第530話 超ディケー姫! ソラから落ちてきた女
一方、その頃ーーー。
「大魔女」
ブロッケーナ山にそびえ立つ、アーメリア大陸における魔女達の総本山"魔女の塔"にて。
ディケーの姉弟子にして現大魔女の一番弟子であるソフィーは、塔の最上階で星見を続ける自身の師に、問い掛けていた。
星見は"星の観測者"たる魔女の本分であるが……どうにも、今夜は少し様子が違うようでーーー。
「……ここ数年のミアやディケーの奇妙な行動、予見されていたのですか?」
ソフィーも他の魔女達同様、未来予知に長けているが……大魔女はそれを遥かに凌ぐ未来を詠むコトに長けている。
それならば何故、今ミアとディケー、二人の妹弟子達の言うトコロの、邪神の召喚を目論む邪教団とやらを放置しているのか……とーーーそう、ソフィーは師に問うているのだった。
しかして、大魔女は答えて曰く、
「今は……"待ち"の時間なのです。
しばし……彼女達の好きにさせてあげなさい」
天空に輝く星々から視線を外すコトなくーーー視界の端にソフィーを収めながら、大魔女ことテミスは、そう呟いた。
「数年前に起きた魔物の大量発生……集団暴走でしたか。
あれも本来であれば、私の未来予知にはなかった事象でした。
異界のゲートが隣国との国境ーーーデルハ大渓谷に開くなどという未来は、星の動きを見る限りでは予定にはなかった」
「ーーー何者かによって"ねじ込まれた"事象だと?」
淡々と語る師に、ソフィーもまた自らの疑念を呟く。
"黄衣の魔女"イーティルのように"魔女の塔"を離反した"はぐれ魔女"が過去にも各地で騒動を起こしたように……この数年観測された事象には、幾つかディケーが関わっているモノも含まれている以上、ソフィーも姉弟子としては無視のできないものがあった。
「……ディケーは自ら、災難に飛び込んでいるようにしか見えませんが」
ーーーどうにも9年前の"魔女の夜"にて、ディケーがライアとユティ、二人の娘を連れてきた辺りから、予見していなかった事象が次々と起き、未来が不安定になっているような……ソフィーはあえて口にはしなかったが、そう感じているようであった。
加えて、魔女が爵位や領地を得て、アーメリア公国の中枢に出入りするなど……邪教団の内偵のためとはいえ、俗世に染まりすぎやしていないかと……要は、そう言いたいのであろう。
「あの子には、あの子なりの使命があるのでしょう」
「それは……理解しておりますが」
魔女としても異界や異星からの脅威に対しては"星の守護者"としての側面が強くなるため、ディケーの魔女らしからぬ行動にも一応の理解があるようなのだが……。
「ソフィー。
……ディケーが心配ですか?」
「ええ。
……昔から、目の離せない子ですので」
姉弟子として、愛情を持ってディケーの成長を見守ってきたソフィーであるが……どうにも成長するにつれて、少しやんちゃが過ぎる性格になったと思いきや……長年ずっと弟子を取らないままだったのが、見知らぬ子供たちを唐突に弟子兼養子にしたいなどと言い出したり、急に多くの"魔女の従者"を従えたりとーーーここ数年のディケーの行動は、彼女を知る者が見れば、あまりにも奇妙で、彼女らしからぬものだったからだ。
「(ディケー……私の傍に居てくれれば……)」
無論、それは大魔女も気づいているだろうが……敢えてテミスは何も言わず、ディケーを咎めるコトもないため、それもまたソフィーの目には奇異に映っていたのだった。
「……あの子が宇宙から落ちて来た日のコトを覚えていますか?」
「昨日のコトのように」
故に。
魔女達は過去に想いを馳せる。
彼女達がディケーと呼ぶ存在がーーーこの世界に落ちてきた日のコトを。




