第516話 そろそろお手柄だよ、ソロアちゃん!
「あー、やっちまったわあ……。
さすがに大公家のお姫様はヤバいってぇ……」
帰宅後。
今日の晩御飯の当番はキャルさんだったので、私はリビングでゆっくりさせてもらっていたのだけれど……昼間のメアリ様とのコトを思い出すと……とてもではないけど、ゆっくりする気分にはなれないわねえ……。
よりによって、久々にやらかした……この大陸の最高権力者の娘さんに手を出してしまったわあ……。
『おっ、大丈夫か、大丈夫か?
相変わらず恋多き女だねえ、ディケーは』
「キラリちゃーん……」
テーブルに突っ伏してうなだれていると、星妖精のキラリちゃんが背中の羽根をパタパタさせて、私の肩まで飛んで来て、そう言うのだった。
『また従者を増やしたんでしょー?
ディケーが女の子大好きなのは今に始まった話でもないし……そんな悩む必要もなくない?』
「ひっでー言われよう……」
『何だかんだで8年も一緒に居るし……まあ、多少はね?』
キラリちゃんとの付き合いも長くなってきたし、それだけに遠慮のないツッコミが心をグサリとえぐって来るぅ……星妖精の目線から見ても、私ってば女の子大好きに見えてるんかーい……。
「うぅ、マスター……ひ、酷いです……。
あれ程、もう従者は増やさないって、約束したのに……。
こ、公女殿下を従者にするなんて……」
「ご、誤解なのよ、ソロアちゃん……」
晩御飯を作るキャルさんのお手伝いをしていたソロアちゃんが、お皿や食器をテーブルまで運ぶついでに、恨めしそうな目で私を見ていた……。
ソロアちゃんが実際に危惧していたのは、私がステラちゃんを従者にしちゃうんじゃないか、ってコトだったけれど……け、結果的に、メアリ様を私の"魔女の従者"にしてしまったんじゃ、世話ないわね……。
「まあまあ、キラリさんもソロアさんも、もうその辺に。
ディケーさんも反省しているようですし……ね?」
「キャルさーん……」
ソロアちゃんに続いて、お鍋を抱えたエプロン姿のキャルさんが、助け舟を出してくれた。
……やっぱり、キャルさんだけは私の味方よね!
「そ、それで……ですね?
大公家の公女殿下との従者契約って、具体的にはどういう感じの契約状況だったのでしょうか?
大公家は強い魔力を持つ魔術師をこれまで何人も輩出している歴史ある家系ですし……魔女との従者契約ともなると、やはり私達の時とは全く異なる生理反応などがあったのでしょうかっ……!?」
あ、前言撤回……研究者としての好奇心の方が強そうだ、コレ!
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「そう言えば、マスター。
れ、例のお話ですが、了承されました……」
「うん?」
食後。
ソファーに寝転んだソロアちゃんを膝枕してあげながら、頭を撫でてあげていると。
ふと思い出したように、ソロアちゃんが寝転んだまま、言った。
「マスターをキンドラー魔術学校に、特別授業の講師として、お招きする……というお話です。
しょ、職員会議でお話したところ、『公女殿下の越境騎士様なら……』というコトで、割とすんなり、話が通りました……」
「あ、そうなのね!
ありがとう、ソロアちゃん」
「い、いえ……私は何も……。
そ、それだけ、大公家のネームバリューがすごい、というコトですから……」
御礼にソロアちゃんの頭から生えた水色の猫耳を、優しくわしわしして撫でてあげると。
ソロアちゃんはソファーの上で、くすぐったそうに身をよじって、身悶えた。
……よしよし、これで私がキンドラーに行く大義名分が出来たわね!
「(何とかして、ステラちゃんに接触……あわよくば、仲良くなっておきたいわね……)」
ーーー私は、ステラちゃんと敵対する意志は毛頭ない。
むしろ、レジェグラの主人公なワケだし……プレイヤーの分身として、ステラちゃんに自己投影していた時期も、ちょっとあったように思う(思い返すとイタイ感じするけど、当時の私も多感な時期の少女だったんで、どうか勘弁してほしい……)。
……そのステラちゃんと、ついに御対面できる!
「(ま、マスター……どうしてそこまで、スターフォールさんに固執するのでしょうか……。
何か、お二人には、私の知らない因縁のようなモノが……?)」
ーーー私に頭を撫でられていたソロアちゃんが、そんな疑問を抱いていようとは、つゆしらずに。




