第523話 どの口が、どの口が、どの口が、どの口が!(CV:悠木碧)
「ソロアちゃん。
特別講義でキンドラーの生徒の子達にやってもらおうと思ってる課題なんだけど……これで大丈夫か、最終チェックをお願い出来る?」
「あ、はい、マスター……拝見します」
キンドラー魔術学校での私の特別講義の日が迫る中。
夕食をみんなで食べ終え、リビングでくつろいでいる最中に。
お嬢様学校とは言っても、キンドラー魔術学校は優秀な生徒が多いし(マリー様の母校でもあるし)、かと言って無茶ぶりな課題を出してしまうのもアレなので……念のためキンドラーにて現役で講師をやっているソロアちゃんに、私の考えた課題内容を見てもらうコトにした。
「(私が受け持つのは、ライアやユティ……それにステラちゃんの所属する、中等部二年生……)」
更にソロアちゃんに裏で先生達に根回しをしてもらい、ステラちゃんのクラスで講義をやれるコトになったのね!
もう中等部ともなれば基礎は十分出来上がってるでしょうし、ここは応用を効かせた魔力の技術発展とかの課題の方がいいかな、って。
しかして、ソロアちゃん曰く
「よ、良いのではないでしょうか……。
皆さん、新しいコトにイロイロと挑戦してみたい年頃ですし……冒険者をされているマスターならではのアレンジの効いた、実戦でも通用しそうな課題かと……うひひ」
「やった! ありがと、ソロアちゃん」
「いえ」
頭から生えた左右の猫耳をピョコピョコと動かして「にへへ」と笑い、ソロアちゃんは太鼓判を押してくれた。
よしよし、魔術協会で大導師をやっていたソロアちゃんがそう言ってくれるなら、大丈夫でしょう。
「(一応、私も学生時代に近所の塾で講師のバイトをやったコトがあるんだけど……さすがに魔術学校は勝手が違うもんねえ……)」
冒険者ギルドでも新人の子の育成を任せてもらえたりと、ディケーさんそこそこ人に教えるの上手いんじゃないかなー? って自負はあるんですけどね……やっぱり、客観的と言うか、実際に現場で働いてるソロアちゃんの意見が聞きたかったのね。
……念のため、もうちょっとキンドラーでの仕事ぶりとかも聞いておこうかな?
「ソロアちゃん、キンドラーでのお仕事は楽しい?
……まさかとは思うけど、パワハラとかセクハラとかされてない?」
「へあぁっ!?
だ、大丈夫です……職場の皆さん、優しい方ばかりですし……」
「そっか、ならよかった」
うーん、さすがに元大導師の子にそーゆーコトする度胸はないか……ソロアちゃんがその気になれば、相手は消し炭だしね。
キンドラーに毎年多額の寄付を行ってるハルバード家のマリー様とも親しいし……。
「(ま、私のソロアちゃんに手を出そうとした時点で死刑なんですが!)」
とりあえず、尿路結石で向こう三十年くらい苦しみ続ける魔女の呪いをかけてくれるわ!
「(そー言えば、キラリちゃんを見せ物にしていた闇オークションの関係者達にも同じ呪いをかけてやったわね……)」
あれももう八年前の話だから、あと二十二年残ってるワケか……「小説家になっちゃおう」のざまあ系小説じゃないけど、まあ因果応報のざまあよね! 獄中で後悔しても、もう遅い!!
閑話休題。
「あ、で、でも……」
「?」
「せ、生徒さんの中に……たまにですが、ちょ、ちょっと距離感の近い子が何名か……」
「距離感?」
人見知りが激しくて私と出会うまでは山の中で、ぼっち・ざ・洞穴な生活をしていたソロアちゃんだからねえ……相手からすれば何でもないようなコトでも、ソロアちゃんにとっては心臓ドキドキなスキンシップに感じられるコトもあるかもだけど……。
「そ、その……。
放課後、二人きりで講義をしてほしい、とか……渡したい物があるので、体育倉庫に来てほしい……とか……自分達の部活の顧問になってほしい、とか……。
都度、お、お断りはしているのですが……」
「 !? 」
なん……だと……。
「他にも……後ろから抱き着いて来たり、お昼のお弁当に誘われたり、トイレで出待ちをされたり……」
わ、私の預かり知らぬトコロで、ソロアちゃんが結構な頻度で女生徒達から、おモテになっていた件……!
「(いや、考えてみれば、少し前までこの国の魔術関連の最高峰機関である魔術協会でトップを張ってた子が、講師として学校に来てるワケなんだし……そりゃ閉鎖的な寮生活を続けてる生徒の子達からしたら、憧れのアイドルがやって来たようなもんかあ……)」
ーーー何より、ソロアちゃん可愛いものね!
もうとっくに二十歳も超えてるけど、未だに十代半ばの見た目だし……(魔術の達人は体内の魔力の循環が常人よりもスムーズなので新陳代謝が良く、肉体を若いまま維持が可能だからね……あと私の"魔女の従者"化による魔力供給での若さの維持もあるんでしょうけど)。
はー、よりにもよって先生狙いとは、最近の子はマセてるわねえ……だ・け・ど・も。
「ソロアちゃん、分かってると思うけど浮気は駄目よ?
ーーーソロアはもう、私の所有物なんだから」
「ひゃ、ひゃい……!
……わ、私には、マスターだけですから」
「うんうん♪」
ソロアちゃんを背中から抱きすくめて、私がそう猫耳の辺りで呟くと。
ソロアちゃんはビクビクっと身体を震わせながらも、恥ずかしそうに応えてくれた。
「(……まあ、従者を恋人にしまっくてる私が何言っても、ミリの説得力もないワケですが!)」
どの口が、どの口が、どの口が、どの口が!(CV:悠木碧)




