第507話 ハルバード公爵家御令嬢エリザ、大パニック!
「えっ……。
ら、ライア……今、何と?」
「えっとね。
エリザは編入生のステラちゃんって子のコト、何か知らないかな、って。
ユティとソロアお姉ちゃんはもう知ってたみたいだけど、私は知らなかったからさ」
「〜〜〜ッ!?」
その頃。
キンドラー魔術学校にて、夕食を食べ終え、自室で就寝前の魔力の基礎鍛錬に勤しんでいたディケーの娘ライアと、ハルバード公爵家の令嬢エリザはーーー。
「(な、な、な……!
どうして、ライアの口からスターフォールさんの名が出るんですのっ!?)」
「? どしたの?」
唐突にライアが名を出した人物に、エリザは動揺を隠せなかった。
……と、言うのも。
「(こ、これまで、ライアとスターフォールさんに接点が出来ないようにしてきましたのに……つ、ついに出来てしまったんですのっ……!?)」
噂の編入生、ステラ・スターフォールについては編入前からエリザもある程度、知り得ていた。
……何でも、本来は騎士見習いを養成する学校に通っていたそうなのだが……何か思うトコロがあり、騎士から魔術師の道に転向。
ヴィーナ領唯一のキンドラー魔術学校の編入試験を楽々と突破し、晴れて編入してきた、才色兼備の少女だと。
「(ッ……悔しいですが、認めざるを得ませんでしたわ。
このハルバード公爵家の令嬢である私や、ライアやユティさんに勝るとも劣らぬ、同年代の実力者がまだ公国内にいようとは……!)」
ーーー事実。
放課後にこっそりと、ステラが新たに所属した運動部の練習風景を見学してみると……その噂が寸分たがわぬモノであったと、まざまざと見せつけられてしまったのだった。
騎士を目指していただけあってステラの体幹はしっかりとしており、動きは敏捷かつ力強く、更には魔力の伝導も常人を遥かに凌ぐモノで、あっという間に部内で新レギュラーの地位を勝ち取ってしまったのだ。
ーーー何より、目を引くのはその可憐さ。
まるで、絵物語の世界から飛び出してきた主人公のように周囲を魅了する、明るく前向きな少女……まさに、天性のヒロインのように思えた。
これまで何百人という貴族や平民の子女達を見てきたエリザにとって、ステラ・スターフォールとは、そういう少女だった。
「(ひっじょーに、やっべー事態なのですわっ!)」
当然、ハルバード公爵家の次期当主であるエリザも要警戒の生徒が現れたと即座に判断し、極力ライアの耳にステラの噂が入らないようにしていたのだが……。
「(ぐぬぬ……ユティさんのクラスとステラさんのクラスが、体育の授業が同じでしたのね……不覚ですわっ!)」
……まあ、どの道。
遅かれ早かれ、ライアの耳には入っていたであろうけども。
「今度、お話してみようかな? ステラちゃんと」
「!?」
……そしてマズいコトに。
既にライアもステラに興味を持ってしまっている。
ただでさえライアはキンドラーの校内でも一部の生徒や教師達から「次世代の聖女候補」として、カルト的な人気を誇っている。
そんなライアとステラが出会ってしまったが最後ーーー間違いなく意気投合して、仲良くなってしまうに決まっている!
『ごめんね、エリザ。
私、今日からステラちゃんの部屋で一緒に住むから』
『なっ……!
ら、ライア……私を裏切るんですの!?』
『だってエリザ……私のコト、ずっとエロい目でチラチラ見てるんだもん。
そんな人とは、もう一緒に居られないかな、って』
『み、見てませんわよっ!
どうして、ライアをエロい目で見る必要があるんですのっ!?』
『嘘つき、絶対見てたヨ。
……じゃあね、エリザ』
『あっ、待って、ライア!
わ、私が悪かったですわっ!!
……認めますっ、見てましたぁっ!!!
ライアと一緒にお風呂に入ったり、パジャマに着替えたり、体育の時間に汗を拭いたりする時にチラ見えしてた腋とかおへそとか……え、エロい目で、ガン見してましたのぉっ!!!!』
ーーーとまあ、こんな事態に陥る可能性もなきにしもあらず(エリザの妄想の中のライアは何故か毎回Sっ気が強く、エリザをゴミを見るような目で見てくるのが特徴)。
「(うぅ……そ、そんなコトになったら、もう生きていけませんわぁ……こうなれば!)」
だが、当のライアはもうステラに会いに行く気満々のようで。
……ならばもう、こちらも腹を括り、ライアとステラを差し障りのない程度に対面させた方が得策なのでは?
エリザは短時間で思考をフル回転させ、何とかライアとステラが親密にならぬよう、策を練るのであった。




