第509話 ハサミがデカすぎます! 巨大蟹襲来!!
「「 か、か、カニだーーーーーッ!? 」」
ーーー海底から、ついにその巨大な姿を現したのは。
海の色に溶け込むような真っ青な色をした、でっかいカニの魔物だった……!
チョキンチョキンと片方だけやたら巨大なハサミを開いては閉じながら、ゆっくりとだけど大きな波を立てて、沖合から浜辺に向かって歩いてくる……!!
「あ、あんなのが海底に潜んでいたワケね!
どーりで、魚が逃げて漁獲量が減るワケだわ……!
あんなのが居たら、おちおち泳いでらんないもの……!!」
「ディケーさん、どうするの!?
上陸されたら厄介だよ、迎え撃つ!?」
いち早く巨大蟹の出現をネリちゃんが察知してくれたおかげで、高台に逃げて海水を浴びずに済んだけど……でも!
「(……でっっっっかっ!!
エビとかカニとかの甲殻類って、脱皮を繰り返して長生きするって聞くけど……あ、あんなに大きくなるものなの!?)」
前に南の樹海で戦った、怪獣版のアグバログと同じくらいでかいですやんか! 目測でも体長25〜30mくらいはありそう……!
あ、あんなの、仮面ラ◯ダー響鬼のバケガニくらいでしか見たコトないんですけどーっ!?
「(……キャルさんの予想がドンピシャね!)」
先日、キャルさんに海に生息する魔物について尋ねた時、色々と候補を挙げてくれたんだけど……
『仮に潮の流れを操る魔物が海底に潜んで居るとしたら……私が思いつく限りだと、残るは……皇帝潮招ですね!』
『え、エンペラー? 皇帝?
何だか、メッチャ強そうね……』
『はい。皇帝潮招は、そもそもアーメリア大陸固有の種ではないんです。
……本来はレギエス帝国領の本土や海域に生息する魔物なんですよ』
『レギエス帝国の!? ……じゃあ、もしかして!』
『ディケーさんもよく御存知の、有害召喚獣……かもですね!
帝国と公国の戦時中、帝国側の召喚士によって公国領に喚び出され、そのまま公国領内の海域で野生化した個体の可能性が高いかと……!
確か、帝国海軍が公国領を攻めた際、皇帝潮招を召還して従えていたという戦時記録も残されていたと思います!』
『なるほどー』
ーーーって!
……さすがキャルさん、予想に狂いなし!
シオマネキって、片方のハサミがやたらでっかいカニだもんね!
……っと、感心してる場合じゃなかった!
「……いえ、村に被害が出たら大変だわ!
まずは村の人達の避難を優先しましょう!
ネリちゃん、頼める!?
……私は海岸で、アイツを何とか足止めしてみるから!!」
「ガッテンでーす!
……ディケーさん、気をつけて!」
「ええ!
何かあったら念話で知らせて!」
こういう時のネリちゃんは、素直に私の指示に従ってくれるから助かるわね!
村の人達の避難誘導は頼んだわ!!
とーーーそんな折。
胸元に入れておいたウィッチベルが、けたたましい音ともにバイブ機能でブルブルと震え、緊急回線からの連絡が入った。
『スターレイム卿!
緊急事態です、村の沖合に巨大な……!!』
『駐在さん!?
良かった、良いタイミング!
沖合の監視ドローンで、見えてるわよね!?
……例の、海底に潜んでいたヤツがついに現れたの!!
今、私の目の前に居て、上陸しようとしてる……!』
『な、何ですと!?
い、今すぐ応援を向かわせますので!!』
『いえ、待って!
私の従者の子が村の人達の避難誘導を始めた頃だから、ハルバード家の魔術師団の人達も避難を手伝ってもらえないかしら!?』
『それは構いませんが……スターレイム卿、よもや!?
お一人で、あの巨大な魔物を相手取るおつもりで!?
い、いけません、貴女に何かあれば、マリー奥様がどれだけ……!!』
『そのよもや、です!
じゃ、避難誘導、よろしくね!!』
『〜〜〜っ! 了解いたしました!』
そう言い残し、私はウィッチベルの通話を切った。
……そうこうしている間に、皇帝潮招がもうすぐ浜辺に上陸しそうだし!
「(電撃系の術式は使えない……海に住む他の生き物まで巻き添えにしてしまう……それ以外の術式で対処しなきゃ!)」
9年前ならいざ知らず……今のディケーさんは、カニ程度にビビり散らす女じゃありませんので!
即座にスタールビーとスターサファイアの宝玉をあしらった愛用の杖と、"炎魔将殺し・青生生魂"を"魔女の工房"から取り出すと。
「さあ、かかってらっしゃい!
カニクリームコロッケ、カニグラタン、カニしゃぶ……今夜はカニ食べ放題なんだからね!!」
ーーー私を視界に捉えて敵意剥き出しの巨大蟹に目掛け、叫んでいた。




