第526話 ステラ・スターフォールは勇者である
「しばらくの間、キンドラー魔術学校にて特別講義を行わせていただくコトとなりました、冒険者のディケー・スターレイムと申します。
皆さん、よろしくお願いしますね」
ーーーついに。
私がキンドラー魔術学校の女生徒達に講義を行う日がやって来た。
既に非常勤講師としてキンドラーで働いているソロアちゃんのコネで、私が担当させてもらったのは中等部二年生……レジェグラの女性主人公、ステラちゃんのクラスです!
「(ステラちゃんは……居る居る!
うは、かわええ! まだ14歳かあ……18歳だった本編のステラちゃんに比べると、まだあどけなさが残ってて……でもやっぱり主人公って感じの雰囲気あるわあ……)」
私はさり気なく自己紹介をしつつ、教壇から教室全体を見渡し、ついには後ろの席に座ってこちらを見つめる、ステラちゃんを目ざとく発見した。
「(レジェグラの本編同様、艷やかな金色の長い髪をポニーテールにしてたから、すぐ分かったわ!)」
何より可愛い! 魔術師に転向する前は騎士を目指してただけあって、スタイル抜群!! キンドラーの制服もバッチリ似合ってる!!!
「(さっすがステラちゃん……グッズ売上でも常にライアやユティと上位を争ってただけあるわね……顔よし、スタイルよし、魔力よしと、才色兼備ってレベルじゃないわあ……)」
顎やら鼻やら涙袋やら、親からもらった顔をゴリゴリいじりまくりの港区女子が見たら、泣いて土下座モノでしょ……やはり天然モノの魅力には敵わないわねえ……うんうん。
と、私が人知れずステラちゃんにときめいているとーーー
「(あの方が、ライア様とユティ様のお母様……)」
「(公女殿下付きの越境騎士様……スターレイム卿♪)」
「(エリザ様のお母様、ハルバード公爵夫人とも親しくしておられるとか……)」
「(ブランディル女公爵とも、ただならぬ仲と聞き及びますわね……)」
「(うは、おっぱいでっか……)」
「(腋キレー……)」
などとまあ、ちらほらと女生徒達のヒソヒソ声が……うーん、やっぱりみんな、ある程度は噂話やらで私のコトは事前に知ってたみたい。
私の預かり知らぬ、魔術師同士のネットワークとかがあるんでしょうねえ……ただでさえキンドラーの生徒達は寮生活が長いから、外の世界の噂やらゴシップに飢えてるでしょうし。
閑話休題。
「みなさんの中には、もう私のコトを御存知の方も何名かいるみたいですね。
既に皆さんは中等部二年生、魔術の基礎は小等部の時点で叩き込まれているでしょうから、私は冒険者としての視点に基づいた、主に戦闘における魔力の応用技術をみなさんに知ってもらえたらな、と思っています。
なにぶん、こんなに大勢の生徒さんの前で講義を行うのは初めてなものですから、色々と不慣れではありますが……どうかみなさん、よろしくお願いいたします」
ペコリと一礼し、私が挨拶を終えると。
ーーー女生徒達は、笑顔でパチパチと拍手をしてくれた。
もちろん、ステラちゃんも満面の笑みで……よしよし、少し不安はあったけど、初日の掴みはオッケーな感じね!
「(あれ、でも何だか……)」
ーーーステラちゃん、随分と熱のこもった視線を私に向けているような……? 気のせいかしら?
****
「将来的に魔術師を目指すにせよ、その他の職業、それこそ冒険者を目指すにせよ。
魔物や有害召喚獣、更には同じ人間との戦闘は避けられません。
特に対人間の場合、私のような冒険者だと、町中をうろつくゴロツキから密猟者や盗掘者、悪徳貴族に雇われた同業者、反社会的な集団や裏社会のアウトローと言った無法者たちと対峙するケースは多々あります。
……ですので今日は、対人間を想定した魔力での攻撃と防御の応用技術について、お話したいと思います」
えー、そういうワケで。
みずほ……もとい「ディケー先生のはちみつ授業」、開始です! おいおいっ(CV:井上喜久子)
……まあ、内容はちょっと物騒だけれど……これも未来の魔術師を目指す子達にとっては必要なコトだと、ディケーさんは信じていますので。
「(今のところはみんな、ちゃんと私の話に耳を傾けてくれてるわね……お嬢様校だけあって、講義を受ける姿勢もみんな綺麗だし……)」
さすがに早弁したり、ゲームしたりするような子は居ないわねえ……授業態度もいいし、感心感心。
「(話しながら、さり気なく魔力感知のソナーを教室全体に広げてみたけど……)」
ーーーやっぱり、潜在魔力はステラちゃんが他の子よりも頭ひとつかふたつは飛び抜けてる感じ……他の子達ももちろん、子供にしては十分すごいレベルだけど……それでも別格ね! 下手するとライアとユティとも互角なんじゃ?
「(騎士から魔術師に転向して間もないでしょうに……恐るべき才能だわ……!)」
世界を救うべく生まれた、まさに約束された救世のヒロイン……それがステラ・スターフォールなのね……。
レジェンドオブグランディアの顔だもの、そりゃそうか……でもこの時間軸だと、本来は悪役のはずのディケーが、そのステラちゃんに講義してるんだから、世の中分かんないわよねえ……。
「(って、あれ……?)」
またステラちゃん、私の方をジッと見てた……ような? はて?
わ、私、そんなにジロジロ見てたかしら……?




