第506話 魔女と主人公の共闘!? やりますねえ!
「(つ、つまり……こういうコト?
いわゆる『タイムパラドックス』的なコトが起きて……本来のレジェグラの時間軸とは大きく異なるルートに突入しちゃった……ってコト!?)」
ソロアちゃんからレジェグラの主人公、ステラちゃんがキンドラー魔術学校に編入した経緯を聞かされた私は、改めて転生当初からの時系列を洗い出し、何故そんな事態になってしまったのか、脳内で再検証していた。
「(ええと……コトの始まりは9年前、南の樹海での炎魔将アグバログとの戦いよね、やっぱり……)」
ーーー本来の時間軸のディケーなら、楽々とアグバログ倒していたはず(そもそも復活直後だったのもあって、深淵戦争の頃に比べるとそこまでの強さでもなかったのでは?)。
現に、レジェグラの本編の世界では、アグバログのアの字すら聞かなかった……本編や設定資料集で語られてはいなかったけど、やっぱり本編開始前の時間軸でディケーがアグバログを倒したと見て、まあ間違いないと思う。
「(一方、"私"がディケーに憑依転生した、この時間軸だと……)」
ーーー私がディケーの身体にまだ不慣れだったのと、切り札の"魔女の血流"の反動で指も動かせない程に消耗……アグバログを完全には制圧できず、追い詰められたアグバログはアーメリア大陸ごと自爆しようと、カウントダウンを開始!
その時、臨界を迎えたアグバログから溢れた魔力が、アーメリア全土を揺らす地鳴りを引き起こして……
「(ステラちゃんのおばあちゃんの家が被災して、一人暮らしをしているおばあちゃんのお世話のためにステラちゃんが首都を離れ……結果的に騎士学校には通わず、キンドラー魔術学校の方に編入しちゃった……ってコト!?)」
あ、あの時の地鳴り……南の樹海から遠く離れたブリーチェの町でも結構な被害が出てたけど……よもや、ステラちゃんのおばあちゃんの家まで被災していたとは……。
このアーメリア大陸、私の元居た世界の日本と違って、滅多に地震やら地鳴りが起きないのもあって……建物の耐震強度がそこまで強くないみたいなのね。
大昔から建ってる古い建物も多いし……まあ、日本の建築基準が地球規模で見てもちょっと異常なレベルで高水準なのもあるけど……スゴいね、人体。……もとい、日本の建築技術!
「(わ、私の知らないトコロで、私の戦いがステラちゃんの人生を変えてしまったーっ!!!)」
本当だったら、今でも首都にお母さんと住んでて、騎士学校に通ってたはずなのに!
そしていずれはレジェグラ本編の時間軸が開始されて、仲間達と世界の危機に立ち向かうはずだったのに……。
「(えっ、じゃあ、もしかして……相棒の星妖精の子とも出会ってない可能性が!?)」
……レジェグラ本編のステラちゃん(と、男主人公のアッシュ君)は、いつも相棒の星妖精の子と一緒だった……確か、騎士学校に入る前に偶然出会って保護して、それ以来ずっと一緒だって、1話のチュートリアルのバトル中の会話で語られてたけど……それもない感じ!?
「(『星妖精を連れた男の子もしくは女の子』をいくら首都で探しても見つからないはずだわ……居ないんだもの、首都に! て言うか、星妖精と出会ってない可能性が高い!!)」
"レジェグラの主人公は首都に絶対居る"
"相棒の星妖精を連れている"
……私はこれに固執し過ぎて、その他の可能性を思いつかなかった! 不覚ね!!
「(マイケル・J・フォックス主演の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の3作目でも、些細な行動で歴史が変わっちゃう描写があったわね……」
1985年から来た、クリストファー・ロイド演じる科学者のドクが1885年の西部開拓時代で、馬が暴走して谷底に落ちそうになったクララ・クレイトンっていう女の先生を助けるんだけどーーー
『危うく、クレイトン渓谷に落ちるトコロだった。
……クレイトン渓谷!?』
『そうだ、思い出した!
歴史の授業で習ったよ、百年前に女の先生が谷底に落ちて、その名前が付いたって!』
『百年前と言うと……今年じゃないか!
なんてこった、本当は死ぬはずだったのだ!
……私はまた未来を変える大変なコトをしてしまった!!』
『ドク、たかが渓谷の名前が変わるだけじゃん』
……って。
私も映画を見た時は「マーティの言う通り、ドクちょっと心配し過ぎじゃ?」って感じだったけど……自分の起こした行動の結果、歴史が大きく変わってしまった現状を目の当たりにすると……あの時のドクの気持ち、メッチャ分かるわー!!
