば、相手の潜んでいる位置を事前に知れるワケですからね……これは先制攻撃の大きなアドバンテージです!」
合成魔獣の潜んでいる生産工場を攻略した時とか、役立ってくれたし……斥候職に比べれば多少精度は落ちるかもだけど……魔術師なりのアレンジを効かせた魔力感知も、アイディア次第では役立つからね。
私の場合は潜水艦のソナーみたいに、異なる周波の魔力を感知するのが得意なのです。
「はい!
スターレイム先生はどれくらいの範囲を感知できるんですか?」
「そうね……私は大体半径30mくらいかしら。
調子のいい時は40mくらい行く時もあります」
「「「 おおー 」」」
生徒達から漏れる感嘆の声。
ふふふ……ちょっとは見直してくれたかな?
半径20m感知できれば、もう上出来って言われてるそうだから……(暗殺者のネリちゃん情報)。
「他にもダンジョン内に仕掛けられた罠の場所を知ったり、手ぶらを装った人が武器を隠し持っていたりするのを見抜いたりと、魔力感知は色々と応用が効きます。
魔力の放出と展開を繰り返せば、自ずと魔力の許容量も増えていきますし、即座に術式を発動する際の鍛錬にもなります。
さ、みなさんもどうぞ、やってみてください」
……そういうワケで、今日はこんな感じの講義をやってみようかなー、って。
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「(さてさて、私の愛しのステラちゃんはどうかしら……?)」
教室の中を歩いて、一見すると分け隔てなく生徒達が魔力感知の練習に励むのを見守っている体を装いつつ……私は、一番のお目当てのステラちゃんの様子を観察すべく。
さり気なーく、ステラちゃんの席へと近づいていった。
ーーーもちろん、魔力の気配を完全に消した状態で。
「(うんうん、真面目に魔力を放出……周囲に展開してるね)」
ステラちゃんの魔力の音は、とても落ち着きがあって心地良い。私の魔力感知のソナーには他の生徒達の放出した魔力も当然のコトながら感知されているけれど……その中で、ステラちゃんの魔力の放出音が、ダントツで聴き心地がいいのね。
元々は騎士を目指していただけあって、精神統一とか瞑想とかのフィジカル向上系のスキルを、既に習得済みだとしたら……それが魔術師としての魔力感知にも役立っているのかも。
「(さすがステラちゃん、未来の勇者少女ね!)」
ステラ・スターフォールは勇者である……略して「ススゆ」、ナンチャッテ。
……でも、
「スターレイム先生?」
「……!」
ーーー魔力は完全に絶っていたはず。
足音も消音の術式で消して、念のため香水の匂い(ナタリア様から買ってもらった、ちょいお高いやつ)も消臭の術式で消していたはずなのに。
ステラちゃんは目を閉じた状態で、私の接近に、既に気づいていたのだった。
「……すごいわね、スターフォールさん。
どうやって気づいたの?」
「ええと……何となく?
スターレイム先生が、傍で見てるような気がして」
……マジか。
野生の勘というか、第六感的なモノが、ステラちゃんは他の子に比べて鋭いのかもしれない。
……そうよね、何たって数年後には勇者になって、世界を救う子なんだもの。
子供の頃からそれくらいの才能があっても不思議じゃないか……うーん、メッシ(※)やマラドーナ(※)並に神の子かもしれない……。
※どちらもアルゼンチン代表のサッカー選手
「(それだけ、もうステラちゃんの魔力感知が、現時点で完成されているコトの証左でもある……!)」
独学で覚えたのだとしたら、たいした才能だわ!
……さすが、ユティがライバル視するだけはあるし、レジェグラの主人公って感じよね、こうでなくっちゃ!
「(ステラちゃんを私が鍛えてあげられたらなあ……放課後の、ディケー先生との禁断のプライベート授業……あると思います!)」
ぐへへ……。
まさに才能の原石よねえ……ライアとユティに鍛錬してた頃を思い出すわあ……。
ーーーと、我ながら女生徒相手に、キモさ爆発の女教師、ディケーさんなのでした……。




