第341話 クラス対抗マジフト開催! 魔女の授業参観!?
『ディケー、手紙が届いてるよ』
「手紙? 誰から?」
『ライアとユティの魔術学校からみたい』
帰宅後。
"あちらの世界"の無口なディケーと比較して私がお喋りなコトを指摘したクロアちゃんの疑問を軽く流しつつ、玄関をくぐると。
留守を任せていたキラリちゃんが一通の封筒を手にして、背中の羽でパタパタと羽ばたきながら、私の肩に飛んで来た(なおクロアちゃんはそのままお風呂場で少しお湯に浸かって来るとのこと)。
『はいよ』
「ありがと、キラリちゃん。
さて、キンドラーから一体何かしら?
ライアとユティが問題を起こした……とかではないとは思うけど……」
基本、私宛の郵便物の類いはナタリア様の御屋敷に届くように手配してあって、指定した籠の中に入れてもらうと、そのまま私の住む山小屋の中のもう一つの籠の中に転送される仕組みになっている。
納屋の扉と同じように空間接続の術式を施して、郵便物が御屋敷に貯まらないようにしてあるのね(勿論、緊急性の高い手紙は直接私に手渡してもらってる)。
「あっ、授業参観のお知らせね。
小等部で合同授業をやるみたい」
『おー、なるほど』
もうそんな季節なのねえ……。
毎年キンドラー魔術学校では春と夏の間くらいに授業参観をやっていて、学校に通う子供達の親御さんが我が子の晴れ姿をひと目見ようと、こぞってやって来るのだった。
それと言うのも、合同授業と言うのがーーー。
「どうやら今年はクラス対抗で、マジフトの試合をやるようね」
『ほほう』
マジフトとは、正式名称を「マジックフットボール」という。
文字通り、魔術を駆使したフットボールで……私の世界で言うところのサッカーによく似たスポーツで、公国内では最もポピュラーな競技だ。
……ただ、サッカーとの決定的な違いは前述の通り、試合中に魔術の使用がOKなため、かなり物騒な試合に発展する事も多々ある、なかなかデンジャラスなスポーツだったりする(当然、相手に大怪我を追わせないよう、どんなに強力な魔術の術式であっても威力が制限される結界が事前に張り巡らされて行われる)。
……まあ言うなれば、ハリー・ポッターのクィディッチみたいなモノかしら? あれはホウキで空を飛びながら戦ってたけどね。
「クラス対抗なら、ライアとユティがマジフトで戦ってるトコロが見られるかもしれないわね!」
『おっ、そうだな。
……って、おいおい(CV:井上喜久子)
ディケーいいの?
ライアとユティが戦うコトになっても』
キラリちゃんは怪訝そうに、私の顔を伺う。
うーん、そうねえ……キラリちゃんの心配ももっともだけど……でも、私はそれ以上にーーー。
「これまでライアとユティは鍛練で模擬戦しかさせて来なかったからね。
……でもマジフトなら結界で威力が制限されてるとは言え、二人が手加減なしで真剣勝負出来ちゃうじゃない?
別にどっちが強いのかを見たいとか、そういうのじゃなくて……私はただ、二人の鍛練の成果が見たいのよ。
クロアちゃんから指摘されたように……今年からは基礎の反復練習よりも、より高度な実戦向きの鍛練を本格的に開始したし……いい機会だと思うの」
『おお……。
ディケー、色々考えてたんだねえ』
「母親ですからね」
今年でライアとユティも11歳、小等部5年生になった。
もう入学時の二人とは比べ物にならない程の成長を遂げているけれど……正式な魔女として認めて貰うためにも、今のままじゃまだ足りない……より確実に二人の成長を促すためにも、時には互いの実力をマジな勝負で確かめ合うのも大事なコトだと、母様は思うのです!
「そして、ゆくゆくはトッテナムの新星、ベリヴァル(※1)とグレイ(※2)のようなゴールデンコンビとして活躍を……これは楽しみ過ぎるわね!」
※1.スウェーデン代表のサッカー選手
※2.イングランド代表のサッカー選手
我ながら、才能ある娘達に恵まれてしまった感あるわあ!
あっ、マジフトの試合があるってコトは、当然ライアもユティも体操着で試合をするんだ!
子供の頃の二人の体操着姿なんて、激レアすぎない!? マジ神では!?
「めっちゃ楽しみになって来たわ!
二人の活躍を『移すンです』で撮りまくるわよ!!」
『でもディケー。
「なお、試合中の当校生徒の姿を各媒体で記録、保存するのは保護者の方であっても、くれぐれも御遠慮ください」って書いてあるけど……』
「神は死んだ」




