第531話 シン・大魔女ディケー! 魔女達のネオンジェネシス
魔女とはーーー星の生み出した、言わば動く細胞、端末である。
星の代理人として行く末を見守るコトに徹し、"星の観測者"の名を冠した彼女達は、世代交代を繰り返しながら、星の発展を見守って来た。
魔女は基本的にひとつの種族に肩入れするコトはないが、星を支配する万物の霊長の頂点に立つのが人類であれば、その種としての行く末を観測するコトをよしとするだろう。
彼女らが自ずとヒトの姿ーーーヒト種の女性の姿を取るのも、心の何処かで人間を好ましく思っているコトの現れなのかもしれない。
ーーーだが、星の外からやって来た異星の者や、この世の理から外れた異界からの来訪者に関しては、魔女は"星の守護者"としての側面が強くなり、本能的に排除しようとするのもまた、魔女なのである。
星の生態系を乱すモノ、星の外からやって来た存在を、魔女は決して許さないーーーはずだったが。
『師匠。
その赤子、どうなさるおつもりですか』
『……見殺しにはできません』
『その子供は宇宙から落ちて来ました。
それに、この見慣れぬ乗り物……この星の文明で作られたモノでないコトは明白でしょう。
これも、その子も、遠い異星の文明からもたらされた存在だと貴女も気づいておられるでしょうに……何故?』
『……未来が視えました。
もしかしたら、この子が我ら魔女に変革をもたらすやも』
『変革?
……私には、その子が長じて、いずれ我ら魔女を滅ぼす未来が視えましたが、貴女は違うモノを視たと?』
『ソフィー、もう決めたのです。
……ミアにも、新たな妹弟子ができたと後で伝えておきなさい』
『……後悔なされませぬよう』
『この子は宇宙から落ちて来ました。
ならば……"星空の魔女"の通り名を私から授けましょう。
魔女としての名はーーー』
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「あれだけディケーを我ら魔女の身内として受け入れるコトを渋っていた貴女が、一番ディケーを可愛がったのだから……世の中は分かりませんね、ソフィー」
「姉弟子として当然の責務を果たしただけです、大魔女。
ミアは可愛げがありませんでしたし、正式に魔女となってからは家出同然にココを出ていって、寄り付かなくなりました。
……その点、ディケーは出来が悪く、可愛げもありましたから……少し、姉のように振る舞ってやっただけのコトです」
「そういうコトにしておきましょう」
魔女の中で誰よりもソフィーが、ディケーに対して多くの愛情を注いだコトを大魔女ーーーテミスも識っていた。
異星からの来訪者を拒絶する星の端末としての魔女の本能より、妹弟子を姉として慈しむソフィーの心が勝った結果だった。
「ディケーの、すぐ調子に乗る性格はミア譲りですが……娘達の面倒見が良いトコロは、貴女譲りかもしれませんね、ソフィー」
「御冗談を」
成長するにつれてディケー本人は大魔女の直弟子であるコトが自負心を強くさせ、増長し、傲慢になっていったが……それでも尚、テミスとソフィーは、ディケーを見守り続けていたのだった。
「あのディケーが養子兼弟子を取ると言い出したのも初めてのコト……私は当初、ディケーこそが魔女の在り方に変革をもたらす存在だと思っていましたが……あるいは、それはあの子達からもたらされるのかもしれません」
「……ディケーはもう十分に変革をもたらしたでしょう。
冒険者となり、爵位と領地の授与まで……挙句、大勢の従者まで従えて……"星の観測者"たる魔女が、すっかり俗世にまみれてしまって、私は見ていられません」
「……それは貴女が、単にディケーが傍に居なくて寂しいだけでは?」
「違いますが」
「いい加減、妹離れをしてなくては」
「とっくに離れておりますが」
「そういうコトにしておきましょう」
「……」
ソフィーらの母代わりをニ百年以上担ってきたテミスである……娘の考えなど、全てお見通しなのであった。
「そう……あの子が宇宙から落ちて来て……随分と長い年月が経ってしまった。
来年の"魔女の夜"が、私の大魔女としての最後の催しとなるでしょう。
……ですが、大魔女選挙に関しては私は関知しません、好きにおやりなさい。
当然、貴女も立候補するのでしょう、ソフィー」
「無論です、大魔女」
「……もし、ディケーが立候補した時は?」
「妹弟子に負ける道理はありません。
多少は他の魔女達からの心象も良くはなりはしたでしょうが……今更、あの子が得票数を集められるとは思えません」
「ーーー未来は常に変化し続けるものです、何が起きる分かりませんよ?」
"魔女の塔"の最上階にて。
二人の魔女、テミスとソフィーは、師と弟子として、話の中心となったディケーを抜きに、静かに語らう。
それは既に、本来ならばあり得なかった会話。
本当であれば9年前、全ての魔女達は"魔女の塔"を除籍され、怒り狂ったディケーによって、殲滅させられていたはずだった。
だがディケーの中に宿った"私"により悲劇は回避され、新たに紡ぎ出された未来へと舵を切った世界の行方はーーー未来予知を得意とする、かの魔女達にも、まだ理解らない。
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一方その頃……。
「あっ、あっ、あっ、あっ……!」
「うふふ……。
ソロアちゃん、気持ちいいでしょ?」
「ひゃ、ひゃい……んおぉぉおおんっ!?」
「あはは。
ほらほら、腰が浮いてるわよぉ〜?
本当にソロアちゃんは"腰トントン"が大好きなんだから……可愛いわね」
『やっぱ好きなんすねぇ〜』
「おっ、おおっ……!?
ま、ますたぁ……っあ、あぁっ、んっ、んひぃいいぃぃいいぃんっ!?」
当のディケーは、風呂から上がったソロアに"腰トントン"と称して、やや過激なマッサージをしていたーーー。
「いや、ただ尻尾の付け根辺りを手でトントンしてるだけだし!?
……えっちいコトは何ひとつしておりませんが、何かっ!?』




