第497話 魔女の領地運営! 漁村の怪!?
「これはスターレイム卿!」
「ご無沙汰してます。お変わりないようで」
「マリー奥様から管理を任されたとあれば、怠けるワケにはいきませんので!」
「ですねー」
朝食後。
身支度を整えた私はキラリちゃんを連れて、二年前にメアリ公女殿下から我がスターレイム家に授与された領地への視察へと赴いていた。
元々はマリー様のハルバード家の所有する領地の一部を、私がハルバード家の傘下に入るコトで貸与してもらっているのもあって、特に私が何もしなくてもハルバード家ゆかりの人達が駐屯所で管理・運営をそのままやってくれているのはありがたい。
「(とは言え、名ばかりの領主であっても顔見せくらいはやっておかないとね……)」
日本で言えば、大昔の地方豪族……みたいなものかしら?
まあ、私は普段は領地には住んでいないから、領民の人達からすれば私なんかより、マリー様や旦那様の方がよっぽど領主って感じでしょうけども。
……何にせよ、爵位と領地を得た後も冒険者としての活動に支障がないのは嬉しい。
「(領地運営で安定した副収入が得られているとは言え、やっぱり地に足をつけて仕事しないと!)」
ーーーそれに今日は領主としてよりは、冒険者としてやって来たのだから。
「大型の魔物の目撃例がここ最近、頻繁にあるとか」
「ええ、そうなのです。
沖合に漁に出ていた者達から、海底に映る大きな影を見たという通報が何度も……」
ハルバード家から派遣され、領内の治安に目を光らせている魔術師団の駐在さんによると。
どうも、海にやたら大きなナニカが居るそうで……。
「(うーん、まさか潜水艦とか?)」
でも、まだ何処の国もそこまでの技術は持ってないはずよね、この世界だと……一番科学技術が発展していたレギエス帝国はアーメリア公国との戦争に負けて国家解体、敗戦の賠償として科学技術も公国側に流れたけど、潜水艦やら飛行機やらは無かった……と思う。
となれば……やっぱり、別の地域から海流に乗ってやって来た、大型の魔物かな?
この辺りの漁場は、今のシーズンになると毎年豊漁みたいだから、食事には困らないでしょうしね……(だからマリー様も私にこの領地を貸与してくれたワケだけども)。
「もし攻撃的な魔物だった場合、船舶が襲われる危険性があります。
……しばらくの間、漁の差し止めは出来ないのかしら」
「まあ、領主であられるスターレイム卿のお言いつけとあらば従うでしょうが……今は漁師らにとっても、絶好のかきいれ時ですからねえ。
まだ具体的な被害も出ておりませんし、漁の差し止めに効果があるとは私からは何とも……ただでさえ、海の男は気が荒い者が多いですし」
「そっかあ……」
……まあ、そうなるか。
逆に「俺達で魔物をぶっ倒してやらあ!」と総出で海に繰り出されても、それはそれで困るものね……。
「(しゃーない、私としても領民からの評判は落としたくはないし……)」
ぶっつけ本番で相手の正体を探りつつ、その上で倒すか、私の領地から出ていってもらう他なさそう……!
「ありがとう。
今から海まで行って、どんな様子か実際に確かめてみます。
本当に大型の魔物が生息しているのであれば、民に危害が及ぶ前に撃破するわ」
「スターレイム卿がお強いコトはマリー奥様からも何度も聞かされております故、私もそこまでは心配はしておりませんが……どうか、油断なされませぬよう!」
「ええ、ありがとう」
駐在さんに別れを告げて。
私はハルバード家の駐屯所を出て、漁村の方へと歩き出した。
****
「あ、領主様!」
「スターレイム様だ!」
「こんにちは。
みんな、元気にしてた?」
「「「 してましたー!!! 」」」
村を訪ねると早速、現地の子供達からのお出迎えが。
……よしよし、元気そうで何より。
子供は国の宝だからね、アーメリアも日本みたいに少子高齢社会にならないよう、未来の労働を担う子供達を大事にしないと。
私は魔女だから子供産まないし、余計にそういう気持ちが強く出るみたい。
……まあでも、初めて会った時点で
『わー、本物の冒険者ディケーだー!』
って、初対面でも私のコトを知ってた子が、そこそこ居たのはちょっと嬉しかったり……ディケーさんも有名になったもんだわあ……。
「スターレイム様、今日はどうしたの?」
「えっとね。
海に居るかもしれない、大きな生き物を調べに来たの。
……みんなはここ最近の海の変化について、何か知らない?」
意外と子供って、大人の話をよく聞いてるからね……貴重な情報源だわ。
しかして、私が村の子供達に訪ねると
「何か、今年はいつもより魚の数が少なく感じるな……って、父ちゃんが言ってました!」
「うちの父ちゃんも!」
「あと、海にうずしお?
……が巻いてるのを何度か見たって。
この辺り、あんまりそういうの起きないのに、って」
「なるほどー」
ふむふむ……。
良かった、見立て通り、漁師の子だけあってみんな親の話をちゃんと聞いてたみたい。
……やっぱり、この漁村の沖合にナニカが居るのは間違いなさそう。
漁獲量が減ってしまったのも、そいつが原因かも……うずしおに関しては自然現象なのか、そいつが起こしているのかは、まだ判別がつかないから、何とも言えないけど……。
「ありがとう、参考になったわ。
御礼にヴィーナ名物のコーヒークッキーをあげる」
「「「 ウェーイ!!! 」」」
ノリのいい子供達である。
まあ、ギブアンドテイクは冒険者の基本ですからね!
『ディケー、海を調べに行くの?』
「うん。
朝から漁に出てた漁師の人達もそろそろ戻るでしょうし、港で直接、海の様子を聞けたらなって」
餅は餅屋、って言いますしね!
私のディケパイの谷間にずっと隠れていたキラリちゃんからの問い掛けに、私はそう返した。
私ははっきり言って、海に関してはド素人だから……ここはやっぱり毎日海で仕事をしている人達に聞いた方が確証も得られやすいでしょう。
「せっかくマリー様から貸与してもらえた領地だもの、大事に運営していかなきゃだわ」
『おっ、そうだな』
そうして私は、キラリちゃんと共に。
一見すると穏やかそのものの海を一望できる、村の港へと向かうのだった。




