第499話 魔術学校の王子様、ユティはプチ悩み中!?
「ユティ先輩、お手伝いしていただいてありがとうございました!」
「おかげさまで予定よりも早く作業を終わらせられました!」
「それはよかった。
……じゃ、忘れ物がないよう、気をつけて寮に戻りなね」
「「 はい!! 」」
ーーー中等部二年に進学したユティ・スターレイムは、今やキンドラー魔術学校・生徒会の花形だった。
長い青髪をひとくくりにした端正な立ち姿、14歳とは思えない落ち着いた雰囲気、それに加えて中性的な美しい容貌とーーーまさに女子校の王子様を地でゆく存在に、いつしかなってしまっていたが……
「(さて、生徒会の仕事もあらかた終わったし……次は鍛錬だな)」
本人は飽くまでも入学当初からのストイックさを失うコトなく、魔力強化の鍛錬を続ける日々。
小等部から生徒会に所属し、文武を両立させているユティに対して憧れを抱く下級生も多いようだが……その反面、
「ごきげんよう、スターレイムさん」
「あ、どうも……」
「……例のお話、考えていただけて?」
ユティの母、ディケーがアーメリア公国の第一公女のメアリから爵位と領地を授与された頃から、娘のユティに対して接触を図る上級生が、目に見えて増えていた。
みな、男爵やら子爵、伯爵家の御令嬢達で、ユティからすれば無視の出来ない存在だった(母のディケーが爵位を得たと言っても、爵位の階級的には下から数えた方が早い騎士爵のため)。
……だが、ディケーがどうやら公女殿下と何やら私的な関係にあるコトや、アーメリア屈指の大貴族であるハルバード公爵家と親しいコト、更には最強の武力を誇るブランディル自治領を統治する女吸血鬼であるシェリル女公爵とも、家族ぐるみで交流しているのが明るみに出たコトで……
「(私を通して、まずはお母様……そこから公女殿下やマリー様、シェリル女公爵に何とか近づきたい……そういうワケか)」
自身の娘とユティを接触させ、そこから公国の権力の中枢に何とか爪痕を残したいと望む親からの密命を受け、近づいて来る上級生の女生徒の多さに、内心うんざりしているユティなのだった……。
「……母には話しておきます。
ちょうど夏に公女殿下が主催される催しに、越境騎士である母も招待されていたはずですので……」
「まあ、素敵!
きっと、きっと、お願いしますわね。
そうよね、ディケー様は公女殿下のお気に入りの騎士様なのですもの……」
「ええ。お目通りの機会は十分ありますよ」
ユティの返答に、上級生は目を輝かせ、上機嫌で去っていった。
……こんな感じで、数日に一回くらいはユティを通して家名を大公家やハルバード家、はたまたシェリルに売っておこう、という貴族の娘達が現れるのだから、世話ない。
「(お母様の出世は喜ばしいけれど……面倒事が増えたのは厄介だな。出来れば"魔女の瞳"で魅了して、適当にあしらって追い返したいけど……そうもいかないか)」
「ユティ・スターレイムのところに公女殿下やハルバード公爵家へのお目通りの相談に行くと、何故か記憶が曖昧なまま戻ってくる」……などという噂が立っては、ユティとしても困るからだ。
下手をすれば、自分達スターレイム一家が魔女だというコトがバレかねない。
「(来年の"魔女の夜"で、正式な魔女として認めてもらわなきゃだし……あまり時間がない)」
はあ、問題は山積みだなーーー。
深いため息を吐き、鍛錬に向かうため、その場を後にするユティ。
……そんなユティを、
「スターレイム先輩、今日も美しいわあ……」
「憂いを帯びた、悩ましげなお顔も素敵……」
「おっとりしたライア様も可愛らしいけれど、ユティ様のクールさも捨てがたいですわね……」
遠目で、うっとりと見つめる女生徒らの姿が。
ーーー当分、キンドラー魔術学校の女生徒らのユティへの熱が冷めるコトは、なさそうであった。




