第515話 人の心とかないんか!? 魔女の従者になった公女殿下!
「(その後も私は調子に乗ってしまいましてえ……)」
ーーー認識阻害の術式で私とメアリ様の姿が誰にも気づかれないのをいいコトに……お、大勢の観光客が行き交う噴水広場の真ん中で、あんなコトやこんなコトを……(さすがに自主規制)。
うう、さすがにちょっとヤリすぎたわね……。
「(相手が大公家のお姫様なのも忘れて、町中で思い切り、チュッチュしてしまった……ッ!)」
悪い魔女ムーヴ始めると、すーぐ調子に乗って相手に対して強気にマウントを取り始めるのは悪い癖だわ……超ベ◯ータじゃないんだからさあ……。
「(多分、ディケー本来の素の性格が出ちゃうんでしょうけども……はあ、やっちまったわあ……)」
挙句の果てにはーーー
『誓いなさい、メアリ。
貴女はもう一生、私の妹で所有物よ。
姉にして主人の私の命令は絶対ーーーいいわね?』
『ひゃ、ひゃい、おねえさま……。
ち、ちかいます……ぢゅるるっ。
わ、わたくし、あーめりあこうこく、だいいちこうじょ、めありは……ずぞぞっ!
いっしょう、でぃ、ディケーおねえさまに、はぁ、ぁあんっ……ひ、したがいますっ……♪
めありは、おねえさまのペットとして……これからずっと、い、いきていきましゅうぅうぅ……れろぉ……っ』
……って、私の指を舐めさせながら、メアリ様に誓わせてしまった件!
「(まさかとは思うけど……アレで、メアリ様まで私の"魔女の従者"化しちゃったりは、してないわよね……!?)」
……大公家のお姫様を従者にしてしまうのは、さすがにマズいのでは!?
「お、お姉様……。
……じゃなかった、ディケー。
もう頭を上げて……わ、私、本当に怒ってはいないから……」
ーーーなどと、私が土下座しながら思い返していると。
当のメアリ様も困惑した様子で、私に頭を上げるよう、促してくださった。
うう、優しい……こんな優しい子相手に、涙やらヨダレやら、その他の体液を噴水広場で盛大にぶち撒けさせてしまったのか、私ッ……!
掃除が大変だったわね……(訳:戸田奈◯子)
「……で、では、お言葉に甘えさせていただき。
メアリ様、この度は本当に申し訳ありませんでした……」
お許しの言葉を受け、私はようやく土下座をやめて、ゆっくりと立ち上がった。
するとメアリ様は何だか、ほのかに顔を紅く染め……もじもじと恥ずかしそうに身をよじりながら、私の方を見ていてーーー。
「あ、謝らないで、ディケー!
……その、とっても恥ずかしかったけれど。
普段、お城の中で出来ないコトを出来た、楽しさも確かにあったの……。
だから……また二人きりの時は、私だけのディケーお姉様になってくれる……?
い、いえ、なってくださいませ、お姉様……!」
「(うわぁ……)」
め、メアリ様の、この恋に恋する少女みたいな潤んだ瞳には見覚えあるわあ……もうずっと前に、私が誤ってネリちゃんを"魔女の瞳"で魅了してしまった時も……こんな感じだったもの!
「そ、それは……メアリ様が……。
……いいえ、メアリが望むなら、そうするわね」
「お姉様……嬉しい……。
私だけの、誰にも内緒のお姉様……ディケーお姉様ぁ……♪」
メアリ様は私の胸元に顔を埋めて、うっとりと甘えながら、そう呟いた。
私も何だか、その様子が年相応に親兄弟に愛情を求める女の子に見えてしまって……気がつくと、ライアやユティ、ソロアちゃん達にしてあげているように……優しく頭を撫でてあげていたのだった。
「(いや、でも、私……)」
"魔女の瞳"なんて使ってないはずなのに……どうしてメアリ様は、こんなにも私に懐いてしまったのかしら?
もう、発動させるまでもなく、任意で相手を魅了できる域にまで達してしまった……ってコト?
……それに私自身も、何だか急に悪い魔女ムーヴを久々にかました挙句、分別を忘れてメアリ様にあんなコトをしてしまうなんて。
「(ど、どういうコトなの?
モノホンのディケーは本当にヤバい状況の時にしか出て来てくれないから、何とも言えないんだけど……)」
ーーー私、だんだんと……無自覚に、本来のディケーに近くなっていってない?
お姉様、お姉様と私のディケパイに頬擦りするメアリ様様の頭を撫でつつ……私はふと、そんなコトを思うのだった。
****
「あ、姫様。
お昼寝から目覚められましたか。
お着替えもなされたのですね」
夕方。
これまでずっと自室で昼寝をしていた体を装いつつ。
メアリ様は私を城門まで見送るべく、自室を出た。……もちろん、ちゃんと新しいドレスに着替えて、だけども!
「ええ。
今日は汗ばむ陽気だったし……。
スターレイム卿と一緒にお昼寝をしていたら、少し寝汗をかいてしまったの」
「そうでしたか」
メイドさんに疑われないよう、笑顔で乗り切るのはさすがよねえ、メアリ様……まだ二年くらいの付き合いだけど、しっかりしてる子だと思う。
……まあそもそも、本当は私がちょっとヤリ過ぎちゃって、メアリ様の涙やらヨダレやら、その他の体液で、ドレスと下着を盛大に噴水広場で汚しちゃったせいなんですけどね(猛省)
「(はー、メアリ様がお姉様を欲しがってる気持ちを利用して、あんなコトをやらかすなんて……)」
今日の私、ちょっと暴走気味では?
「(でも……あれはあくまで"ごっこ"!
姉妹ごっこに過ぎないんだから……!)」
そうよ、私がマリー様とママ友同士でじゃれあって「ママぁ……好きぃ……」とか言ってるのと変わらないってハナシじゃんね!
きっと、そうだ(芥川龍之介の「羅生門」の下男感)
閑話休題。
「……それではスターレイム卿。
引き続き、領地の人々を大切にね。
もちろん、貴女自身の命も。
……また城に遊びに来てくださいな、私の越境騎士様」
「は、はい……公女殿下。
ではこれにて、私は失礼させていただきます」
数人のメイドさんを伴ったメアリ様に見送られ、私が城から出ようとした刹那ーーー
「(……またメアリに会いに来てね、お姉様♪)」
「(え、ええ……また来るわね、メアリ)」
そう、私の頭の中に、遥かに後方で見送ってくれているはずのメアリ様の声が、直接聞こえて……。
「(えっ! これ、念話……!?)」
で、でも、私と契約した使い魔、もしくは"魔女の従者"じゃないと、念話は使えないはず……オイオイオイオイオイっ! そ、それじゃあっ!?
「(や、やってもーた……! つ、ついに、大公家のお姫様まで、私の従者にしちゃったーッ!!!)」
人の心とか(自主規制)