「(よもや、ステラちゃんとうちの子達が同じ学校に通うようなルートに辿り着くなんてね……)」
絶対にレジェグラの本編じゃ辿り着けなかったレアルートなのでは!?
そもそも本編の時間軸のライアとユティ、正式な魔女じゃなかったし、学校にも通ってた素振りもなかったものね……。
「(……これは好機、千載一遇のチャンスと見るべきでは!?)」
残念ながら、レジェグラ本編の時間軸では主人公とライア、ユティ、それにディケーは最後まで分かり合えず、敵対したまま三人とも死んでしまったけど……
「(このルートなら、ステラちゃんと仲良くなれるんじゃないかしら……!?)」
ーーー私はずっと、レジェグラの主人公や仲間と遭遇しないよう、首都に行くのを躊躇していたけど……でも、やはり逃げ回っているだけでは駄目なんだわ!
「小説家になっちゃおう」の異世界転生モノの主人公とかは、本来の物語の結末を回避するために辺境やらに引きこもって、よくスローライフやらを送ろうとするけど……攻撃こそ最大の防御と心得よ! アクティブに行くべし!!
「(まだ間に合うわ!
何とかステラちゃんとお近づきになって、今のうちに仲良くなれれば……)」
ーーー4年後、邪神もしくはそれに準ずる存在がこの世界に現れて、世界を破壊しようとした時……もしかしたら、ステラちゃんと共闘できるかもじゃんね!?
「(本来は敵対していた者同士が手を取り合って、より大きな存在を倒すために共闘する……これぞ王道ね!)」
少年ジ◯ンプの漫画でよく見た展開だわ!
某七つのボールを集める漫画とか、某大冒険とか、某休載の多いハンター漫画とか、某死神のノート漫画とかで!
「そ、ソロアちゃん!
何とかして、そのスターフォールさんに会えないかしら!?
……私、やっぱりどうしても諦めきれないの!!」
「へあっ!?」
ステラちゃんと何としても接触したい私は、現状で唯一それが可能なソロアちゃんにすがるしかなかった。
……が、どうにもソロアちゃんは怪訝な表情で私を見ていて。
「ま、マスター……。
ひょっとして、スターフォールさんを"魔女の従者"にするつもりなんですか……?」
「……えっ?」
また新しい従者を増やすんですか……?
……ソロアちゃんの顔に、そう書いていた。
あ、ああ、そうか……ソロアちゃんはそう受け止めちゃったのね……来年ライアとユティが正式な魔女になったら、私の弟子は卒業だし……新たな弟子兼従者としてステラちゃんを候補にしてると、そう思われちゃったんだわ……。
「ち、違うわよ?
その、あのユティが一目置いて、ソロアちゃんも褒めてるくらいだし……出来るコトなら、ライアとユティともお友達になってくれたらな、って……そう思っただけだから」
「そ、そうですか……」
……ソロアちゃん、心なしか安堵したみたいね。
いやまあ、自分の恋人がまた新しい恋人候補をスカウトするんじゃないかって、やきもきするのは分かるけどね……さすがにディケーさんも、もう従者は増やしませんよ……現状で六人も居ますからね!
しかして、ソロアちゃんはーーー
「ええと……。
冒険者の方を学校に招いての実践授業であれば許可されていますので……そ、その制度を利用すれば、マスターもキンドラー魔術学校の生徒さんと接触するコトは出来るかと。
何年か前、マスターの紹介で私が短期間ながら講師としてアルバイトをしたように……」
「……あ、そっか!
その手があったわね、忘れてた!!」
こう見えてディケーさん、冒険者歴9年目!
もうベテランですからね!
ギルド内でもネリちゃんやらと一緒に、新人を教育する立場だし……。
「ライアさんとユティさんのお母さんとして、マスターのコトを存じ上げている生徒さんも多いですし……。
な、何とか、スターフォールさんの在籍している中等部で、マスターが講師として授業が出来ないか、取り計らってみます……」
「やったー!
ソロアちゃん、大好きよ!!
……今夜はたっぷり"腰トントン"してあげるわね」
「ひえっ……!?」
悦びと絶望の入り混じった、複雑な表情でーーー。
私に抱きしめられ、頭から生えた猫耳をピョコピョコ、尻尾をパタパタさせて、お顔を真っ赤にして、忙しないソロアちゃんなのでしたーーー。




