第518話 逆転! ソフィー只今参上
「ええと……ソフィー姉様?
た、確か、従者に関しては特に規定はありませんよね?
弟子とか養子を取る時は"魔女の塔"に報告義務がありますけど……な、何か問題が?」
いや……それ以前に。
……私、ソフィー姉様にメアリ様を私の従者にしたなんて、一言も言ってないよね!?
な、なんで、もう知ってるのよ……。
「……そうですね。
貴女の指摘通り、弟子や養子とは異なり、従者に関しては特に禁止規定はありません。
……ありませんが」
「が?」
私がこう言い返してくるコトなど想定済み、とでも言いたげな涼しい顔で。
ソフィー姉様は、言ってのけた。
「ーーー貴女は従者が多すぎです」
「うぐぅ!?」
「なんですか、七人って。
……規定がないとは言え、多すぎでしょう。
しかも全員が恋人? どんだけなのですか」
「ぐはっ……」
は、反論しようにも全部本当のコトだし、世間的に見てもだいぶクズなコトやってる自覚が私自身にもあるから、何も言えない……!
「貴女、そんなに愛に飢えていたのですか?
……幼少期に大魔女や私、ミアからの愛情が足りなかった反動が、大人になった今頃やってきたとでも?」
「い、いえ、決してそのようなコトは……!」
「貴女に夕食のおかずを分けてあげたり、寝る前に絵本を読んであげたり、大魔女からの課題を手伝ってあげたりしていた私からの愛情が足りなかったというワケですか、ああそうですか……」
んもう!
ソフィー姉様は構ってちゃんモードになると、途端にねちっこくなるのが玉に瑕だわあ……要は「そんなに大人数の恋人作るくらいなら、昔なじみの自分に甘えろ」って言いたいワケね……。
「(私がマリー様に『ママ、ママ』言って甘えるのはまあともかくとして……モノホンのディケーがソフィー姉様に甘えてる姿って、あんまり想像つかないなあ……)」
まあでも、子供の頃なら誰しも親や兄弟に甘えたくなるものでしょうし……(ライアやユティだって、14歳になった今でも帰省中は私と一緒にお風呂に入りたがるし、一緒に寝たがる……もちろん私はウェルカム!)。
「(ソフィー姉様、変なトコロで俗っぽいんだから……)」
要するに妹弟子に、もっと構ってもらいたい人なのだ。
閑話休題。
「ええと……そ、ソフィー姉様は従者は持たれないのですか?」
「私には必要ありません」
「そ、そうですか……」
苦し紛れに話を逸らそうとしてみたけれど、ソフィー姉様の返答は素っ気なかった。
従者が増えると、それだけ魔力を供給してあげないといけなくなるし……ソフィー姉様みたいに他者にリソースを割くのを嫌う魔女は、まあ割といる。
他の先輩魔女達も従者が居る人、そこまで多くないし……。
「……従者にしたからには、貴女なりの考えがあるのでしょう。
特にアーメリア公国の第一公女に関しては、遅かれ早かれ、ちゃんと本人に説明をするのですよ」
「は、はい……」
そう言って、ソフィー姉様は呆れたように大きなため息を吐くと。
「ディケー、こちらに来なさい」
「えっ?」
ちょいちょいと手招きし、自分のところに来るように促すと。
「私の膝に頭を乗せなさい」
「そ、そんな、恐れ多い……」
「昔は無遠慮にやっていたでしょうに。
……怒ったりなどしませんから、やりなさい」
「う……では、お言葉に甘えて……」
椅子に座るソフィー姉様の前で跪いて、言われた通り、姉様の膝に頭を乗せるとーーー
「貴女という子は……。
長いこと顔を見せなかったと思えば、またイロイロと問題を起こしてばかりで……いくつになっても手間のかかる子なのですから……」
「す、すみません……」
私の頭を撫でつつ。
お小言をつぶやきはするものの……その声色は何処か優しいソフィー姉様の膝の温かさに触れながら。
「……あまり心配させないように。
相手が異界の邪神絡みなら、尚更です。
貴女は何でも一人でやり過ぎですよ、ディケー」
「う……はい。
申し訳ありません、姉様……」
ーーーしばし、ソフィー姉様の妹のディケーとしての時間を過ごしたのだった。




