第532話 公爵家夫人との城下町デートは波乱の幕開け!?
「申し訳なかったですわね、ディケーさん。
お忙しかったのでしょう?」
「いえ、とんでもない!
マリー様からのお誘いをお断りするなんて、そんな恐れ多い……」
「うふふ。そう?」
私がキンドラー魔術学校で特別講義を受け持ってから数日後。
ハルバード公爵家夫人のマリー様とアーメリア公国の首都トワシンで落ち合った私は、ウキウキなマリー様に腕組みされながら、隣り合って歩いていた。
一応、公国有数の公爵家の奥様だから、護衛の一人や二人は居そうなものだけれど……
「(そう言えばこの方、公国でも最強クラスの英雄魔術師だから、そもそも護衛とか必要ないっていう……)」
だって、護衛より遥かに強いからね!
オマケに、もう初めてお会いしてから八年……三十代に突入されてるはずなのに、出会った頃からほとんど歳を取った様子もない!
「(とてもじゃないけど、14歳の娘が居るようには見えないわあ……)」
娘のエリザ様と並ぶと、少し年の離れた姉妹にすら見える時あるものね……はえー、やっぱ魔術の使い手は歳取るのが遅いんだって、改めて思うわあ。
「(まあ、それはソロアちゃんとかもそうか……)」
いけない、いけない。
ここってば異世界なんだから、いい加減そういうのに慣れなきゃ……閑話休題。
「お城にお呼ばれしているのですが、その前に少し城下町でお買い物をしておきたかったの。
ぜひ、ディケーさんも一緒にと思って♪」
「そういうコトでしたら……」
私もキンドラー魔術学校での特別講義について、マリー様から少しアドバイスとかいただけたらなー、って思ってたし……何せ、娘のエリザ様が通われてるワケだし、マリー様自身も卒業生だものね。いいタイミングだったかも。
「(にしてもマリー様、相変わらずキレー……)」
更に豊満なボディとゴージャスさも健在!
美の欲張りハッピーセットよねえ……港区女子も泣いて土下座モノってカンジ!!
いい匂いもするし……蕩けるわあ……。
「(うぅ、また『ママぁ……』って甘えたくなって来ちゃったじゃんね……)」
ママ友に相手に何やってんだってハナシだけども……マリー様の圧倒的な母性には逆らえないってゆーかあ……。
いや、マリー様はお城にお呼ばれしてるワケだし、私と遊んでる暇なんてないんだった……自重しなきゃ。
「あの、マリー様。
それで、どちらに向かわれるのですか?」
「行きつけの魔道具屋ですの。
少し買い足しておきたい錬金や合成用の素材があるのです」
「なるほど……」
私はその手の素材は大体がディケーの家の中にストックされてたから、あんまり素材目当てで魔道具屋にお世話になった経験ってないのよね……強いて言えば、魔女プレアが趣味でやってる魔道具屋くらいかな?
「ついでに、ディケーさんと城下町デートもできますしね♪
お買い物の後はランチを食べに行きましょう。
お買い物にお付き合いしていただくのですから、支払いは私に任せてくださいな」
「よ、よろしいのですか……?」
「もちろん。
せっかくのディケーさんとのお出かけなのですから」
……今日のマリー様、ちょっとテンション高いわね!?
最近ちょっと忙しくて、会うの久々だったからなあ……。
かと言って、あんまり公爵家の奥様にベッタリしてるのも、他の貴族の人達から見て、どーなんだろう、って考えたりもしちゃったりで……。
「(ママ友同士、仲良きコトは良いコトだけれど……マリー様との距離感が、ね……)」
ここ数年ちょっとバグって来てて、ナタリア様との"本気の火遊び"とはまた違ったベクトルで、イロイロとこじれて来てるからなあ……。
「お友達同士で手を繋いだり、腕組みしながらデートをするくらい、フツーですわ♪」
「(公爵家の奥様とのスキャンダルとか、さすがに駄目でしょ……)」
いやもう、領主家の奥様やら大公家の第一公女様やらとアレな関係になっちゃってる私が言えた義理でもないんだけどお……。
マリー様に関しては大公家とも親しくて、更には国家の運営にも一枚どころか二枚も三枚も噛んでる公爵家の方だからね……お友達同士でも、やっと爵位を授与された私から見れば、はるか雲の上の人なんですわ……ええ。
****
「お付き合いしてくださってありがとう、ディケーさん。
本来でしたら、もう少しご一緒したいトコロですけれど……この後、メアリ様との謁見が控えているのでしょう?
遅れでもして、失礼があれば一大事……時間には気をつけられてね?」
「はい。
お気遣い、ありがとうございます、マリー様」
魔道具屋での買い物を終え、その後マリー様とランチしたり、一緒に城下町デートを堪能した私は。
そのまま大公家のお城をマリー様と共に訪れていた。
事前に第一公女のメアリ様からお呼ばれしていると話していたのもあって、今日はいつものようにマリー様の前で"ディケーちゃん"へと子ども返りして甘えるコトもなく……少し残念だけれど、ここで現地解散と相成った。
「(あー、でも楽しかったあ!)」
一緒に買い物したり、ランチしたり、子供の教育方針やら仕事について相談したり……友達同士ってカンジしたわあ!
代官山女子ならぬ、トワシン女子を満喫してやりました、ってカンジね!!
「私はこのあと、大公家の方々を交えた貴族連合の会議に出なければなりません。
名残惜しいですが……ディケーさん、それでは♪」
「はい、マリー様」
そう、にこやかに手を振って。
マリー様は宝石のように輝く笑顔で、私を見送ってくれた。
かーっ、あれこそモノホンの公爵夫人よねえ……政界の大物を交えての会議、バリバリのキャリアウーマンってヤツだわあ……。
「(私もマリー様を見習わなきゃ……。
働いて、働いて、働いて、働いて……参ります!)」
ーーーなどと、私が考えていたのとは裏腹に。
「(さて、とーーー。
では、参りましょうか。
エリザとの婚約がどうなっているのか、大公家に問いただすにはよい頃合いでしたし……ディケーさんの顔も見れて、楽しい時間も過ごせましたしね。
失礼にならない程度に……大公家の真意、探らせていただきましょうか、うふふ♪)」
……何やら、マリー様はマリー様で、波乱の予感!?




