第496話 転生九年目! スターレイム一家の騒がしい朝食
「ふあーあ……。
みんな、おはよー……」
「あ、ディケーさん。おはようございます」
「お、おはようございます……マスター」
『おはよ、ディケー』
ーーー私がメアリ公女殿下から爵位と領地を授与されてから、二年の月日が経った。
「もうすぐ朝御飯が出来ますので、少々お待ちを」
その二年の間に、まあ何やかんやありましてえ……山奥のスターレイム邸も授与された領地経営で得られた収入で、無事に増改築が完了し、部屋数も増え、庭や畑、お風呂場も広くなったりした。
でも、一番の変化と言えばーーー
「ごめんね、キャルさん。
家事任せちゃって……」
「いえいえ、とんでもない!
今日は私が当番の日なんですから、ディケーさんはお気になさらず。
ささ、テーブルに着いてください」
「……うん、ありがと」
有言実行、とばかりに。
……スターレイム邸が増改築したのを皮切りに、学術都市ブリーチェに住んでいたキャルさんが、我が家でルームシェアで一緒に住むようになったのです!
『どうしようもなくなった時は、私がキャルさんの面倒見てあげてもいいわよ』
『えっ……!?』
『ライアもユティもどんどん大きくなるでしょうし、そろそろこの山小屋も少し増改築しようと思ってた所なのよねー。
キャルさんなら口が固いし、本当に貰い手が見つからなかった時はシェアハウスって事で、うちに住んでもらっても構わないわよ。
ブリーチェには納屋から通勤出来るでしょ?
あ、でも家事は分担してもらう事になるけど』
って、九年前にキャルさんと約束してたんだけど……本当にやってやりましたよ、ええ!
ディケーさんは約束を守る女ですから……これに関しては、私の他の従者の女の子達にも事前に説明してたから、まあそこまで揉めなかったのは良かったわね。
更には、
「あ、ソロアさんのお弁当も、もう作っておきましたから。お昼に食べてくださいね」
「い、いつもすみません、キャルさん……」
「なんのなんの、ですよー」
ーーーあの人見知りで、ずっと洞穴暮らしを続けていたソロアちゃんが……ついに洞穴から出るのを決意し、キャルさんと同じ時期に我が家にお引越し!
今ではキンドラー魔術学校で非常勤講師として、今年の春から働いているっていう……ね。
「(ソロアちゃん、やっぱり人に教えるような仕事が向いてたワケね……)」
いやあ、ソロアちゃんもついに自立した大人の女性の仲間入りしちゃったわねえ……感慨深いわあ。
キャルさん、ソロアちゃん、キラリちゃん……スターレイム一家、ますますにぎやかになって……まあでも、
「(みーんな、見た目が全然変化してないから、つい忘れがちだけど……今年で私がディケーに転生して、もう九年も経ったのかあ……)」
光陰矢の如し、とは言うけど……月日が経つのは早いわあ……もう来年にはライアとユティが15歳になって、次の"魔女の夜"で正式な魔女になれるかどうかが決まるのか……それに加えて、大魔女選挙もあるっていう……。
「(この一年が正念場ね……ライアとユティ、そして私の運命が左右される一年だわ……)」
ライアとユティも今年14歳……ますます女性らしくなっちゃって……あ、ユティはどっちかと言えば、ますます王子様っぽくなった……かな?
ライアの方はおっとりした性格は相変わらずだけど、治療系魔術に磨きがかかった感じだし、すっかり美人さんになって、聖女様化が進んでるけど……本人は興味なさそうなのがね……。
……なんて、朝から私が考えていると。
『ディケー、今日はどうするの?』
「予定通り領内の視察よ、キラリちゃん。
最近また魔物の目撃情報がちらほら上がってるし、人的被害が出る前に退治しておきたいの」
『なるほどなー』
「あわよくば、お肉として食べちゃえるかもだし?」
『そっちが絶対メインだよねー』
私の肩にちょこんと座って、キラリちゃんが今日の予定を聞いてくる。
今のディケーさんは冒険者であると同時に、小さいながらも領地を持つ越境騎士でもあるので……領民に被害が出てからでは遅いから、時には領主自ら出向いたりもしなきゃね。
……マリー様のハルバード公爵家から貸与された領地だし、ぞんざいな扱いは出来ない。
「ま、マスターも大変ですね……。
冒険者として活動をしながら、領主としても領地の経営をされて……」
キャルさんが朝食を作ってくれている間、先にテーブルに着いていたソロアちゃんが、私に気遣うように言った。
「(……ソロアちゃん、見た目はあんまり変わってはいないけど……昔に比べて落ち着いた雰囲気になったし、もう大人の女性よねえ)」
初めて出会った時、まだ成人したばかりの15歳だったものね。
ああ、懐かしい……しかして、私は、
「まあ、大体のコトはマリー様のハルバード家がやってはくれてるんだけどね。
でもせっかくいただけた領地だし、経営者として色々と見て回っておきたいじゃない?」
「そ、そういうものなのですね……。
わ、私、大導師だった頃は、あんまり現場を見に行く機会がなくて……裏方仕事が多かったもので……。
マスター、ご立派です……」
「でもソロアちゃんも、今は魔術学校で先生として頑張ってるじゃない。
雰囲気も落ち着いた感じになったし……もう立派な大人の女性だわ」
「そ、そうですか? ……うへへ」
頭から生えた左右の猫耳をピョコピョコと動かして、はにかむソロアちゃん。
うんうん、何年経っても、ソロアちゃんの笑顔を見るとこっちも元気になるわあ……さすが我が愛しの恋人!
『今日は私もディケーに付いて行っていい?
ディケパイに隠れてるから』
「そうね……。
まあ、認識阻害の術式をかけておけば大丈夫でしょう。
いいわよ、キラリちゃん」
『やったー。
ディケーの領地、あんまり行く機会なかったからさ。
スターレイム卿が授与された土地、いかほどの物か拝見させていただきたく候……』
あ、そっか。
普段はうちかナタリア様のお屋敷でお留守番するコトが多いもんね、キラリちゃん。
たまには私の領地に遊びに連れて行ってあげなきゃ。
「お待たせしました! 皆さん、御飯ですよー」
「「『 やったー!!! 』」」
と、ここでキャルさんが朝食を持って来て、お待ちかねのモーニングタイム!
んー、今日もいい匂いがして美味しそう……キャルさん、一人暮らしが長かったから自炊スキル高くて助かるわあ……明日は私が当番だし、お返ししなきゃね。
「「「『 いただきまーす! 』」」」
ーーーそういうワケで。
スターレイム一家の朝食は、こんな感じで始まるのでした。
ん、今日も美味しい……キャルさん、さすがだわあ……。
「(ったく、ブリーチェの男どもはマジで見る目なかったわねえ……)」
私がもうキャルさん、もらっちゃったからね、ガハハ!




