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【60万PV感謝】大魔女ディケーの異世界百合な日々!~元アラサーの私が転生先で美女達からグイグイ迫られる件~  作者: 漁業フリーダム
第9部-3 魔女ディケーは、おてんば公女殿下のお気に入り!?

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第522話 雪サボテンが花をつけている

『あらあら、まあまあ。

 エリザの方からわたくしに連絡をよこすなんて珍しいですわね。

 どうかしまして?』

「は、はい、お母様……。

 夜分遅くに申し訳ありません……その、実は……」




 キンドラー魔術学校の学生寮の消灯は午後9時までとなっており、それまでは自室やサロン、食堂などで自由に過ごすコトが許可されている。

 サロンにはレギエス帝国とのいくさの戦後賠償によって導入された通話機器が備わっており、通話相手の上半身がホログラムによって投影される。

 通話相手の顔を見ながら会話が可能となっているため……遠く親元を離れて寮生活を続けている女生徒らにとっては、心安らぐ時間を過ごせる場所でもある。

 ーーーが、どうにもエリザは、母マリーとの久々の対面の割には、何だか落ち着きがない様子。

 ……それと言うのも、




『なるほど、大公家の第三太子様との婚約の件についてでしたのね……。

 確かにエリザが幼い頃に婚約自体はしましたが、あれから大公家から新たにアプローチは特にありませんでしたし……貴女が不安に思う気持ちは分かりますよ、エリザ』

「は、はい、お母様……」




 ーーー実のトコロ、エリザの母マリーも第三太子との婚約については思うモノがあった様子。

 現に、マリーは足繁く大公家の城に足を運んではいるものの、いつも声をかけてくれるのは第一公女のメアリばかりで、第三太子の方から声をかけられるコトは、まずない。

 ……否、それどころか、ここ数年は城内で彼の姿を見た記憶すらないのである。

 いくら何でも、将来的に自身の義母となる相手に数年間何の挨拶もないというのは、いかに地方公務や外交に勤しむ身の公族とは言え、礼を欠くのではないだろうか?




『(ふむ……何やら、雲行きが怪しい予感がしますわね……少し慎重に動かねばならないかもですわ……)』




 どうやらマリーにも何らかの心当たりがあるようで。

 エリザに要らぬ心配をかけまいと、飽くまでも自然に振る舞いつつ……胸中では、姿を見せぬ娘の婚約者相手に、既に次の一手を模索し始めたようであった。

 ここ数年、一見するとアーメリア公国はレギエス帝国との戦に大勝し、その技術を取り入れて大いに発展を遂げてはいるものの……その反面、公国の中枢である首都トワシンでは、何やら言い知れぬ不安をよぎらせる"何か"がうごめいているような……そんな予感がするのである。




『(このような時、ディケーさんならば……ええ、きっと行動に移されるのでしょうね。

 うふふ、では私もそれにならうとしましょう……飽くまでもさり気なく、しかして大胆に……)』




 このマリーも若い時分より、公国を救った英雄魔術師として、更には魔術協会の筆頭役員として城を出入りし、城内の公族や貴族連合の派閥や対立関係はあらかた熟知している……やはり現場はいい。久々に胸躍る展開を予感させるではないか。

 かつて大導師グランドマスターだったソロアが突然に職を辞して魔術協会を去った後、何度も次期大導師候補にマリーが推薦されはしたが、




『現場に出られないのはつまらないので、辞退させていただきますわ♪』




 と、頑なに固辞し続けた甲斐があるというもの。現場でしか味わえない、独特の殺伐としたスリルは、マリーにとって何物にも代えがたいモノなのであった。




『先方には無礼にならない程度に、私の方から問い合わせておきましょう。

 何も心配しなくてよいのですよ、エリザ』

『お母様……あ、ありがとうございます』




 母マリーが危険なミッションに挑もうとしているコトなど、つゆ知らず。

 エリザは母から満足のゆく応答があったコトで、ひとまず安堵した様子だった。

 なにぶん、エリザの方からこんな消灯間際の夜間に連絡をよこすコト自体が珍しいため……マリーとしても、これは何かがあったと察するには、十分であったが……。




『……エリザ、ライアさんとは仲良くしていまして?』

「えっ……は、はい!

 その……先程も一緒にお風呂に入って……その後、共に鍛錬を……」

「まあ、そうでしたの。

 相変わらず、仲良しさんですのね。

 共に長い時間を過ごした友人は一生の宝です、これからもライアさんと仲良くするのですよ』

「も、もちろんですわ、お母様!」




 ーーー鍛錬をしながら、成長したライアに首輪で繋がれて所有物ペットにされるという屈辱的な妄想をして楽しんでいた……とは、口が裂けても言えないエリザだった。





****





 ーーー同時刻。

 "銀雪の死妖姫イモータルプリンセス"の異名で知られる女吸血鬼ヴァンパイア、シェリルの居城にて。




「ーーースノーサボテンが花をつけているわね」




 自身の管理する、零下の環境を維持した多くの花々の咲き誇る庭園で。

 何匹ものコウモリを伴って、日課となった庭園内の散歩の最中、ふとシェリルの目に止まったのは。

 数百年ぶりに花をつけた、ブランディル自治領原産の雪サボテンだった。




挿絵(By みてみん)




 この雪サボテンは古くから庭園に根を張っており、これが花をつけるのはーーーかつて、この世界に異界から魔物の軍勢が大挙して押し寄せた、深淵戦争以来のコトである。





「うふふ……久々に血が騒ぐわあ……♪

 また戦乱の時代がやって来るのねえ……。

 ディケーの言っていた通り、とっても楽しいコトになりそう……♪」





 ズ ズ ズ ズ …… !!!!





 ーーー恍惚の笑みを浮かべるシェリルの紅い瞳は、血と闘争の、憧憬のいろに染まっていた。

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