第535話 肉欲からの解脱不可! 公女殿下は肉食系!?
「ディケー! 来てくれたのね!!」
「公女殿下がお呼びとあらば」
マリー様と大公家のお城の中で一旦お別れした後。
私は時刻通り、第一公女のメアリ様のお部屋に赴いていた。
「さ、座って。
そろそろ来ると思って、お茶を淹れておいたの。
ディケーはいつも時間に正確だものね」
「お、恐れ入ります(元・日本人なもので……)」
そう言って、にこやかに私の手を引いてテーブルまで案内してくれる、メアリ様。
テーブルの上にお菓子やお茶が用意されているトコロを見るに、大事な用事というよりは単に私とお茶したかっただけ……かな?
「(まあでも、公族の方からお茶に誘われるまで、私も出世したってコトよね、つまりは!)」
「ワシの出世は部下達の生活の安定に繋がる……」って、ジオン軍のラ◯バ・ラルも言ってたし、出世は悪いコトではないわね、うんうん。
日本でも戦国時代、茶会に呼ばれるコトは大名にとって一種のステータスだったワケだし……(クッソ高い茶器を買わないと駄目なのもセットで)。
「(実際、爵位と領地を得てから、ディケーさんの懐に入ってくるお金も授与前とは比べ物にならない額になってますからね……)」
日本と違って消費税とか贈与税とか相続税とかもないし、ビバ異世界! ってカンジよねえ……。
「(ライアとユティにはできるだけ多くのお金を残してあげたいし……)」
二人とも、来年でついに成人を迎える15歳になる。
どちらも私同様、冒険者と魔女の二足の草鞋でやって行きたいそうなんだけど……やっぱり最初の数年は大変だろうし、母親としては生活が軌道に乗るまでは面倒を見てあげたいのです、ええ。
できれば、18歳以降は実家住まいもしてほしい……魔術学校での寮生活が長かったからねえ……学校が休暇のシーズンの時にしか会えないのは、母様も寂しいのです。
閑話休題。
「ハルバード公爵夫人は貴族連合との会議に出ているのよね?
じゃあ、しばらくは私がディケーを独り占めできるのね!」
「ふふ、そうですね」
私がメアリ様のお部屋に入ると同時に、メイドさん達が一礼して出ていったのを鑑みるに、本当に二人きりになりたかったみたい。
うう、お姫様に信頼されてるのは嬉しいんだけどお……。
「(中身アラフォーのオバサンと、最近の若い子とじゃ、果たして会話が噛み合うのかしら……?)」
前回のお忍びでの城下町デートは上手く行ったけど……お城の中となると、ちょっと勝手が違って来るのよね。メアリ様から越境騎士の爵位を拝命してから二年経つけど、はるか雲の上の立場の方と二人きりになるのは緊張する……ふう。と、とりあえず、気まずくなったら、お茶飲んだりお菓子食べたりして、間を稼ぎましょう……なんて私が考えていると。
「はい、ディケー。あーんして♪」
「あ、あーん……」
そんな私の胸中を知ってか知らずか、メアリ様は無邪気にクッキーを手に取り、私の目の前に差し出してくる。
当然、パクリと食べさせていただきましたが、何か?
……メアリ様、城下町でも庶民からの人気も高いし、この天真爛漫で喜怒哀楽がハッキリしてる性格は、そりゃ人気も出ようってものよねえ……。
「(ムグムグ……。
でも、もういい年頃なのに、結婚する様子がないのよね……婚約者とか絶対居ると思うんだけどなー)」
元々レジェグラ本編でもメアリ様は、エンディングでラスボスの邪神を倒して世界を救ったコトを主人公が大公様に報告する場面スチールにチラッと映ってただけだったからねえ……。
メアリ様の詳細については、私もよく分からないのよね、実は(設定資料集とかアートブックでも、そこまで掘り下げられてなかった気がする)。
「(かと言って、根掘り葉掘り質問するのも失礼よね……親しき仲にも礼儀あり、だし)」
ただでさえ相手は公族……本来ならば私なんかが絶対お近づきになれなかった高貴な方、それを忘れては駄目よね。公女殿下付きの越境騎士とはいえ、線引は大事です!
とーーー
「どうしたの、ディケー。
私をじっと見て……何か聞きたいコトでも?」
「えっ? いえ、そんな、滅相もない……」
「遠慮なんてしなくていいのに。
ディケーだったら、何でも聞いていいのよ♪」
「(ズコッ!)」
この場にキラリちゃんが居たら『ん? 今何でもって……』とかツッコミを入れてたんでしょうねえ……。
メアリ様ってば、オープンな性格なのね!
庶民に人気あるのも頷けるわあ……。
「あと……『ディケーお姉様』には、今日は会えないのかな、って。
……会えるのよね?」
「(あ、メインはそっちなのね)」
城下町でのお忍びデート以来……どうにも、メアリ様は私に『妹のメアリ』として可愛がってもらいたいみたいでえ……。
私も私で、調子に乗って……その、メアリ様を"魔女の従者"化しちゃって……本人は無自覚なんでしょうけど、もう私の眷属になっちゃってるのよね、メアリ様……。
「(うぅ、やっぱり公族を従者にしちゃったのはマズかったような……)」
まあでも……もうしちゃったものは、仕方ないよねえ……(ゲス顔)。




